笑顔になれる飲み物をつくる人でありたい
もやしもん第8巻を読んでいて、ふと思ったこと
片付けをしていたときに大好きなビールのことをフワフワと考えていた。最近はお茶だけに限らず嗜好品と呼ばれるお酒全般やコーヒーなどにもしっかりと目を向けてある程度の知識をつけていきたいと思っている。そんなときに、ガサっと一冊の本が落ちてきた。片付けながら目についたその本は「もやしもん」だった。もやしもんは主人公が菌が見えるという設定で農大に通いながら酒造りなど多くのことを経験しながら成長していく物語なのだが、これが実に勉強になる内容に溢れている。物語の内容的に自分たちの学生生活を思い出しながら、「発酵」に関する話が頭に入ってくるためか、講義を受けているような感覚もあるが、授業を受けたり教科書を読んだりするよりもずっと知識が頭に入ってくる。もちろん、わかりやすい部分だけだったり、もっと深堀できるところはあるのだが、知識の導入としてこれほど頭に内容を印象付ける読み物はなかなか無いと思う。そして、第八巻はビールがメインテーマとされていたためか、私は運命だと悟ったかのように夜更けにも関わらず2周してしまった。漫画というにはあまりにも内容が濃いためしっかりと時間をかけて。
最終的に、オクトーバーフェストを大学の畜産祭りと一緒に仕掛け、地ビール(今でいうクラフトビール)の全国の醸造所を一気に呼び寄せ(漫画内に実際の地ビールのメーカーたちのバナーが並んでいるほどの熱量で)一日中ビールの祭典を行うという内容だった。この話の主人公は地ビールに対する偏見を持っていたが、地ビールの若き醸造家と出会い、ビールという飲み物に対する考え方が変化していき、最後は一人のビール愛好家として(酒好きとして)「ビールとは何か」という問いに向き合い一つの答えにたどり着くことになる。
この漫画が描かれていたころ今よりもずっと日本の地ビールの世界は閉鎖的で味わう消費者も内輪の愛好家だけという話で、まるで広がりを見せない地ビールという描かれ方だった。嗜好品なのでそのような側面ももちろんあろうが、偏見を持つ人々も少なからずいたということだろう。知識をひけらかし、まるで学者であるかのようにビールを評価しながら飲むようなイメージっだったのではないだろうか。
そして、1人の女性醸造家と出会い、またビールの歴史的なところに触れながら実際味わいながら考えを改めていくのだが、彼女は自分もまた「知識をひけらかし偉そうに評価しながら飲む消費者(しかも学生の分際で)」になってしまっていたことに気が付く。そして、同期の学生がアルバイトで働くバーでビールについて説明を受けながら飲むシーンがあるのだが、まるで「ビール様」に緊張感のある面持ちで対面したときに同期から「何で畏まってビールに対面しているの」と指摘されたときに目が覚めていく。
その時に、ああ日本茶も同じような状態になっていないだろうかと頭をよぎった。
同じ嗜好品として、とても危険な状態になってしまっていないだろうか。
私たちは、お茶の生産の苦労を少なからず理解しているし、多くの品種や産地特性、製造方法の違いによる味わいの違いについて理解しているつもりだ。
SNSを見ているといささか、最近は繊細にそんな内容を分析し評価し嗜むような投稿が多く感じられる。いや、もちろん嗜好品なのだからそういった傾向が表れたとしてももちろん悪いことではないのだが、低迷する日本における日本茶の広がりを助けることにはつながらず、むしろ狭き門を形成してしまう恐ろしさを感じてしまう。
まして、そこに海外のお茶まで入り込んでしまうともはやマニアックすぎて門どころか壁になりかねない気さえする。
問題なのは、そんな消費者サイドの楽しみ方ではない。売り手もそこにフォーカスした売り方をしていることかもしれない。そこまでマニアになった人たちはもはや賞賛の域だろう。でも大多数がそんな域に達していない「何も考えずにお茶を飲む人たち」なのに、深堀したものがどんどん増えていっている印象だ。
ビールに話を戻すと、最終的な結論として「ビールは笑顔で飲み、笑顔を生み出す飲み物だ」という考えでまとまる。まさにその通りで、本場のオクトーバーフェストではビールをただ飲み楽しむ人の笑顔であふれている写真を主人公たちが目にすることになる。
お茶も同じではないか。
祭りのように大規模にはならないかもしれないが、少なくとも急須で淹れてさしあげた相手とは笑顔で語り合い、どんなお茶だったとしても話が盛り上がるような、そんな飲み物だったのではないだろうか。
確かに多様化してきているお茶の世界、嗜好品の世界は望みさえすればいろんなものが手に入り、楽しむことができるしそれついて語ったり学んだりすることができる。
しかし、実は嗜好品の本当の役割、本当の我々に対する存在感は「人が楽しく笑顔で語り合えるための飲み物」なのではないだろうか。
専門的な知識なんていらない「ただ美味しい」から飲みたい。友達や家族と飲みたい。この先もそんな飲み物でいられたらうれしいし、むしろそんな飲み物にしていきたいと考えを巡らせた深夜3時だった。
オクトーバーフェストのようなイベントはお茶には不可能なのだろうか。
日本中のお茶農家お茶屋さんが一堂に会し、それぞれのお茶を1品ずつ持ち寄りひたすらお客さんにサーブしていき、お茶を飲みながらまったりと一日を楽しめるような日があっても面白いかもしれない。
相変わらず、小学生の感想文のような文章だな(笑)
でも、思ったことを書く場所があってそれを公開する場所があって今の世の中はとても面白い。(もちろん恥ずかしいと思わなければ)
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