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Fly me to the beautiful moon-prologue-
「おまえさん、本当の月を見たことがないんだろう」
祝祭の夜、皆で小さな炎を囲って夜空を見上げていると、村の占い師のばあさんはふと僕に言った。かわいそうに、と他の大人たちは顔を見合わせ、肩をすくめた。
僕はムッとする。
この村では子供が生まれる前の満月の夜、出産の無事を祈って祭りを開くのだが、僕はもう月や星を見るのに飽き飽きしていた。僕だって月を見たことくらいあるし、綺麗なのも知っている。
「おまえさん、本当の月を見たことがないんだろう」
祝祭の夜、皆で小さな炎を囲って夜空を見上げていると、村の占い師のばあさんはふと僕に言った。かわいそうに、と他の大人たちは顔を見合わせ、肩をすくめた。
僕はムッとする。
この村では子供が生まれる前の満月の夜、出産の無事を祈って祭りを開くのだが、僕はもう月や星を見るのに飽き飽きしていた。僕だって月を見たことくらいあるし、綺麗なのも知っている。