「千の風になった」アカウントの行方は
先日、アカウント管理の難しさについて書きました。
書いていてふと、もしアカウントの主が亡くなったり認知症に成ったりした場合、家族はそのアカウントを削除できるのかどうか? という問題に突き当たったのです。
これは過去にも、何度か疑問に思ってきたことでもあります。
たとえば、趣味の自転車の先輩が海外遠征中に、不慮の事故に遭い亡くなってしまうといったことがありました。
その際、事故直前に発したTweetがずっと残っており、いつまでも残された者の憤懣と悲しみを誘い続けたという記憶があります。
もっと身近な例では、亡き父のMicrosoftアカウントがずいぶん後まで残っていたということも。
MSの場合、たしか故人のアカウントが判らない場合は身内でもアンタッチャブルと言われた上に、私自身がPCやインターネットが殆んど分からなかったこともあり、当時は放置するしかなかったように覚えています。
最近は自分でもだいぶネットとITが理解できるようになったおかげで他人にも、特に年配の人にこそITを使いこなして欲しいという願いを持つようになりました。
だからこそ、自分で使えなくなったアカウントの後始末をどうしたらいいか? という問題をクリアにしておきたかったのです。
アカウントごとの始末方法
前回の記事を書きながら少し調べたものの、長くなり過ぎる事とテーマから外れて重くなる事とから一旦切り離し、今回新しい記事にまとめ直しました。
以下、アカウントの種別ごとに示します。
Microsoftアカウント
今改めてMicrosoft公式を確認すると、やはり「プライバシーとその他の法的な理由から」アカウント情報は提供しかねる、とのことです。
ただアカウントの資格情報が分からない場合、操作が2年以上行われなければアカウントは自動停止するそうです。
(Microsoftサポートより)
つまり基本的には放っておくしかない、ということです。
Googleアカウント
Googleの場合は、生前に「アカウント無効化管理ツール」を申請することで没後に自動停止することができるそうです。
また本人の意思決定のないまま家族に委ねられた場合は、家族により「死去したユーザーのアカウントに関するリクエストを送信する」ことでも削除が可能な場合があるそうです。
但しやはりプライバシー保護等の理由からパスワード・ログイン情報は家族・遺族に提供できず、「リクエスト」に応えるか否かも審査を経て決定するとのこと。(Googleアカウントヘルプ)
SNS:Twitter
ユーザーが亡くなった場合のアカウント停止の手続きには、故人の死亡証明書や、申請者の故人との関係を証明できる書類が必要になります。
なおログイン情報については「故人との関係によらず公開できない」とされています。
SNS:Facebook(Meta)
Facebookの場合、生前に削除か「追悼アカウントに移行」かの意思決定をすることができるとされています。
追悼アカウントにすると、友達と家族がその人の思い出をシェアする場所になり、他のユーザーがログインするのを防ぎます。
なお追悼アカウントに移行を希望する場合、「追悼アカウント管理人」を予め立てておく必要があります。
またアカウント削除に関しては、故人の近親者であることを証明できる人のみアカウントの「削除をリクエスト」できます。
その際故人の死亡証明書と、申請者の故人との関係を証明する書類とが必要になります。
そしてもちろんいかなる場合でも、ログイン情報は提供できないとのことです。(Facebookヘルプセンター)
LINE
LINEアカウントは「一身専属的に利用者に帰属」つまり、アカウントの利用者のみが利用でき、たとえ亡くなっても遺族がアカウントを相続することはできないということです。
但し「最終アクセスから1年以上経過」すればユーザーへの告知なく削除できるとしています。これは故人の遺族が削除を希望した時に対応できるようにした措置だそうです。
なお故人のアカウント閉鎖のためLINEのセーフティーセンターの「お問合せ」にアクセスするには、ログインが必要になります。
ログイン後のアカウント削除・閉鎖の具体的な手順についてはガイダンスが見つけられませんでした。
アカウントに断捨離は必要か?
これまで見てきたようにアカウントの種類によって、対処の仕方が異なってきます。さらに細かいことを言えば、SNSに実名でなくニックネームで登録していると故人の本人確認ができず削除できない、といったこともあり得ます。
こう考えると、「アカウントも事前に終活で整理するべき」かと考えてしまいますが、実際問題「辞め時」というのはそう簡単に決められるものでしょうか?
…いやいや! それでは年を取ってアカウントを持つ意味がない。
死を迎えるそのギリギリまで他者と繋がり命の証を刻むために、ネットとテクノロジーはあるのではないのか?
本当の最期の時までネットに繋がっていられるかどうかはケースバイケースなのでしょうが、私個人は行動や移動の自由が利かない人ほどテクノロジーの恩恵を被って欲しいと願っています。
結果、無数のアカウントが「千の風になって」この大きな空を吹き渡っていいることになるかもしれませんが(笑)
あとは運営会社(天)にお任せして、いずれ彼岸に行くを待つというのも一つの考え方ではあるかもしれませんね。