踏切をめぐる楽しみ ~JR南武線沿いに歩く②:踏切めぐりと、二ヶ領用水と三沢川の交点を歩く
線路沿いに歩き、踏切を巡る街歩き。JR南武線の矢野口駅から稲田堤駅方面に歩くと、最初に出てくる踏切は、前回ご紹介した「営団前踏切」でした。戦時中に存在した、住宅営団が関係する地名だったのでしょうか?地域の歴史が調べたくなる、不思議な地名が残っています。(前回の記事はこちら)
営団前踏切から、さらに東へ、稲田堤駅を目指して歩いていきたいと思います。
■原島踏切
まず最初に差し掛かる踏切ですが・・
踏切の周りは、ちょっと古そうな家が建っている場所です。
この地で協会の理事長を務めていらっしゃるお方は、原島さん、なのですね。つまり、地元の名士のお名前がついた踏切、ということのようです。
こちらのクリニックを紹介されている記事もありました。
1935年から営まれている歯医者さんが、最近移転したのがこのクリニックだとか。元々は、踏切前で歯医者さんをされていたのでしょうね。
こんな形で、何だか昔の地域の営みがちょっと見えてくる感じがする、プチ街歩きです。
■天宿第三踏切
天宿第三踏切、といいますが、天宿とは、どこにあるのでしょう?今昔マップを見てみると・・、
天宿とは、この地域に元々あった集落の名前のようです。今でも、公園や子ども会の名前などに残っています。踏切のある、この道がまっすぐ川までつながっているのは、古地図を見る限り、一時的にこの場所に渡し船があったからのようです。
渡し船の位置は、川の流れが時代ごとに少しずつ違うため、時代によって変わることがあるようです。この地域の多摩川はかつては暴れ川だったため、渡し船の位置はいろいろと変化を遂げたようです。
踏切の名前は、「天宿第三踏切」という名前ですが、「第一」「第二」は既にありません。かつては小さな道路などに踏切があったのかもしれませんね。
■稲田堤駅前の踏切は・・
稲田堤駅にある踏切は・・、少し前に紹介した、「観光道踏切」。稲田堤は戦前は花見の名所で観光地だったのですね。
今回は、もう少し先の、中野島駅を目指していきたいと思います。
■稲田第三踏切
稲田第三踏切の、「稲田」は、登戸~稲田堤あたりの昔の村の名前である、「稲田村」の名前を取っていると思われます。稲田村の中心地は、登戸駅付近だったようですが、やはり観光道踏切と同様に、この鉄道が開通した昭和初期には既に有名になっていた、多摩川の桜並木である「稲田堤」にあやかった名前なのでしょうかね。今の地名は、稲田堤がちょっと前面に出て、「川崎市多摩区菅稲田堤」です。
■稲田第一踏切
稲田第一踏切は、車の通れない小さな踏切。
そして、踏切脇に用水路が流れるという、この地区らしい風景が広がります。
■三沢川を渡る南武線
南武線は、三沢川の橋に差し掛かります。
三沢川は、稲城市の若葉台駅付近から流れてくる川です。多摩ニュータウン開発に伴い、改修工事が進められましたが、下流であり、ニュータウンの範囲から外れる川崎市多摩区の流域に上流の開発の影響が及ばないように、トンネル方式の分水路が整備されたことでも知られています。
今昔マップで見ると、過去は、もう少し違う流路をしていたようですが、洪水を頻繁に起こす暴れ川だったようで、改修工事の末、今のような川の形になったようです。
■菅第二踏切
そして、この踏切のすぐ横を流れているのは・・、
二ヶ領用水は、江戸時代初期に作られた用水路です。いろんな改修工事を経て、今も農業用水などとして使われています。
■二ヶ領用水と三沢川の交差点
二ヶ領用水と三沢川、なんと交差しています。三沢川は、稲城市の水を多摩川に排出する役割、二ヶ領用水は、多摩川の水を川崎市内に配水する役割を果たしており、違った役割を持っているのです。
■二ヶ領上河原堰を歩く
二ヶ領用水は、かつては多摩川から自然に分流させて取水していましたが、多摩川には、今はこんなものが設けられています。
二ヶ領用水と三沢川が交差している理由がここにあります。つまり、二ヶ領用水は堰でせき止められた水を下流に供給する役割で、三沢川は上流側の水を堰の下流に安定的に排水する役割だから、なのです。
■布田地区という場所
そして、この地区の地名は・・、
布田、といえば、京王電鉄の調布駅の隣の駅をイメージされる方もいると思います。実は、この「布田」という地名、多摩川の右岸側・左岸側両方にあるのです。というのも、かつては多摩川が蛇行していて、この布田地区は「左岸側」だったのが、川の流れが変わり、南北に分断されてしまったということなのです。その証拠に、明治時代の地図では、多摩川の南側に都県境が越境しています。布田地区は昔は調布町だったのですね。
■終わりに
踏切を歩いていたかと思ったら、最後は二ヶ領用水と三沢川の交差部という、面白いスポットを見学する、なかなか楽しい街歩きになりました。踏切の名前の由来となる古い地名を見て歩き、川や用水のことを学ぶと、地域の歴史などを紐解くことができ、とても楽しい街歩きになりました。