自己実現への執着心を力に変えるアスリート達 ~すいのこ著『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』読書感想文~
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おはプレイド✋ちゃんじろです!
僕はウェルプレイドという会社で、esportsの大会や番組を作るディレクターのお仕事をしています。
ウェルプレイドはプロゲーマーのマネジメントを行っており、スマブラプレイヤーのすいのこ選手もそのひとりです。
そんなすいのこ選手、このたび小学館新書から『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか トッププロゲーマーの「賢くなる力」』という本を7月30日に出版しました。
すいのこさんはウェルプレイドの社員でもあります。同僚でマブダチの彼が本を書いて出版するなんてことがあるなんて、僕は夢にも思っておらず、まずこの事実にとても感動しました。
そりゃあ発売と同時に購入して読みますよね。
今回の記事では、彼の執筆した本をサラッと紹介しつつ、読んで僕が感じたことや考えたことをシェアできればと思います。ガチめの読書感想文です。
1.どんな本か?
本のそでには、こんなことが書かれています。
実は、プロゲーマーには有名大卒の高学歴が多い。「ゲームを頑張る力と、勉強を頑張る力には相関があるのではないだろうか?」―自身もプロゲーマーである著者が、大人気ゲームのトッププレイヤーや、脳機能に詳しい医師にインタビュー。
ゲームを頑張れば頭は良くなるのか? ゲーム依存症はどうすれば避けられるのか? 疑問や不安を全てぶつけた。
要するにゲームと頭の良さの関係性を探りつつ、昨今のゲーム周りのネガティブなニュースについても検証してみようということですね。
具体的には以下のような内容になっています。
■勉強ができるeスポーツ選手の代表格である3名へのインタビュー
(ときど氏・ネフライト氏・ふぇぐ氏)
■高学歴スマブラプレイヤー座談会
(aMSa氏・Abadango氏・すいのこさん)
■ゲーム脳やゲーム依存、目への影響についての医師へのインタビュー
■ゲームを教育やITに活かす国内外の取り組み事例紹介
そのほか各章の間では、パキスタンの最強鉄拳プレイヤーや90歳のゲーマーおばあちゃんへのインタビューなどもそれぞれ収録されています。
本自体は200ページ弱とボリュームも手ごろですし、すいのこさんのとても読みやすい文章も相まって、ストレスなく読み切ることができました。
2.自己実現への執着心
僕が本を読んで一番印象に残ったのは、やはりプロゲーマー3名へのインタビュー。
一言で言うと、彼らはとても自分の欲求にピュアだなと思いました。
「ゲームの世界で輝くこと」が彼らが心から求めることで、それに対して極めて素直に、どん欲に生きている。
例えば、東大を卒業している超高学歴のときどさん(ストリートファイターⅤのプロゲーマー)から語られるエピソードは、大きな挫折を含むものでした。
大学院に進学したものの、希望とは異なる全く興味のない分野への研究室に配属されたことをきっかけに勉学が上手くいかなくなり、それを周りに相談することもできずにどんどん自分を追い詰めていったとのこと。
またプロゲーマーになってからも、相手のキャラを考えずに自分のキャラの強さを押しつけるプレイスタイルから、最初は調子が良くても次第に対策されて勝てなくなるということが起こったとのこと。
しかし、ときどさんはその度に自分をアップデートしていきます。
ゲームに取り組む姿勢を、普段の生活習慣だったり他人とのコミュニケーションにまで広げて考えつつイチから見直し、強くなることを求めて日々真剣に取り組んでいます。
ときどさんがなぜそれだけ突き詰められるのかというと、ひとえに「ゲームに対する情熱」が振り切っているから。
それはもちろんゲームに対する「好き」が出発点でしょうし、僕にはそこに異常なまでの執着があるように感じられました。
ときどさんはおそらく、「自分はゲームの世界でしか生きられない」と思ってるんじゃないかと僕は感じています。
ときどさんは頭も良く能力も高く、恐らくやろうと思えばいろんな仕事を上手くできるタイプの人だと思います。
だけど、ゲームについて突き詰めている時が最も活き活きしていて自分らしい。だから、それで生きていく。
挫折のたびに再確認して決意をより強固にし、乗り越えて来たのではないかと思います。
残り2名のプロゲーマーの方々も、形は違えどゲームの世界で輝くことに強い執着を持っていると強く感じます。
ネフライトさん(Fortniteのプロゲーマー)は固定観念を捨てて強くなるために何でも取り入れる、ふぇぐさん(シャドウバースのプロゲーマー)は、限界を超えた練習量で勝負所で最大の集中力を生み出すといった、執着を感じられるエピソードがありました。
著者であるすいのこさんも自身の体験で、どうしても参加したかった大会に仕事で出場できなかったことが大きな悔しさとなって、退職も辞さない覚悟でスマブラにより打ち込む環境に身を置きたいと決意したと記しています。
これもまさに、心から納得いくところまでスマブラを突き詰めたいという彼の執着でしょう。
見方によれば、「ゲームがやりたいから会社を辞めたいなんてけしからん!」と思われるかもしれませんが、すいのこさんにとっては人生を変えるほどの出来事だったのです。
僕は素敵だと思います。
3.こんなげーむにまじになっちゃってどうするの
次はこの著書が投げかけている「ゲームを頑張ると頭がよくなるのか?」の問いについて考えたいと思います。
この段落のタイトル、何かご存じでしょうか。
知らない方は、こちらの画像と説明をご覧ください。
ファミコン用ゲーム「たけしの挑戦状」の有名な台詞。
エンディングに現れるえらいっのメッセージを見た後、電源を切らずに放置していると登場する隠しメッセージ。
何十時間というストレスに耐えつつ、こんなクソゲーを最後までやり込み、隠しエンディングまで探し出したプレイヤーに対して、あまりにも理不尽かつ率直すぎる意見である。
※ピクシブ百科事典より引用
このゲームが発売されたのは1986年。娯楽としての家庭用ゲームは黎明期で、玉石混交の様々なソフトが発売されていた頃です。
ゲームはただの暇つぶし、マジになるほどじゃない無駄なことという価値観が透けて見えますね。この価値観、日本では今現在でも色濃く残っているのではないでしょうか。
「ゲームを頑張ると頭がよくなる!」とは信じられないように思えますが、どうでしょうか。
この本の中に明確な結論はありません。なのでここからはもう本とかじゃなくて僕の意見になってきますが、以下のように考えています。
・ゲームを頑張ると頭がよくなるは真実
・主に育つのは言語能力と課題解決能力だが限定的
・対人ゲームに本気で取り組むと、課題解決能力はさらに伸びる
※ただし、ゲーム以外でも同様の効果を得られるものはたくさんある
総括して言うなら、ゲームを頑張れば頭は良くなると思います。いろんな文章が出てきますし、プレイヤーはゲーム内で課せられる課題を解決するために創意工夫を凝らしますよね。そういう体験を通じて何かしらのレベルアップをしないはずはありません。
主に育つのは言語能力と問題解決能力だと思いますが、これはどちらも限定的かなと思います。ゲームだけで言語の広大な範囲をカバーするのは困難だし、かなり偏りもあるのではないかと思います。問題解決能力も、一般的なRPGなど想定解が基本的に用意されているものにたどり着くタイプが大多数であるため、自由度が高い問題に対しては弱いかもしれません。
その上で、今回の本に登場したプロゲーマーたちがプレイしているような対人ゲームを突き詰めることに関しては、さらに高次元の課題解決能力を身につけることができるのではないかと思っています。
対人で勝つことを目指す場合、相手によって解決すべき問題の形が変わり、大きな目標をクリアするために、その手前の課題を自ら設定していく力が必要となります。
設定した課題が適切でなければ修正することもあるかもしれません。情報収集したり、誰かの協力を得るなど間接的な手段が解決のスピードを加速させる場合があるかもしれません。
こういった課題設定→解決を繰り返し行っていくことは、社会生活をする上で非常に良いトレーニングになるように思います。
※もちろん、「ゲームでないと得られない!」とは思っていません
4.おわりに
読書感想文と言うていで、飛躍して僕が考えたことまでをシェアする記事になっちゃいました。
プロゲーマーたちの自己実現に対するピュアさゆえの執着心に驚かされつつも、これはとても理解できるなと思っています。
僕もいまeスポーツの裏方の仕事をしているのは、「リーグオブレジェンド」にドハマりし、大会シーンを見て感動したという原体験があったから。(その辺の詳しい話は以下の記事をお読みください)
僕も結構プロゲーマーの方々に近い人種で、自分が好きで楽しめることに触れて生活していたいのです。恐らくその欲が強くて、我慢できなくなってしまう。
この本を読んで、そういう自分の価値観も再確認できました。
大きく生活が変わるということはないですが、初心忘れず真摯にやっていこうと思える読書になりました。
余談ですが、僕の父親にもこの本を勧めたらすぐに読んで、感想を送ってくれました。
※無断で転載しました
とても素敵なことを言う父親で、嬉しくなりました。
それではこの辺で。おつプレイド!