明治日本と西洋文明の出会い #3太平洋横断
1.船上のルール
横浜を出港した一行は、約24日をかけて太平洋を横断した。約3週間ほどをアメリカ号の船上で過ごしたわけだが、ここではそのアメリカ号の船内規則について紹介しよう。ちなみに米欧における定期航路の規則は大体これと同様である。
1 夜11時消灯。病気のときを除き、それ以後点灯していてはならない。
2 船内の部屋・客室では禁煙。
3 ペット類を室内に入れてはならない。
4 賭博禁止。夜11時以降のカードゲームも禁止。
5 出航後乗客に食事の席を知らせる札を配布する。それに従って食卓に着くこと。
6 水または酒を希望される乗客は、食事のベルが鳴る前に給仕に注文のこと。
7 乗客は外輪のカバー付近に立ち寄ったり、甲板の欄外をうろついたりせぬこと。当直士官に話しかけぬこと。
8 許可なく発砲してはならない。
9 遭難の危機に瀕した際には船長と乗組員は全力を尽くして乗客の生命はもちろん、荷物についても保護するので、騒いで自らの危険を大きくしてはならない。
10 図書室の書籍を借りたい人は船医に申し出ること。
11 午前11時に当直が巡検を行うことがある。時として合図を鳴らして消火訓練を行うことがある。その場合驚かぬよう、あらかじめご注意しておく。
(『実記1』: 27)
船は火事に弱い。規則の多くは火事などの安全にかかわるものがほとんどだ。消灯に関しても、電気のない時代だから当然だろう。禁煙もまたそうだ。
賭博禁止にしても、賭博をめぐるトラブルが乗客を傷つけるだけではなく、物品を破損したり、ランプが倒れて火が燃え広がることなどが懸念されてことだ。
船のルールについては、以前岡田斗司夫のユーチューブチャンネル「岡田斗司夫ゼミ」において、海賊についてのお話の中で触れていたので、興味のある人は聞いてみてほしい。
2.船上での楽しみ
皆さんは船に乗ったことはありますか?私は北海道苫小牧西港から青森県八戸港をよく船で行き来していた。はじめのころこそ甲板に出て海を眺めていたが、全く変化のない景色をみるのもだんだん飽きてくる。暇つぶしを考えるか、ひたすら寝るかのどちらかになる。
変化のない船での旅を昔の人々はどうやって過ごしていたのだろうか。
久米の楽しみは、毎日張り出される経緯度表と船の進行から時間を計測することだったらしい。
大洋を走る場合、終日なんの眺めの変化もなく、ただエンジンの音を聞き船の進んでいるのを知るだけなので、毎日張り出されれる経緯度、および船の進行を見て時計の時間を調整するのは、陸路の旅で旅館につくことより楽しい。
(『実記1』: 28)
陸路より楽しいというのだからよっぽどのことだったろうと思うが、中学生に時差を教えている身としては、久米ほど熱心に時差の計算に取り組んでくれる生徒がいてほしいものである。
参考文献
『実記1』
画像引用
nippon.com「岩倉使節団:日本近代化の行方を探る世界一周の旅」
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