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【黄皓さん】人と健康をつなげたい。時間・場所・金銭の壁を乗り越えジム市場を革新【前編】

月額制パーソナルジム「KARADA BESTA(カラダビスタ)」やスマートミラー型オンラインフィットネス「MIRROR FIT.」を手がける黄皓さんは、時間・場所・金銭といったジム業界の壁を乗り越えて「人と健康の間の距離」を縮める革新に取り組んでいます。前編では、各事業における挑戦や三菱商事時代に培ったご経験、学生時代の自己変革、筋トレへの取り組みを伺いました。


三菱商事時代に掴んだグローバルキャリアと、新たな選択

― 黄皓さんのお名前は中国語で黄(ファン)・皓(ハオ)さんとお読みするんですね。

「皓」は月という意味で、私は中国の春分の日、1年で最も月が白く光ると言われる日に生まれたので両親が付けてくれたんです。

― すてきな意味が込められているんですね。そんな黄皓さんのご経歴をお聞かせください。

2009年に三菱商事に新卒で入社しました。就活当時は特段やりたいことがなく、社会のグローバル化が進む中で活躍できる、また父が営む貿易物流会社とも関わりが持てる環境を求めていました。商社はスケールの大きい仕事を手がけられるイメージが強かったため重厚長大な鉄鋼やエネルギーといった分かりやすい分野を志望し、結果的にステンレス素材を扱う部署に配属されました。はじめは問屋さん向けの裏方業務が中心でしたが、入社4年目には成果を認められるようになってAppleを担当することになりました。iPhoneやリンゴマークの素材に携わる中で、仕事が具体的な形になっていく実感を得ました。

その後、メキシコに駐在して自動車向けの重要保安部品であるネジやファスナーを担当しました。正直に言うと、興味が持てませんでしたね。「日本車のシートに使われているネジを担当しているんだ」と合コンで言っても盛り上がらないじゃないですか(笑)。実際は、メキシコにいるのに超日本人らしい取引をしていたんです。日本語でルート営業のコミュニケーションが続く毎日で「これって自分が求めていたグローバルな仕事なのか」と。父が体調を崩したこともあって「一度きりの人生をもっと有意義に過ごしたい」と決意し、2016年に退職しました。

ミラーフィット株式会社代表取締役、4代目バチェラーの黄皓さん

低価格競争が激化するジム市場。ハードルを突破する新戦略

― 三菱商事を退職後、どのようなキャリアを歩んだのでしょうか。

父の会社を手伝い始めた頃は商社での経験を活かして売上を伸ばすことができました。ただ、社員の皆さんが優秀だったため私自身が革新的なことをしているとは思えず、親の七光りに甘んじてしまうと危機感を抱きました。そんな頃、ボディメイクをしたくなってRIZAPでカウンセリングを受けたことが転機になったんです。「数ヶ月後にかっこいい姿になるなら100万円を払おうかな」と思いましたが「やっぱり高い。自分でジムを運営した方が安く済みそうだな」と、2016年9月にパーソナルジム「KARADA BESTA」を立ち上げました。

当時、業界最大手のRIZAPに倣ってあらゆるパーソナルジムが低価格競争を繰り広げていましたが「私みたいな資本のない会社は埋もれてしまう」と。そもそも、私は人と健康の間に存在する金銭的なハードルを取り除きたかった。そこで、2019年から月額3万円で全てのサービスを受けられるサブスクリプション型を導入し、一気に20店舗まで拡大しました。このモデルは日本の固定月収文化にマッチし、ユーザーの突発的な支出に対する恐れを軽減する仕組みになっています。

ただ、ジムの運営には「人」と「場所」という課題が常に存在していました。2020年に新型コロナウイルスの影響で外出が制限され、世の中の皆さんがジムに通えなくなったことを機にフィットネスのオンライン化を模索しました。その頃に出会ったのがビジネススクールでスマートミラーを研究していた現在の執行役員、舛永です。彼との議論を通じて「鏡」を使ったオンラインフィットネスの可能性に確信を持ちました。出会いからわずか4ヶ月で法人を設立し、新しいオンラインフィットネス「MIRROR FIT.」を始動しました。

人と健康の距離を近づけたい。運動未参加層を取り込む仕掛け

― KARADA BESTA、MIRROR FIT. それぞれのサービスとユーザーについて教えてください。

KARADA BESTAは都心の一等地を中心に展開する通い放題のパーソナルジムで、30〜40代前半のビジネスパーソンや経営者、フリーランスを主なターゲットとしています。ユーザーの平均年齢は31歳で、仕事やプライベートを充実させながら健康への投資も重視しています。この年代は婚活や恋愛が活発な時期でもあり、見た目に対する関心が高いのも特徴ですね。しかし、都心に住む30代の平均年収が500〜600万円、手取り35〜40万円と考慮すると、従来のパーソナルジムのように3ヶ月で40〜50万円はハードルが高い。その点、月額3万円というサブスクリプション型のKARADA BESTAはコスパがよく、ユーザーの男女比は男性4割、女性6割です。

通い放題のパーソナルトレーニングジム「KARADA BESTA」恵比寿店

MIRROR FIT. はスマートミラー型デバイスを使って自宅でフィットネスを体験できるサービスです。タッチパネル式の鏡に多彩なトレーニングコンテンツが映し出され、ユーザーはご自分の姿を確認しながら効果的にエクササイズを行えます。地方にお住まいでジムまで車で移動しなければならない方や、時間の制約が大きい主婦の方などを中心にご利用いただいています。平均年齢は40歳前後で、小さなお子さんを持つ方が多いです。ユーザーの男女比は男性3割、女性7割。男性ユーザーにはリモートワークをしながら効率的に運動したいと考えているビジネスパーソンもいらっしゃいますね。

「MIRROR FIT. 」の縦型モニターなら、正しいフォームを確認しながらトレーニングができる

― 2024年9月にオープンした「HITORI WELLNESS」は、フィットネスと美容を融合した女性専用サロンですよね。
 
HITORI WELLNESSは地方に住む、なかなかご自分の時間が取れない主婦の方が通いやすいジムです。個室にはMIRROR FIT. が設置されていて500本以上のフィットネスコンテンツを受け放題。ヨガやピラティス、ストレッチ、ボクササイズなど、ユーザーの気分や目的に合わせたトレーニングができます。 さらに、仕事や家事、育児で忙しい女性の皆さんが心身の健康と美を追求できるサードプレイスとして最新の美容機器や高品質な基礎化粧品が使い放題なんです。

「HITORI WELLNESS」では人気の美顔器も使い放題。頑張らずに続けられる女性専用サロン

― 現在(2025年1月)、MIRROR FIT. では「1億円超えのプレゼントキャンペーン」としてスマートミラーを無料で提供していらっしゃいます。

私たちは人と健康の距離を縮めるための挑戦を続けています。今回の企画もこの理念にもとづいており、スマートミラーは原価が高くてPRコストを含めると約2億円の先行投資です。ユーザーに24ヶ月間ご利用いただいてやっと利益が見込めますが、それ以上に日本の運動参加率がたった3%しかない現状を変えたいんですよね。現状の市場では、どんなサービスがローンチしても限られた3%の運動参加者の奪い合いにとどまってしまう。残り97%の方が「スマートミラーがタダならもらおうかな。鏡としても使えるし」「美容サービスもあるならちょっと行ってみたい」と気軽に運動を始められるきっかけになるように取り組んでいます。 

「甘えん坊からイケメンへ」。変貌を遂げた高校時代

― 黄皓さんはお父様のお仕事で幼少期から中国と日本を行き来し、中学2年生の頃から日本の学校に通い始めたんですよね。どのようなお子さんでしたか?

現在とは真逆の甘えん坊で「別にこれで良くない?」という性格でした。学校のテストでは平気で50点や60点を取り、親に「なぜこんな悪い点数を取るの?」と叱られても「僕よりも点数が低い人はいっぱいいるよ」と返していましたね。今なら「自分よりも成功している人は沢山いる」「私たちの時価総額はまだこの程度だ」と上を見ていますが、当時は下と比べていました。

「筋力トレーニングを始めたのは社会人になってから」と語る黄皓さん

転換期があったのは、高校時代。あまり評判の良くない私立中学校から推薦で進学校に行き、レベルの違いに愕然としたんです。みんな頭がいいし、育ちもいい。中学では金髪でカラーTシャツを着た怖い人ばかりだったのに、高校では女子のスカートの丈は膝より下だったし、ブレザーもネクタイもきれいに着こなす人ばかり。人種が変わったと気づいた瞬間「やばい、今までどおり過ごしていたら馬鹿にされる」と。先生からも「君がこんな進学校に入れたのは奇跡だから真面目に勉強しなさい」と言われ、一念発起して勉強すると成績が良くなりました。周りから「すげえ」と言われる嬉しさ、「落ちこぼれたらどうしよう」という怖さを思春期のど真ん中で味わいました。

― いつからご自分のビジュアルに気を使い始めたのでしょうか。

やっぱり高校からですね。中学生の頃はいたって普通でしたが、高校に入って背が伸びたせいか「あの人イケメンじゃない?」とイケメンキャラになったんです。私は自己肯定感を客観的評価で醸成してきたタイプなので自らイケメンだと思えず、周りから「かっこいいね」と言われるようになってから「明日もイケメンって言われるように頑張ろう」と意識が変わりました。

黄皓さんの筋トレ① 体への投資を考えたのは、10kg増えたから

― 筋力トレーニングはいつから始めましたか?

社会人になってからです。学生時代はサッカー部に所属していて運動自体は好きだったものの筋トレはしたことがありませんでした。社会人になってもイケメンキャラでしたが「体に投資しなきゃ」とあせったのはメキシコ駐在の頃で、ストレスで10kg近く太ったから。さらに、父が倒れたことで「お金がいくらあっても健康は買えない」と実感したから。それ以来、8年間筋トレをやめたことはありません。

― 筋トレの頻度やトレーニングメニューを教えてください。

1回当たりMAX1時間、年間平均で週2回になるようにしています。減量期や体を作りたい時期は週3回。基本的にビッグ3の胸、背中、脚を順番に鍛えていますが、筋肉痛で歩けなくなるのは避けたいので脚の頻度は低めです。いつも打ち合わせの合間にKARADA BESTAでサッとやっています。ランニングなどの有酸素運動はカタボリック(筋肉分解)が起きるのであまりやっていませんが、よく散歩しています。

―― 後編では、黄皓さんの筋トレについてさらに詳しくお送りいたします。お楽しみに!

(企画・取材・執筆:佐野 桃木 写真提供:ミラーフィット)

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