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ホスピス住宅とはなにか?

今、私は巷でホスピス住宅と呼ばれる場所で働いています。
施設型ホスピス、ホスピス住宅、〇〇〇ホスピス、医療強化型施設、いろいろな呼称で呼ばれていますが、要はどういった位置づけのサービスなのかについてざっくり書きつつ、どんなケアが行われているのか、どんな課題があるのか、今後の展望は、みたいなものを書いてみたいと思います。
(詳しい事はご自身で調べていただくか、入居をご検討の場合は各事業所さんに問い合わせてください。)

そしてあくまで、自分が働いていたことのある施設と、コネクションがあって情報のやり取りをしている施設の現状にすぎません。また、私見を多分に含んでいますんで、n=1的な感想と捉えてください。

ホスピス住宅ってなに?

施設型有料老人ホームという形式に、自社の訪問看護や介護サービスを組み合わせて運営される、最近増えつつある在宅サービスの形態の一つです。
自宅扱いなので、訪問系サービス(訪問診療、訪問看護・リハ・介護、定期巡回、訪問歯科、訪問調剤薬局など)を利用する事が出来ます。そういった意味合いでは、利用する側、運営する側にとっても、サービス提供の自由度が比較的高いようです。

〇施設型有料老人ホーム(老人福祉法)とは?
・有料老人ホームは、健康型(介護が必要になったら退去)、住宅型(要介護でも入居可)、介護付き(特定施設入居者生活介護の基準を満たしている場合)、の3つがあります。(サ高住との違いや、介護付きの詳しい説明等は、ここではしません。)

そのうち住宅型は、入居基準、人員配置基準、施設基準などがほぼほぼないので、自由度の高い運営が可能であり、その地域や現状の社会的ニーズに応じたサービスを提供しやすい、といった強みがあります。

しかし、あまりにも基準がないので、デメリットやリスクもあるというのは言うまでもありません。(テキトーにやろうと思えばできてしまう)

ニーズ的背景と、住宅型有料老人ホーム+訪問看護介護の特徴

現在の日本の医療福祉サービスの状況として、

・病院減少、病床減少、入院期間減少
・医療依存度の高い人の在宅移行→在宅サービス拡充の動き
・そうはいっても在宅ケアの受け皿の脆弱性(看護よりも介護が足りない)
・家族介護困難や独居などで自宅療養が機能しないケースも少なくない
・その他の様々な理由で、退院しても居場所がないケース

といった事柄が挙げられます。
そこでいまニーズが高まっているのが、
医療依存度が高くても利用が出来る「自宅でも病院でもない生活の場所」として、地域の訪問診療クリニック(往診のDr)を主治医として慢性疾患の方の療養継続や、緩和ケアの方のお看取りを含めた「終の棲家」としての機能を併せ持つ「もうひとつの家」、つまり、『住宅型有料老人ホーム+訪問看護介護』なのです。
また、家族介護や独居が様々な理由で難しくなった方や、生活保護の方を受け入れる事も可能です(生活保護の諸扶助で利用可、但し一部自己負担あり)。


各社で異なる、住宅型有料老人ホーム+訪問看護介護の特色

そのような社会情勢とニーズの背景から生まれた住宅型有料老人ホーム+訪問看護介護には、運営する会社ごとに様々な特徴があります。新規参入もどんどん増えてきていますが、今のところで知っている限り挙げていきます。

①ホスピス系
ガン末期や神経難病の終末期の方が対象。入居期間に個人差はありますが、ガン末期などで早い方は数週間、神経難病他慢性疾患で進行はかなり進んではいても病状が低め安定といったケースでは年単位のケースも。
基本的に医療保険で訪問看護を利用可能な方が中心。(施設の特色的にも、経営的にも、介護保険サービスのみでは厳しいことも。)

②神経難病特化系
神経難病(PD、ALS、PLS、MSA、CBD、PSPなどPDD関連疾患)の方に特化した施設もあります。これもやっぱり医療保険で訪問看護介入が可能な方が同じような理由で中心となる。お看取りも対応。

③受け入れ制限なし
医療保険で訪問看護が介入可能な厚生労働大臣が定める疾病等の方以外でも、介護保険利用者(1号でも2号でも)であれば無差別的に受け入れ可能な施設もあります。単純に医療依存度が高くて…というケースでなくとも、病気や障害で独居が難しくなったり、精神疾患+身体障碍というケースなども。家族や親類縁者と「様々な」理由で疎遠で、世帯分離して生活保護申請→支給される扶助を利用して「自宅扱いの施設」で生活していく事もあります。(上の①②でも生保は可)

上記①~③のケース共通で、入居後に利用する訪問診療クリニック(原則、利用者がクリニックを選べます)は、基本的に在宅緩和ケアが主体になりますので、抗がん剤治療など積極的な治療を希望する場合や、退院後も元々かかっていた病院の外来に行きたい場合でも、家族同伴で移送サービスを使ったりして通院が可能です。→※但し、本人やご家族が医療機関や施設と連携して、療養継続に必要な事柄(治療計画とそれに関連した意思決定、受診スケジュール管理、処方薬の諸調整)が正確に対応可能な方(性格的にも認知機能的にも)でないと、実際問題、なかなか厳しい面があります。入所させましたハイあとは全てよろしく!的に、施設がキーパーソンの役割を全てを代行しくれるわけではありません。



ひとことで言うと、住宅型有料老人ホーム+訪問看護介護とは…?

既存の在宅サービスを組み合わせて、①病院の要素(訪問診療Drによる診療と看護師による診療の補助)や②施設の要素(療養上の世話や日常生活援助)を併せ持った在宅施設。
と言うことが出来そうです。

とある会社のCEOは、「医療依存度の高い方の地域の受け皿」としてだけではなく、「地域の在宅医たちのシェア病床」という考え方もしていて、なかなか考えさせられました。

個人的に課題に感じていること

〇制度的なグレーゾーンとブラックゾーン
訪問看護のようなタイムスケジュールが存在しますが、有料老人ホームの職員としても入居者ケアを行います。ナースコールも鳴りますので、随時対応もします。
これはつまりどういうことかと言うと、10:00-10:30は303号室のAさん、10:30-11:00は306号室のCさん、と訪問看護のようにプラン上の訪問時間が組まれています。しかし、ナースコール等でプラン上の訪問時間以外でも随時対応をします。よって、Aさんの訪問中にCさんのナースコールが鳴ったらどうなるのか、という事になります。
対応策は、人員に余裕がある施設は、訪問予定を組まれていないフリーの看護師や介護士が、有料老人ホーム職員として随時対応をします。
人員に余裕がない施設は、プラン上はAさんの訪問時間中に、Cさんの対応を行ったりするケースがあります。しかし、請求上はプラン通りに訪問看護記録を作成してしまう為、問題になっています。内部告発などで調査が入らなければ、なかなか明るみに出ないようです。

制度的な不正を弁護するつもりはありませんが、医療依存度の高い人達のケアが、時間通りに医療保険で1日3回訪問するだけでカバーしきれるのかと考えると、そうでもなさそうなのは誰でもわかるとは思いますよ。

ただ、これに関しては、「制度が追い付いていない」という考え方もあるように思います。現状、訪問看護の仕組み(自宅にサービスを届ける)と、住宅型有料老人ホームの仕組み(個室を自宅扱いして在宅サービスを使える)を組み合わせて「退院後の受け皿(自宅ではない在宅)」をつくらなければいけないような、切羽詰まった社会情勢であるという事なのです。

財政難→病院施設はお金がかかる→患者・利用者を家に返せばお金がかからない→「地域包括ケアシステム」「住み慣れた家で最期まで」とブラディング&加算で誘導してどんどん家に返そう!


家に返すことに躍起になりすぎて、本来最後のセーフティネットとなるはずであった「地域在宅ケア」を、未整備のまま安く買い叩こうとした医療福祉施策の歪みが見えてくるように私は感じています。

その歪みをなんとか解消しようと、既存の制度を組み合わせて、
苦し紛れに生み出されたのが、この「ホスピス住宅」なのではないでしょうか?


ホスピス住宅の、私が想像する未来

今や地域医療福祉の要ともなっている、
・看護小規模多機能型居宅介護
・小規模多機能型居宅介護
などは、制度化される一昔前は「囲い込みモデル」と揶揄されていました。

通い(デイ)、訪問、泊り(ショート)、場合によってはケアマネ事業所を同一法人内で運営、ケアプランを提供していた為です。

今では上記のサービスは、自治体によっては「小多機、看多機をやってくれませんか?」と開業者に補助金を出すほどのようです。

私は、ホスピス住宅も同じように地域のニーズは高いため、看多機や小多機と同じように制度化されパッケージ化されていくのではないかと考えています。「カンタキ」「ショウタキ」のように、行政チックな不思議な名前が付けられ、サービス内容がある程度統一され制度化され、報酬も絞られるのでしょう。

爆発的に増えているホスピス住宅と呼ばれる、住宅型有料老人ホームに訪問看護介護ステーションを併設しスタッフを施設内に常駐させるモデルは、いつの日か制度化され、「施設内訪問看護」なんていう言葉も聞かれなくなり、それでも医療依存度の高い人達を受け入れる施設として当たり前になっていくのではないかと考えているところです。

私は介護福祉士時代から在宅志向ですし、私自身、自宅で最期を迎えたいと考えているタイプです。しかし、誰もが自宅で最期を迎えられるほど、恵まれた時代ではない事もまた、知っているつもりです。
結局のところ、住み慣れたわが家を離れざるを得ない人達が一定数出てくるのであれば、「ベストではないにしても、わが家の次に居心地の良い終の棲家」は世の中に必要だろうと私は考えています。
それに力を使いたいと思っています。
その一つの形がナーシングホームという存在、今現在は「ホスピス住宅」等という名称と制度的仕組みを取って、世の中に顕現していると捉えています。


本当の訪問看護?

以上、ホスピス住宅の中の人、チャリが2施設で一般スタッフや管理職を経験して、現場を肌で感じながら調べたり考えたことをまとめてみました。
いかがでしたでしょうか?なんとなくニュアンスは伝わりましたでしょうか?

さいごに。
施設内訪問看護は本当の訪問看護じゃない!と違和感を口にする人がいます。私も何度かそのような言葉に触れました。

私にとっては、本当の訪問看護かどうかとか、そんなものは本当にどうでも良いものなのです。その人に届くケアであれば、ラベルが何であれケアです。社会情勢を考えず、自分がやりたいと思っているフォーマットに運よく乗ってくれたユーザーだけしか見えずに、私がやっていることは本物だと言ってしまうのは、あまりに乱暴なのではないかと思います。

施設内訪問看護が本物かどうか、自宅に行けば本当の訪問看護なのか、
看護とはこうあるべき、あれは看護じゃない、看護の仕事じゃない、
その先に待つのは間違いなく看護職の衰退です。

看護師という資格で何が出来て、
現行制度を組み合わせるとどんなサービスが作れて、
まだケアの届いていない人達にケアを届けられるのか?
既に届いているケアをより良いものにしていけるのか?
そう思考しその先を夢想できる人達と仕事をする方が、
自由を感じませんか?

チャリ

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