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#ゲーム制作徒然「プロダクトはコンセプトと共に」
#ゲーム制作徒然 。
どうも、死に急ぐ生命の果実です。
みなさん、ゲーム作ってますか?
え、作ってない。
まぁ、そういう方もたくさんおられますでしょう。
自分はというと、仕事にしろ趣味にしろ、ゲームを作るということには何かと縁があります。
自分が作ったものでひとが楽しそうに遊んでくれるのを見ると、なかなか感慨深いものがあります。
一言にゲームを作るというとあいまいな話なのですが、今日はその中の考え方のひとつ、「コンセプトデザイン」というものについて少し書き記しておきたいと思います。
ざっくり以下のような構成でお話をできればと考えております。
そもそもコンセプトとは何か
コンセプト【concept】の解説
1 概念。観念。
2 創造された作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点。「—のある広告」
プロダクトを制作する際、企画書・提案書にはよく「企画概要」や「コンセプト」などが記載されることが多い。多いというか、必ずある。
まず、それらがどのような意味を持つのかを考えたい。
もちろん、これを取り扱う企業や記載する人、受け取り手によって、その意味は異なってくる。
そのため、今回はあくまで「筆者の考え方」を記載する。
数あるうちのひとつの考え方として参考になれば幸いである。
筆者の考える「コンセプト」
「コンセプト」とは「プロダクトの目的」である。
「プロダクトの目的」とは「そのプロダクトによってなにを成すか」である。
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目的がなければ、地図があっても道しるべがあっても無意味である。
ああだこうだしてなんやかんやして、なんとかたどり着いた先に目的がないのだから、到着することに意味はない。
ゲームにしろなににしろ「プロダクトによってなにを成すか」は非常に重要である。
ゲーム制作ではコンセプトは必要であるし、ゲーム制作以外でも比較的シンプルな制作物であっても必要である。
現代のゲームプロジェクトのように曖昧かつ大規模かつ複雑なものだとなかなかイメージがしづらいと思うので、今回は比較的シンプルなプロダクトで例えようと思う。
「マリオ」で例えてみよう、という話。
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今回は「スーパーマリオブラザーズ」で例えてみようと思う。
ちなみにあくまでイメージの例えであるため、コンセプトの解釈が歴史的事実と異なる場合もあるが、まぁ温かい目で見守ってほしい。
さて、コンセプトの話をしよう。
先も述べたように、コンセプトとは「プロダクトによってなにを成すか」。つまり「その製品をユーザーに与えることで実現したいことはなにか」である。
なぜ敢えてこのような言い回しをするかといえば、「コンセプト」と「企画概要」がよく混同されるからである。
まずはここの違いから説明していきたい。
「企画概要」と「コンセプト」
みんな知ってるであろうスーパーマリオブラザーズ(やや長いので、以下マリオと略称する)だが、一応注釈を入れておこう。
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『スーパーマリオブラザーズ』(SUPER MARIO BROS.) は、任天堂が発売したファミリーコンピュータ用の横スクロール型のアクションゲーム。
マリオがどんなゲームなのか、これを読んでいる人には説明は不要だと思う。
さて。それでは、強いて説明するならば、あなたはなんと答えるだろうか。
マリオがいて。
右に進んで。
ジャンプをして。
踏むと敵を倒せて。
キノコを取ると大きくなって。
ゴールにたどり着けばクリア。
まぁこんなところだろうか。
これは企画段階では「企画概要」に当たる。
どんな内容のゲームで、どんなことをするのか。なにをしたら勝ちで、なにが楽しいのか。そういったところを語るのが企画概要の項目だ。
それに対して、「コンセプト」とはなんだろうか。
マリオのコンセプトはこうだ。
「ファミコンの主力を担うタイトルであり、まだ一般的でないコンピューターゲームを一般に浸透させるポジション。誰でもわかりやすい操作性と爽快なアクションを体験させる」
概要は「あくまでそのプロダクトに対する言及」であるのに対し、コンセプトは「そのプロダクトをユーザーに提供することで実現したいこと」と解釈していいだろう。
ゲームの企画書で「赤い服を着た男性が横に進んでキノコを取ったら大きくなるゲーム」と書いてあったら、「赤い服を着た男性が横に進んでキノコを取ったら大きくなるゲーム」になるだろう。
「それ」はできるかもしれないが、それ以上のものにはならない。
一方で「ファミコンのローンチタイトルであり、まだ一般的でないコンピューターゲームを一般に浸透させるポジション。誰でもわかりやすい操作性と爽快なアクション」と設定していたらどうだろう。
「それ」を目指して、「それ」を実現するためにはどうしたらいいのか、スタッフ全員が議論して、よりいいものが生み出せるのではないだろうか。
地図でいうなら、企画概要は「ざっくりとした経路」であり、そこを通る選択肢は限られている。
コンセプトは「目的地」であり、そこに到着するための最善手を全員で考えることができる。
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目的地が決まっていれば「そこに向かうまでの時間」「予算」「食料」など、さまざまな視点から検討を重ねることができるし、「自転車で」「車で」「いや、ヘリコプターで」など、思っても見ないアイディアが出るかもしれない。取れる手段は様々なのだ。
全員で目的を共有する。
これがコンセプトの存在意義だ。
「ターゲット」という第三の要素
もちろん、コンセプトは「自由な手段が取れるよう曖昧であればいい」という話ではない。
明確なビジョンを持って、説得力のあるコンセプトにしなければならない。
プロダクトによってなにかしらの変化を起こすことが目的なら、最終的にそれが必要なユーザーの下にいきわたらなければならない。
企画を実現するためにはターゲット想定が必要なのだ。
「どういう人に対して(ターゲット)」
「なにを起こしたいのか(コンセプト)」
「そのために何が必要なのか(企画概要)」
マリオでいうなら、
「まだコンピューターゲームを体験したことのない層に対し(ターゲット)」
「わかりやすい鮮烈な体験を与え、コンピューターゲームを広く浸透させる(コンセプト)」
「そのために『マリオという遊び』を提案する(企画概要)」
といったところだろうか。
なんとなく「企画概要」と「コンセプト」と「ターゲット」の役割はわかっていただけただろうか。
「コンセプト」が決まっていれば、それを誰に対して訴求するのかの「ターゲット」、どういうものを作ればいいかの「企画概要」はおのずと決まってくる。
まとめ
結局のところ「企画概要」は企画者の考える「こういうものを作りたい」という結果なのだが、実際に大切なのはそこにたどり着くまでの「コンセプト」だったりする。
向かうべき目標とやる気、予算、あとは仲間がいれば、おのずとコンセプトを達成とするプロダクトは形になってくる。
んまぁ、一応フォローしておくと、コンセプトだけしっかりしてるけど企画概要がないというのはもちろん問題だ。
そりゃなんとなくでも叩き台がなければ困る。
どんなものが作りたいのか、イメージは大切といえば大切である。
あくまで優先順位と役割の話として、今回の一連の話は受け取ってほしい。
追記
企画の立ち上げで「コンセプト」「ターゲット」「企画概要」があれば、それでいいのだろうか。
この「目的」「対象」「手段」という考え方は、いろいろな形で役に立つ。
特にゲーム制作のような多人数で分担する場合、認識の共有に有効だろう。
企画の立ち上げだけではなく、ゲームを構成する各要素すべてにコンセプトを設定するといいよーという考え方である。
はがねの剣
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具体的な例えとして、RPGによく登場する「はがねの剣」を持ち出してみよう。
一般的なイメージとしてはどんな感じだろうか。
特に物語上の重要な役割はない
魔法や属性効果、アイテムとしての希少性など、特殊な要素はない
プレイヤーの訪れる3つくらい先の街で売っている
普通の武器
一旦こんな感じとしよう。
普通に考えたら「最初に持っているこん棒からイイ感じに攻撃力を上げればいいんじゃない?」となるだろう。
まぁそれはそう。
なのだが。
ここではがねの剣に与えられた「ゲーム的な役割」を考えてみよう。
はがねの剣のコンセプト
はがねの剣のコンセプトは「劇中で最初に感じる鮮烈な『俺TUEEEE!!』」である。(とする。)
さて、それを実現するにはどのような調整にすればいいのだろうか。
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訪れた街で目にしたとき、最初は少し高根の花な値段
しかし苦労してお金を貯めて手に入れると、その時点では最強の武器
これまで苦戦を強いられた敵にも余裕で勝つことができる
キモチイイ!
『俺TUEEEE!!』
いかがだろうか。
アイテムひとつとはいえ、適当ではなく、きちんと与えられた役割をこなせるように強さや価格などのパラメーターを設定する必要があるのだ。
そしてそのための目的として、「このアイテムによってどんな体験を与えるか」。つまり「コンセプト」が必要になる。
適当にやってはいかんのだ。
ゲーム全体として、ユーザーに与えたい感情・衝動などをコンセプトとし、それを導くために、ゲームを構成するキャラクターやアイテム、機能や仕様などなどが、それぞれのきちんとした明確なコンセプトのもとに設計される。これが理想形である。
これは「コンセプト」「ターゲット」の考え方なくしては実現しないのだ。
ということで、コンセプトの設計って大事だねーという話。
蛇足かもしれないが、追記は以上。