見出し画像

「なぜやる気は長続きしないのか」の読書感想

『成功の鍵は自制心』ってほんと?

「諦めたら、そこで試合終了ですよ・・・・?」

どこかで白髪の先生がいっていたように。成功するには、自分の感情を抑え込み、意志を強くもつことが大事だと、子供の頃から聞かされてきました。

しかし、意志の力も気がつくとすり減ってしまうし、歯を食いしばって頑張ることにも限界があります。そんなに人間強くできてはいません。

ただでさえ変化の激しい現代社会。多種多様なストレスにさらされ傷つきながら、内面世界でも『理性vs感情』のバトルを日夜繰り広げ続けていたら、精根尽き果ててしまいます。一度たおれたら、立ち上がれません。。

そんなわれわれに救いの手を差し伸べてくれるのがこの本。アメリカ心理学会のジャーナル「Emotion」の元編集長が、数多くの論文と実験結果を引用して、事実に基づいた論理展開をしてくれています。

※以降の画像(スライド)は、まとめてPPTにして末尾に添付してます。

未来より、いまでしょ

人はだれしも「将来のための。。」よりも「今すぐ。。」を求めがち。

「今すぐお金をもらえるのと、1年後にもらえるのはどっちがいい?」となると、当然「いまでしょ」となりますが、「じゃあいくらなら1年後でもいい?」というのを突き詰めると、こんな結果になります。(前提を大幅に端折ってますが、あしからず)

スライド2

1年後に本当にもらえるかなんて分からないし、なにが起こるか分からない未来にかけるくらいなら、いますぐ手に入れたい。目先を優先してしまう心理は共感しますが、ここまで差があるというのは衝撃的。

どうせ俺なんてマインドセット

他人や社会の未来が信用ならんことに加えて、人は自分自身の未来のことも信じることができません。

スライド3

「自分はこれからもこのままだ」「どうせ俺なんて」という考え方だと、自分の将来の可能性を信じられないので、「未来に賭ける」よりも目の前の快楽を優先してしまいます。

「自分は成長できる」という(未来への)自信をもつことが、未来の自分のために投資するための前提になります。そろそろ年明けも近いですが、元旦は晴れやかな気分だからこそ「今年こそ、やせるぞ!」といった抱負も宣言できますが、悲観モードで守りの姿勢のときに未来にポジティブな思いを馳せるのは無理な話です。

意思は自分の過ちを正当化する

さらに厄介なことに、脳内の司令官にあたる「意思」は、完全無欠な超人ではなく、すり減って力を失っていくと、不正行為すら「合理的な判断」として容認します。

スライド4

「上に命令されてやっただけ」、といったあたかも合理的な正当化をすることで、結果として不誠実で道徳的でない行動をとってしまうことに繋がります。(これは賢い人が悪いことをする、という話ではなく、あらゆる人に起こりうる「意思の力が悪いループにハマった場合」の話です)

「意思の力」の欠陥の1つは、復元力がない点にあります。1人で苦難に耐え忍んでも、忍耐力がつくどころか、自暴自棄にすらなりかねないスパイラルに陥ってしまいます。

人とつながるための感情

では、意志に頼らず、やる気を長続きさせるにはいったいどうしたらいいのでしょうか。その答えが、「3つの社会的感情」です。

スライド5

まずは『感謝』から

自分のために人が力を注いでくれたと感じたとき、人間は感謝の心を抱き、将来、自分もその人のために何かしてあげたいという気持ちが湧いてくる

自分に何か与えてくれた人へ、お返ししたいという気持ちをもつ。更には、感謝の気持ちは見ず知らずの人を助けたいという気持ちにも繋がります。だれかへ与えることそのものが、有益で素晴らしいものだと思えるようになります。(『世界は贈与でできている』にも通ずるところがあります)

次に『思いやり』

思いやりは、向ける相手が自分自身であるか他人であるかに関係なく、その人にそれ以上の苦痛を与えることなく、いまよりもよい成果を出したり、よりよい人間になったりするのを助けてあげたいという気持ちにもさせてくれるものだ

私は「人はみんな、だれかの子」と思うようにしています。そうすると、どんな人に対しても、自分も大事にしなくては、と思えるようになります。(子ども扱いして見下す、というわけではありません。。)人を許し、過去の自分のことも許し受け入れることで、いいところも悪いところも守り育む気持ちをもつことができます。

さいごに『誇り』

人はだれしも他人から評価されることで、自分の価値を確かなものだと感じ、さらに自分を高めていこうと思えます(自己高揚欲求というらしい)。

母親との絆が強い子どもは(誇りと)探究心が強い、という話もあったが、必ずしも誇りをもつきっかけは家族の愛情だけではありません。

褒めてくれた相手に対する親近感やその人物の重要性の度合い次第で、一部の称賛は、意識の非常に深い層にまで到達する可能性がある。そうなれば、最終的には自己意識と融合していく

誇りが傲慢に繋がらないよう「自分も助けられている」という謙虚さをもつことがポイント。「褒めること」はモノをあげる外発的動機とは異なり、内発的動機づけを強化するらしいので、安心して褒めまくりましょう。(ただし、能力を褒めるのではなく、努力を褒めるようにすること!とのこと)

「個人の成功」から「社会の成功」へ

感謝・思いやり・誇りの3つの社会的感情に満ち溢れた個人が出会うと、そこには「社会的な絆」が生まれます。

スライド7

人と「社会的感情」でつながり合うことで、そこには帰属意識や一体感が芽生えてくる。すると「もうダメだ。。」となったときも「あいつにはいつも助けられてばかりだ。恩返ししなければ」という気持ちを思い出すことで、やる気を持ち直せることにも繋がる(かもしれない)

個人の意思の力にはなかった『復元力』が、そこにはあります。

「ありがとう」「だいじょうぶ?」「すごい!」といった言葉のやりとりは、それをきいた相手や周囲の人達にも伝搬し、次の感謝や思いやりへとつながっていきます。

いまに集中にすることも必要ですが、未来の可能性を信じる人や組織の一助になれるよう、3つの感情をこれでもかと伝えていこうと思います。

ここまで読んでくださり有難うございました!感謝の気持ち、といってはなんですが、ご参考までにスライドをPPTにまとめたので、よかったらダウンロードして、ご活用ください。コメントもお待ちしてます。


この記事が参加している募集