自己肯定感を育るニューメソッド
今回は、私の研究分野の一つである自己肯定感についてお話していきたいと思います。
最近、「自己肯定感(自尊心)を高めよう」という言葉をよく耳にします。特に教育現場では、近年子どもたちの自己肯定感をいかに伸ばすかということに力が入れられてきました。ちなみに、自己肯定感も自尊心も、どちらも英語ではself-esteemと訳され、語源は同じです。
しかしながら、一方で「私は自己肯定感が高いと思います。だから、誰かに自分のことを否定されると、つい腹が立ってかっとなってしまいます」とおっしゃる方がいます。しかし、これは自己肯定感の意味を取り間違えている可能性が考えられます。
自己肯定感が高いということは、自分を否定しないということです。しかし、自分に自信があるからといって、意固地になって自分の意見を通そうとしたりすることとは異なります。むしろ、本当に自分に自信があったら、自分の意見が否定されても、すぐに怒らず冷静にどうしたらよいか判断できるはずです。
自己肯定感とはケーキでいうところのスポンジ、つまり土台のようなものです。勿論、日常において、人は言動や選択を間違うこともあります。しかしそれは、ケーキでいうと飾り付けのようなものです。スポンジがしっかりしていれば、飾り付けが少々まずくともやり直しが効くこともあります。つまり自己肯定感の高い人は、自分が完璧でないことも知っており、自分の限界や弱さを認めることができるのです。そのスポンジ部分を、「人間力」と表現してもよいかもしれません。この人間力をしっかり育てていれば、人は人生の荒波を超えて行きやすくなるのです。
自己肯定感は、主に乳幼児期につくられます。従って、その時期にしっかりと子どもを愛してあげ、肯定的に育て、自信をつけさせてあげることが、親の最も大きな務めです。それは甘やかすのとは違います。むしろ失敗や願いが叶わないといったストレスを体験し、それでも根本は愛していると子どもに理解させるようにすることが大切です。
具体的には、結果がどうであれ頑張ったことを認める、そしてその子の力を信じ、他と比べないということが重要です。心理学者のアドラーによると、「~してくれてありがとう、助かったよ」とか、例え結果が良くなくとも「よく頑張ったね、次はきっとうまくいくよ」といった言葉がけがよいといわれます。
しかし中には、子どもの幼児期に仕事や病気、家庭の事情などで、どうしてもきちんと関わることができなかったというご両親もいらっしゃることでしょう。その場合でも、乳幼児期より長く時間をかける必要はあるかもしれませんが、上記のように根気強く肯定的に関わることで、自己肯定感を育むことはできます。
さらに、残念ながら肯定的な育て方ができる親に恵まれなかったという方もいらっしゃると思います。その場合も、自分で自己肯定感を育てる方法があります。次にご紹介する方法を、習慣になるくらいまで、日々試してみてください。
1. 何かできた度に、心の中で「よく頑張った!」「大丈夫!」と自分に声をかけてあげてください。言霊といいますが、言葉には力があります。繰り返し呼びかけることで、潜在意識に肯定的な言葉が刻まれていきます。
2. うまくできなかった時も声掛けのチャンスです。心の中で「大丈夫!」「失敗は学びのチャンス!」「次頑張ろう!」などと、呼びかけてあげてください。
3. 上記の1,2を応用して、一日の終わりに三行日記を付けるのもよいでしょう。①今日うまくできなかったことと勇気づけ ②よくできたことへのご褒美の言葉 ③明日挑戦してみたいこと を一行ずつ書きます。
4.これは、愛恩法の方法の一つでありその研究からも効果が証明されたのですが、 身体にご褒美をあげると良い効果が期待できます。人はストレスを感じている時に、体のどこかに無意識に負担をかけているものです。つまり、あなたが頑張っている時、身体も一緒に頑張っているのです。ですから、一日の終わりにでもよいので、今日あった出来事を思い出し、例えば胃や腸、心臓の辺りなど、ストレスをかけているところを優しくさすってあげ、「一緒に頑張ってくれてありがとう、助かったよ」と呼びかけてあげてください。身体への呼びかけや優しさは、脳に直接返っていき、ストレスをより速く解消しやすくなります。
自己肯定感を高めることは、人によっては時間がかかるかもしれません。しかし、一歩ずつでも行う価値はありますので、是非根気強く続けてみてください。
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