201907_季刊地域2017年夏号_赤トンボとホタルの増やし方_

お盆もきたので、、「季刊 地域」2017年夏号「赤トンボとホタルの増やし方」を読んだ。

 特集名は、「赤トンボとホタルの増やし方」

 いやいや、虫増やしてどうするの?と思いますよね。「老後2000万の蓄え方!」や「増税前にやるべきこと5つ」みたいな特集組んでる雑誌の方が気になりそうです。自分も、やはりお金や将来のことみたいな漠然とした不安や恐怖を煽ってくる見出しの方が目に付きます。訴求力があるから。虫の増やし方に、訴求力はありません。お金がないと死にますが、虫はどちらかというと少ないほうがありがたいですから。

 ただ、なぜかこの特集は読んでみたくなりました。以下、理由3つ。

① 田舎育ちのノスタルジー:幼い日の思い出を想起させられた

② 農業の多面的機能の主張の一環?と思った

③ 季刊地域は、ものすごく昔に読んで面白かった印象が残ってた

 つまり、赤トンボが懐かしく、そういうノスタルジックな生物の生息地であるのも農業の多面的機能:生態系サービスの保護育成、の一環と言えるのかという発見、そんでだいぶ前に読んだことあったし、また読んでみようーていうぼんやりした動機がごちゃごちゃミックスされて読むに至った次第です。

 以下、実際に読んでみた感想です。これは1つ。

 「...それは増やしてない、元に戻しただけだろ...」

 どういうことかというと、本書の構成は大まかに次のパターンです。

起:ほ場(水田とか畑とか)の周りの道や用水路をコンクリートで整備した!農薬使って省力的な営農始めた!

承:ホタルや赤トンボがいなくなった...

転:やっぱコンクリートじゃなくて、土に戻そう。昔のやり方で営農しよう。

結:虫が戻ってきた!これを活かしてブランド化したりしよう。

 いや、これ、元に戻しただけやん。別に虫増えてない。てか、ほ場整備も農薬散布も虫がいなくなるのやる前に想定できるやん。それをやってから虫いなくなったんでやっぱ元に戻します、て行き当たりばったりすぎでは。そんで昔のやり方で営農した結果、虫増えました、てかなり「当たり前」のことでは。

 ほ場整備も農薬散布も、当時は目的や狙いがあって始めたはず。それを撤回してまでホタルや赤トンボを増やす意味はなにか?それはほ場整備や農薬散布の目的に勝る意義があるのか?

 そういった問が見られませんでした。ホタルや赤トンボを増やすのはいいことだ、という前提条件の下でその手法を羅列しているだけで、ちょっと自分には物足りなく感じました。

 もちろん、多面的機能の1つとして農地がホタルや赤トンボの生態系サービスの基盤であることは理解していますが、前提として「増やすのはいいことだ」としてしまうのは少し強引な気がします。ちょっと前まで土木チックなほ場整備を推進してきたのに、なぜ今ここで、生態系サービスの基盤である自然豊かな農地を守る必要があるのか、そこから考える必要があるのではないでしょうか。

 両方、国の施策方針です。ほ場整備や農薬利用も、近年になってからの多面的機能の評価も。個々の地域は、そこにただ乗っかって行き当たりばったりな営農をエスコートするのではなく、地域にとって何が是で何が非なのか明確にした上で戦略的な営農を設計していく必要があると考えました。

 蛇足です。赤トンボは先祖の生まれ変わりだと言われて育ちました。お盆頃に大量に飛び交うことから、精霊トンボ(しょうりょうとんぼ)ともいうそうです。自分は今年の盆は帰省できませんでしたが、こういう時節をきっかけに亡くなった方に思いを馳せるのもいいですね。お気づきでしょうが記事の写真は赤トンボとは無関係です。多分シオカラトンボ。

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