見出し画像

映画「しあわせのパン」|人は乾杯の数だけ幸せになる

今年は映画を見たり本を読んだり、食を大事にしたり、丁寧に暮らすことを意識したい・・・などと宣言していたはずなのに、気がついたら元の生活に戻っている。
理由はいくらでもある。理由というよりいいわけかもしれない。自分だけではどうにもできない事由もあったのだが、仕事をしていないことが不安というのが根本にある。
とはいえ、このままずるずるとこの状況をひきずりたくもないので、とりあえずAmazonプライムを覗いてみた。
年末年始は、個人的小林聡美祭りだったのだが、今日は別な人がいい。でも、やっぱりほっこりしたものが見たい。
ということで、みつけた。
「しあわせのパン」原田知世と大泉洋が主演だ。

東京から北海道の月浦に移り住み、湖が見渡せる丘の上でパンカフェ「マーニ」を始めた夫婦、りえさんと水縞くん。水縞くんがパンを焼き、りえさんがそれに合うコーヒーを淹れ、料理をつくる。そこには、日々いろんなお客さまがやってくる。北海道から出られない青年トキオ、なんでも聞こえてしまう地獄耳の硝子作家ヨーコ、口をきかない少女未久とパパ、革の大きなトランクを抱えた山高帽の阿部さん、沖縄旅行をすっぽかされた傷心のカオリ、観察好きの羊のゾーヴァ、そして、想い出の地に再びやってきた老人とその妻。それぞれの季節にさまざまな想いを抱いて店を訪れた彼らが見つけた、心の中の“しあわせ”とは? そして彼らを見守るりえさんと水縞くんに訪れることとは?

https://www.asmik-ace.co.jp/works/1083

やさしい、温かい。
水縞くんはいう。
好きな人と好きな場所で好きなことをして生きていたい、と。
いわゆる辺鄙な場所だが、景色は毎日変わるという。毎日が新しい世界なのだ。四季を感じ月の明かりを感じる。湖のそばにあるそのカフェはとても贅沢だ。

りえさんと水縞くんの食事のシーンがいい。静かに味わって食べる。でも、だんまりなわけではない。水縞くんが窯で焼いたパン、りえさんが丁寧に入れたコーヒー、野菜スープ。パンは割って分け合う。はじめから切ってだすこともできるだろうに、手で大きく割って仲良く食べる。あんなに味わって食べることって私にあっただろうか、と思えるくらい静かにパンをかみしめているりえさんが美しい。

分け合うたびに分かり合える。
2人だからできることがある。
ちょっとこころに暗いものを抱えていそうなりえさんにそっと見守り寄り添う水縞くんがいい。大泉洋はこんな静かな役が似合うのだなと発見。

近所の人たちや店の常連との関係もいい。人間関係が希薄になりつつある今、踏み入れ過ぎず仲間と分かち合う距離感が心地いい。人は乾杯の数だけ幸せになるという。楽しいことだけでなく、悲しいこと辛いことでも乾杯し分かち合う。分け合うことで人と人はわかりあえるというのもテーマの一つのようだ。

ついつい、流される毎日、自分の好きを、自分の大事な人を大事にすることを改めて思い出させてもらえた。今の私に沁みた。限りなくあったかい。
何度も見たい映画である。

三話に分かれているのだが、最終話の中村嘉葎雄さんの話がすごく良かった。愛だな。


いいなと思ったら応援しよう!