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黒部を旅する ②黒部宇奈月キャニオンルートを行く

黒部の地を訪れたレポートの第2弾です。第1弾では、宇奈月温泉までの電車の道中と、宇奈月温泉付近を散策したことを書きました。
(前回の記事はこちら)

黒部川の電源開発は、大正時代に開発の拠点となる宇奈月温泉が開湯し、今の黒部峡谷鉄道が作られ、下流側から順次ダムや発電所が建設されていった経緯があります。そして、最も大きな黒部ダムと黒四地下発電所ができたのが、今から60年前の1963年。それからは、観光ルート化された立山黒部アルペンルートと、宇奈月温泉から欅平までのトロッコは、観光ルート化されていますが、欅平から黒部ダムまでを結ぶルートは、これまで電力施設内であるため、一般開放されてきていませんでした。

いよいよ、電力施設だった欅平から黒部ダムを結ぶルートが観光ルート、「黒部宇奈月キャニオンルート」として2024年から一般開放されることになりましたが、このルート、土木関係者には本当にすごい場所です。

今回は、この場所を訪問してきました。中の様子は、今は電力施設内であるため、ここで写真等を使ってご紹介することは控えますが、やはり素晴らしい場所だと思いますので、一般公開されている場所+公開資料などを用いてご説明したいと思います。

■黒部宇奈月キャニオンルートとは?

こちらの動画とサイトに記載がある通り、一般の方が入れるトロッコの欅平駅から、立坑エレベータや上部軌道と呼ばれるトロッコに乗り、黒四地下発電所に向かいます。上部軌道の途中には、吉村昭さんの小説「高熱隧道」でも有名な高熱地帯を通過し、黒部川第四地下発電所に着きます。そこから落差400mの高低差を登る地下式のインクラインを登り、地下のトンネルを通り、黒部ダムに至るルートです。いよいよ2024年からは、一般の方が往来することができるようになります。

■まずは、トロッコで欅平まで

宇奈月駅から欅平を目指すトロッコ。
意外と今では電気機関車が客車をけん引する列車が珍しい。
↑ というような、鉄ちゃん目線にどうしてもなっちゃう(笑)。
宇奈月駅を出発。
宇奈月ダムと、ダム湖に架かる橋。
2001年にダムが新設され、この辺りは付け替え工事後の新線です。
新柳河原発電所。宇奈月ダムの湖底に沈んだ古い発電所の
代替で作られた発電所。お城みたいな形しています。
こちらは、出し平ダム。1985年に完成した、比較的新しいダムです。
一般客が降車できる途中駅、鐘釣駅。

こんな感じで、黒部峡谷鉄道で欅平に進みます。

■欅平から、黒部ダムへ。

この区間は、関西電力が管理する電力施設なので、写真等をご紹介するのは控えますが、とても魅力的な場所です。黒部宇奈月キャニオンルートの案内図で見てみましょう。欅平駅の少し上流まで、電力施設用の軌道が続いていて、そこで竪坑エレベータに乗り、200mの高低差を上がります。この地にある、黒部川第三発電所の高低差が、このくらいあるんだな、とイメージして登って行けば、わかりやすいです。

黒部宇奈月キャニオンルートの案内図から。

そこから、「上部軌道」と呼ばれる、地下を走るトロッコ列車に乗ります。最近、報道機関に公開された記事から、内容をご覧いただきたいと思います。

「上部軌道」とは、エレベータの上に作られた軌道と言う意味であり、黒部峡谷鉄道のことを意味する「下部軌道」の上の軌道でもあります。上部軌道は、下部の軌道よりも断面が小さいトロッコであることと、この軌道のトンネルの施工時に遭遇した、有名な「高熱隧道」の区間を通過するため、機関車は蓄電池(バッテリー式)の機関車、客車は耐熱性のある車両です。

「高熱隧道」は、吉村昭さんが書いた小説です。黒部第三発電所の建設のための、上部軌道と水圧管路の工事のための隧道を掘る人の苦闘を描いています。

この高熱隧道は、密閉された客車で通り過ぎるので、何となく熱気が感じられるくらいですが、よくこんな山奥で隧道を掘りつづけたと感じることができます。

上部軌道に乗り、着いた先は、黒四地下発電所の大きな大空洞。中島みゆきが、「地上の星」を歌った場所でもあります。

地下発電所は、大きなタービンが4基ある場所です。黒部ダムから水圧管路が伸び、400mもの落差がある水力発電所がつくられました。

この黒四地下発電所から、400mの落差のあるインクラインに乗ります。

インクラインから先は、黒部トンネルをバスに乗って、黒部ダムに到着します。やはりこのルートを昭和30年代に作り上げた先人たちの偉業には感動です。

■黒部ダムに到着

そういうルートを遡って、ようやく黒部ダムに到着します。
標高は宇奈月から1200m上がり、1400mとなりました。

黒部川の急勾配ぶりがよくわかります。宇奈月から進んできたこのルート全体で、1200mもの高低差があります。これを利用して、黒部川第一(柳河原)から第四までの発電所が整備されているのです。

上の展望台から。本当に絶景です。
こうしてたどり着くと、やはりすごい場所だなと改めて実感できます。
171名の殉職者がいらっしゃったことに対する慰霊碑。
このことは忘れてはならないと思います。
これは、黒部ダムを支えていた、昔の堤体上の高欄です。
老朽化でリニューアルされました。こういう展示も大事ですね。

■大町方面に向かう

黒部ダムと扇沢を結ぶ大町トンネルに向かうトンネル。
意外と高低差があります。
バス乗り場のところにある、黒部ダム模型。
何だかリアルな模型です。
黒部ダム、何だかゆるキャラがいるのですね。
くろにょん、とよんでね。

さて、黒部ダムから扇沢に向かうバスは、少し前までは「トロリーバス」で、天端部にある電線から集電して走る形式でした。実はトロリーバスは法律上は「無軌条電車」で鉄道に当たりますが、今は「電気バス」ということで、「自動車」に分類されるようになりました。

このバスで破砕帯を越えます。

そして、破砕帯を越えると、扇沢は長野県大町市。大町ルートと呼ばれる、長野県側の黒部ダムへのアクセスルートの拠点に着きます。

そこからは、一般道で信濃大町駅まで移動するコースとなり、信濃大町駅に着きます。

信濃大町駅、立派な駅なのですが・・
実はこの日はタイミング悪いのか、お店がことごとく閉まっていました。。

信濃大町駅は、JR大糸線の駅で、立山黒部アルペンルートの玄関口なので、大きな駅かと思いましたが・・、まさかのキオスクが定休日。商店街のお土産屋さんも定休日で、何だかあまり店が無い状況になってしまいました。地元のお店は開いていたので、何とか買い物はできたのですが。。

少々寂しい中心市街地でした。
不思議なオブジェが置かれた市内。。
信濃大町駅。大学時代はよく白馬まで合宿でこの駅まで来ていました。
その当時はスキー(シュプール号)も沢山走っていましたが・・。
大糸線の各駅停車。やっぱり信州、いいな。
帰りは1本だけ走る、特急「あずさ」で帰ります。
結構利用客多いので、もっと走らせても良い気がしました。

■終わりに

宇奈月温泉から、黒部ダムに向かう「黒部宇奈月キャニオンルート」に沿って進みました。とても見どころ満載の場所が、間もなく一般開放されるのは、とても素晴らしいことだと思います。これを機に、色んな魅力が発信されればいいと思いました。またそれと同時に、建設当時のことや、技術の変遷なども伝わっていくと良いと思います。そういった活動を、学会活動を通じても進めていきたいと思います。

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