ひと休みしたい気持ちは同じだから
慌ただしく過ぎる毎日。
肩が凝っても、目がかすんでも、気合いで乗り切れはずだと自分に「発破」をかける。ひとつが終わったら「はい!次!」と号令が脳内に響く。テンポよくもあり息切れしそうにもなった。
そんな昼下がり。
所用を済ませようと車に乗り込んだ。あぁ、何かがフロントガラスについている。よくよく見てみると働きバチだった。両脚にはたっぷりと花粉をつけている。
きっちり仕事をしていた働きバチだったのだろう。しかしなぜこんなところにいるのか?疑問に思った瞬間、「もしかしたら?」という情景が頭に浮かんだのだ。それは次のような話だった。
両脚に花粉をたっぷりとつけて巣に戻る。花粉を運び終えたら、「はい!次!」と巣を飛び立って、働きに出なければならない。その往復の合間にふと休憩ができる場所をみつけ羽を休めた所が、たまたま私の車のフロントガラスだったのだろう。
そんなことを思ったら、車を動かして追い払うことができなかった。
「ひとやすみしたいよね」
その気持ちは自分自身に対してでもあったし、働きバチに対してでもあった。曇り空に浮かぶ働きバチのシルエットを眺めながら、ぼんやりと過ごす、ほんのひととき。
3分かそこら。長くても5分ほど。ただそこにいるだけの一匹と一人。短い時間ではあったが、慌ただしい毎日の中では、十分過ぎるひと休み。
ほどなくして日常に戻った働きバチと私であった。