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詩集

79
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#詩

彗星ロケット

彗星ロケット

星になる

ぼくはここから

0になる

ぽうっと光った魂は

やさしい強さで昇ってく

せらせら

せらせら

美しく歌う野原には

幾千の蛍たちが

集まって

ぼくへ光を託してゆく

響きわたる

循環の音

眠たくなるような

高い音

呼ばれた少女は

呼ばれた方へ

だれも触れない

星のもとへ

美しいまま

夜の谷間へ

茶埜子尋子

トキメキの詩

トキメキの詩

雨雲を引きちぎって

地肌をさらけ出して

裂け目から

きらきら

やさしい光に包まれたら

大切ななにかが

きゅっと摘まれたみたいに

わたしのトキメキを

探し当ててしまう

白いもやで覆われた世界は

どこか遠くのしあわせを見つめてる

だれにも追われたくなくて

ひっそりと生きつづけている

砂のように軽い足どりで

目の前に現れないで

わたしのトキメキに

手を差し伸べたら

きっ

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空蝉の詩

空蝉の詩

すきま風を拾っては

洗濯して

生きるのに必死な

蝉を見てた

後どのくらい生きるのだろうか

ぼくみたいな生き物と

同じにしてごめん

解は見つからないのに

そよ風を束ねて

きみにあげたい

そこらじゅうのひかりの欠片は

檸檬ソーダの氷にすれば

なかなかいい気持ち

手に届くから悲しくて

見ているだけじゃ

どんな形かも分からない

受け入れるしかないのなら

受け入れてしまおう

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ocean

ocean

小さな星を

満たしている

たいせつなものを

見失わないように

永遠と呼んでいいのは

きみとぼくの間の

触れられない艶めきだけ

透明ななにかが

ぼくのこめかみで爆ぜたら

一目散に駆けてきて

地球の粒を

舌に置いてあげるから

くたびれるほど

美しく輝くひかり

へばりついた膜を貫いて

飴玉のように

転がして

溶かしてあげたい

最後のほうで砕いてあげたい

ぼくのことを

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潜水艇の詩

潜水艇の詩

きみが知りたい

あたかも入水するように

薄い紙が尊い気もちを知ったかのように

変わることのない気持ちは

深いところへおちてゆく

息苦しさを知らずに

この海の暗さを知らずに

きみが知りたい

まるで底を探していつまでも着かない錨のように

ぼくはそれでも

きみが知りたい

もしも暗やみの中

ぼくの息の根が止まってしまって

ようやく底に辿りついても

そこにきみがいなくても

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浜辺の合唱団

息を呑む

わたしたちのメモリーズ

見えないものへ

きらめいて

口笛も

飛べない鳥のメモリーズ

足首のきず

庇って

白鳥を抱いた人

木陰で捕まった人

窓辺で飛びだった人

かなしみは

おそれを知らない

危険な露

泣きそうなほどの

やさしさを

知ることはなかった

悔やんでできた

ハーモニー

夕焼けに染まる

海に似ている

茶埜子尋子

月のおもかげ

月のおもかげ

月のおもかげひろがって

あなたの肩へとどいたら

ねむれない夜も

あたためてゆく

ギターはひかないよ

きみがいるから

きみがいるから

茶埜子尋子

銀色の詩

銀色の詩

高い音がする方へ

トキメキが足りない方へ

変わって

変わって

花のいのちも

奪ったら

明日への切符が

届くから

土星のまわりで

引き裂かれて

きみのそばで

詩を書くよ

窓のかぜを

つまみだして

茶埜子尋子

銀河のかげろう

銀河のかげろう

きみのなみだが

言霊のように

降り注いで

どうすれば生きれるかなんて

分からなくなってしまった

見たこともない

宇宙の意味を考えて

裸足のまま飛び降りる

蜃気楼はただ

美しいだけ

遠くを見つめて

傷になる

夜の星は

ぼくのものではない

そして

だれのものでも

なにも知らないのは

穢れた少女が抱えた

深い傷のような

凄惨なこと

美しさのなかで

化石になった

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草創の詩

草創の詩

青く燃える

きみの瞳のように

時代が輝きはじめている

ざわざわと震える

あの山々の連なり

時代は君を待っていた

花びらの先のように

細やかな潤いは

いずれ黒曜石の刃のような

鋭い孤独になるのだろう

時代に生きることなく

時代を攫っていけ

茶埜子尋子

蛍の詩

蛍の詩

飛びなれて

忘れたくないものも

なくなってしまってる

草で切れた中指に

露を垂らそうとしても

風に拭われて

オオカミの遠吠えだけが

この谷に響いて

青く光るこの花の名前も

忘れてしまったみたい

覚えていても

心地良さなんてなくて

あれば狂ってしまうのに

今の今まで

そうしてまで

見たかったもの

この谷の守り人も

絶えてしまったというのに

美しく残ったまま

変わ

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月読の詩

月読の詩

薄いからだに

光を廻らして

きみのいのちの在り処を説く

自然が生まれたようにしていれば

きっとぼくらは死ぬのだろう

だからいつまでも

自然を殺さねばならないのだろう

摂理というのは

近い未来じゃなくて

遠くの宇宙をいつもみている

それをぼくらに知らせずに

されるがままに死んでいく

それかぼくらが気づけていないのか

なすがままに殺していく

まったくそれは

簡潔な気持ち

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花葬乙女

花葬乙女

海辺の会食には

白いワンピースで

リボンをほどいて

生贄になれないのが

苦しいの

数奇な運命に

指を刺されながら

ギラギラ光る

無数の単眼を

とめどなく浴びて

死んでしまいたい

支配されてもいい

血しぶきを丁寧に

舐めあげてゆく

うっとりするような

殺気に慄いたら

どうかここへ

おいでください

身体の奥が

あつくなるような

わたしはあなたを

心待ちにしてい

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痛いの痛いの

痛いの痛いの

痛いの痛いの

とんでいけ

絡まった針金を

ぐるぐるって

メリーゴーランドにしたら

逆夢のはじまり

こんどの夜は

指を切って

愉しかったら

裂いてあげよう

面白いの見たさに

見失って

ピエロになったのは

どっち?

深い淵に

はまってしまって

もがいてるのは

どっち?

痛いの痛いの

とんでいけ

見えないフリしてる

あいつに

トンデイケ

茶埜子尋子