第3回 健康でおいしい料理は引き算
料理には「足す料理」と「引く料理」がある。
「慈恩」のシェフに言われました。
調味料がたくさん入った料理は「足す料理」、最低限の調味料で素材本来の味を活かすのが「引く料理」とのこと。
「足す料理」は素材の味ではなく、調味料を食べているようなもので、だんだん濃い味依存症になるそうです。
濃い味依存症になると、体にどんどん負担をかけてしまい、現代病の原因になるんだとか…。
私は今まで、何の疑問も持たずに「足す料理」をしてきました。
例えばお鍋を食べる時、市販の鍋の素を使っていました。
味は安定しているし、便利だし、安い。
でも、今私の手元にある市販のキムチ鍋の素の原材料は、14個も記載されています。
化学調味料がたくさん入っているので、お鍋に野菜をたくさん入れても、野菜の味はしません。
一方「慈恩」は、調味料をなるべく使わない、素材本来の味を活かした「引く料理」を提供しています。
これは、私が作った塩茹でしたミニ大根(スーパー見切り品50円。笑)&アスパラ。
「慈恩」のコースで出てくる塩茹で野菜を家で作りたいとお願いしたところ、コツを教えてもらいました。
<作り方>
①水に塩を入れる。沸かさない程度で加熱し、ミニ大根を入れる。
②柔らかくなったら一気に水で冷ます。表面の塩分を落とすと甘さが立つ。(個人的にこの後冷蔵庫で冷やすと最高)
塩で茹でただけなのに、野菜って甘いんだ!と感動しました。
(そしてお菓子がわりにボリボリ食べました。笑)
なお、塩茹では野菜を甘くするだけでなく、塩が持つ「物を締める効果」により、旨味を残してくれるそうです。
ちなみに、葉野菜と根菜では火の入れ方が違います!
葉野菜は沸かして一気に火を通します。(葉緑素を壊さない&薄いため)
そうすると、一気に色が映え、甘さを逃さずに済みます。
一気に冷却すれば無駄な塩分だけが抜け、素材の甘さが残るのです。
根菜は葉緑素がないので、時間をかけて茹でられます。
でも、沸かして茹でると野菜本来の味ではなくなります。野菜の水分が膨張し、旨煮が茹でている水に溶け出し、抜けた水分があった部分に塩分がたくさん入ってしまうからです。
シェフに言われて濃い味を避けるようになってから、ボヤけていた味覚が徐々に治ってきた気がします。
健康でおいしい料理は、引き算なのでした。
【迷走女のひとりごと】
以前、オードリーヘップバーン展に行きました。
そこで印象的だったのは、「エレガントに装う秘訣は引き算」という言葉。
ファッションと化粧で飾り立てるのではなく、何か一つを綺麗にして、それを効果的に魅せる。それが清楚な美しさを生み出す。という意味でした。
オードリーの無駄を削いだ引き算のお洒落と、「慈恩」の調味料を極力使わない引き算の料理。なんだか似ているな…と思いました。