読書感想4冊目:姫神さまに願いを~浪の下の都~/藤原眞莉(集英社コバルト文庫)
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。
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シリーズ3冊目。
冒頭から一言。
タイトル読めます???
私は読めませんでした。
でも、このタイトルがめちゃくちゃ重要、というか今回のお話の大きなメインテーマであり舞台であったりします。
というか、わかる人には当然わかる話なのかもしれませんが。
浪の下、読み方は「なみのした」。その意味といえば、海の底。
そしてこの言葉が使われているのは、かの有名な平家物語。
使われる場面は壇ノ浦の合戦時、舟の上で平時子(平清盛の妻、二位尼とも呼ばれる)が孫の安徳天皇に対してかける言葉です。
そう、「なみのしたのみやこ」とは、海の底にある、国のこと。
もうおわかりですね!
今回、テンさんとカイさんがやってきたのは壇ノ浦!!!作中においては赤間関(現在の山口県下関市)。
前巻では天分法華の乱に巻き込まれ、その後西へ西へと旅してきた彼らは、今度は平家最後の地にやってきて、秋の味覚なぞを楽しもうとしているところ。
ここであれ……?と違和感を覚えたら、大したものです。
カイさん、源氏の人です。
そんな人が平家にまつわる地に来たら……な騒動が起こるというわけです。
大きく言えばそんな感じのこの一巻。
登場するのは1巻以来の顔のいい「おにーさんPART2」こと菊武。
透明感バリバリの、穏やかかつ包容力満点な雰囲気のお兄さん!
存在感(生命力)が薄すぎる、という個性が強すぎてむしろ気にされちゃうあたりが面白いなぁと読み進めておりました。
出会いは海、テンとカイに、寺(菊武さんは真言宗阿弥陀寺の官僧)へ招く菊武さん。
招かれた寺では、なんと雨乞いを頼まれ、気軽に請け負ってしまうテンさん。
相変わらずカイさんは振り回されてるなぁと見事な立ち回りにため息しかでません。
そして。
今回も新キャラが登場。
テンこと摩多羅神様の傍らにあるとされる、二童子のマナとアラヤ。そっくり双子のような姿をした男女の童もまた、カイさんを翻弄します。
この時の挿絵のテン&マナ&アラヤ、きれいやらかわいいやらでおおっ、となります。衣装もカッコいい!(雨乞い用のため)
テンと二童子による雨乞いはばっちり効果をもたらし、寺や集まってきた住民に感謝されるのですが、カイは気になる気配を感じ取ります。
恨みがましい、どろどろとした怨念。それは、平家の亡霊たちからカイに向けて発せられているもの。
さらに、なにやら菊武な不穏な様子。
もちろんテンは気づいているけれどこの時点では対処してこないし、カイはカイで菊武に疑いを持てない、持ちたくないと考えてしまう。
壇ノ浦の地に訪れた源氏の末裔に、怨念を向ける平家の亡霊。
そして、壇ノ浦といえば海の底には「三種の神器のひとつ、草薙の剣」が沈んでいるわけで。
今回は平家の因縁に巻き込まれた二人。
どうやって解決するのか、菊武は「何者」なのか。
平家と源氏、という歴史でもがっつり取り上げられる部分が絡んでいるため、割と察しやすい話の流れでありながら、いろんな要素ととともに進んでいくのが楽しい今回。
剣と鞘、男と女。陸と海。
いろんな対比で物語は進みます。
最後では、二人にまつわる重大な事実も発覚し、おぉっ!となりつつ、二人の仲も進展します(二巻で読者にはわかっていることですが、本人の反応で改めて楽しめます)
最初からいちゃいちゃムードが盛り込まれておりましたが、不器用かつ鈍感かつ朴念仁なカイさんの、男っぷりも見ものです。
あとテンさん、普段はめちゃくちゃ余裕たっぷりなのに、ふとしたときにめちゃくちゃかわいらしくなるのでたまらんですね!
カイさんもだけどね!
今回の感想はこのくらいで。また読了後にぼちぼちと書き連ねていきます。
お読みいただきありがとうございました!
*たいへん古いシリーズのため、紙媒体書籍の入手は困難。現在電子書籍は販売中です(2023.7月末現在)