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ヴィクトール・フランクル 『夜と霧』

ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』は、細君の一番の愛読書である。昔から登山の折はいつも携帯し、ときに一人で開いては再読していたとのことだ。
”人間”について真っ向から向かい合い、その本質と可能性をまことに自然な筆致で描き切った、掛け値なしの名著である。

神様のカルテ2 p213より

『神様のカルテ』の中で、「明るい本ではありませんから…」とハルが語るように、この『夜と霧』には、人が人に行った負の歴史が記されている。

実は、何年も前に購入して、海外留学時代には、実際にその場所にも行ったにも関わらず読めていなかったこの本を今手にとったのは、何かのタイミングなんだろうか。実際、時間と心に余裕がなければとても読むことができない本ではあるから、今がそのときだったのだと思う。

この心理学者の記録は、読むだけでも寒気のするような悲惨な事実をつづりながら、不思議な明るさを持ち、読後感はむしろさわやかなのです。

『夜と霧』裏表紙より

正直、本書の裏表紙にあるような「さわやかさ」を感じることはできなかった。でも、あのとき渦中にいた人々がなにを考え、どんな生活を強いられていたのか、思いを巡らせることはできた。この本を読んで、少なくともこの本に書かれていることを「知っている」自分にはなれた。

あのとき読めなかった本を、読まないままにしておかず、ちゃんと自分の中に取り込めた。今はそれで十分と思うことにする。

この時代に生まれた私にできることは、自分の人生に目的を持って生きること。選挙に行くこと。人に流されず、自分の意見をしっかり持つこと。

本から学べることって、計り知れない。

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