生き物が好きだ。でもそれはたくさんの自己矛盾を抱えてる。
自分だけは好きなことをしたいし、誰かにごちゃごちゃいわれたくない、そんな気持ちがいつも心の奥底にあります。普段は蓋をしていい子ぶっていますが、ふとしたときに漏れ出ます。このまま一人で蓋を抑え続けられる自信はありません、だから意識が高まったタイミングで今の考えをnoteに記して重し石に変えたいと思います。
そしてこれを読んだ方が、生き物や自然環境に向き合うとき、少しだけでいいので同じように「あれ?」と思っていただければ、すごく私が救われます。
なお、仕事やボランティア活動、研究などで生き物に関する課題に真向から取り組まれている方々に最大の敬意を。この記事は、素人が、素人の立場に甘んじた独善的なものにすぎません。許しがたい考え方もあるかもしれません。それでもこの葛藤を文字にせずにはいられませんでした。
生き物好きの無邪気な欲求
あくまで私個人の場合ではありますが、こんな欲求を抱えています。
生き物に関わる研究や仕事をしている人は、これらが引き起こしそうな問題にすぐピンとくると思います。
素朴な欲求に従った行動のリスクについては、自分のなかでも線引きできずモヤモヤしているものが多くあります。一方で、なんとか自分の中で決意できたこともいくつかあります。
割り切れないことを列挙してみたら、自分のご都合主義が露になった
①野生の生き物を撮影するときに、いい感じの場所に移動させたり、雰囲気を作ることの是非
もともと今回のnoteをまとめるきっかけは、このtweet(一連)を拝見したことでした。ドキッとしました。
過去には、例えばチューリップの花にカヤネズミをいれた写真がバズったのですが、野生生物に対する過剰な演出が問題視されました。とてもかわいいのです。でも、野生ではありえないイメージが広がると、ペットとして飼いたいと思ってしまったり、その生き物への正しい理解が広がりません。
ここら辺までは分かっているのですが、ライトを当てたり、霧吹きで水滴をつけたり、地面から幹へ移動させることも演出です。私はどこまでなら許容できる...?
②動物園や水族館が大好きだし、動物ショーをみても楽しく感じることもあるけど、やっぱり狭い展示施設や娯楽消費は好きではないという思いもある
これは本当に答えが出ていません。動物園には、エンターテイメントだけでなく、環境教育や種の保全、研究等たくさんの役割があります。何度だって行きたい。
けれど、狭い展示施設でぐるぐる同じ場所を歩くトラを見ていると心がチクチクします(もちろん多くの動物園はエンリッチメントに取り組んでいます)。イルカショーにも高揚するのですが、野生動物を娯楽として消費することへ罪悪感もあります。なお、動物園ではないですが、テレビ番組でチンパンジーに服を着せて笑っているシーンは受け入れられないです。
③餌付けはお互いにリスクが大きい、でもカモメにはエサをあげたい
クマやキツネを餌付けした結果、人間に近づくようになってしまい、クマは殺処分になったり、キツネは交通事故が増加しました。野生生物の行動を変えてしまうことは罪作りです。
では、カモメや鳩にエサをあげるのは?庭にエサ台を置いてメジロがくるのは?
いいか悪いかでいうと、全部ダメ、になる..でも白状すると船に乗ってカモメにエサをやることが好きです...松島では大量のカモメのフンで松が枯れてしまい、今は餌付けをやめています。でも、禁止されてない地域でカモメがいたらエサをあげたくなる。どうしよう...エリア全体で許容量を設定して限られた量しか与えないとか、そんな仕組みで許してもらえないですか...苦しい。
④そもそも仕事でも研究でもなく、ただの趣味で生き物を撮影したり入山して、生き物や自然環境に悪影響を与えている
とはいえ、生き物を見に行きたい、山へ行きたい、という気持ちは止められない。そして生類憐みの令のような考えに従うこともできない。毒虫にたかられたら殺すし、登山道で草や苔を踏みつけることも仕方ない。
せめてもの罪滅ぼしに、自分の行動が相手に負荷をかけていることだけは忘れないようにしたいと思っています。登山道を外れない、環境を改変しない・現状復帰、捕まえない。
葛藤したけどなんとか決意できたことが少しだけある
①野生動物(エキゾチックアニマル)の飼養はしない
カワウソは一時バズったけど、国内でペットになっている個体はほぼすべて東南アジアで密漁された個体かその子供。他の動物もほぼ同じ。まじであかん。Youtubeみたらかわいい、欲しいって思ってしまう。法改正が必要。「かわいい動物」を取り巻く闇が大きすぎる。感情が抑えられず関西弁になってしまう。フェネック、スナネコとかも同様。
②外来種はつらいけれど駆除も必要
アライグマとか綺麗なお花とか。駆除なんてかわいそう、と思うけど、人間が勝手に連れ込んだので、人間が解決しなければいけない問題。とくに殺処分関係では、対応している人への誹謗がひどい。関与する人達はみな生き物が好きで仕事に就いているので、普通の人よりむしろ愛が深く真面目に向き合っているのに...
③ノラ猫やノネコは在来の小動物をかなり殺す。生態系のためにもネコ自身のためにもネコは絶対に室内飼い
物心ついたころから生き物が好きで、その中でもとくに昔からネコ科全般を愛し続けています。動物園の猛獣舎に通い、「猫の島」にも喜んで訪問していました。ところが大学で生態学に触れたことをきっかけに、野外のネコたちの猛威をしってしまいました。とくに離島は影響が大きい。
うっすらと目を背け続けていたのですが、さすがにこのままはよくない、と思って数年前に奄美大島のノネコ問題に関するシンポジウムを聴講、そこから数か月悩みました。3年ほど前から、外ネコの写真をSNSにアップすることを辞めました。外にいるネコちゃんを自由や幸せのイメージで受け取ってほしくないからです。
生き物や自然から得た喜びは何で返すべきか
生き物好きを公言する限りは、自己矛盾から目をそらさず、自分のエゴに向き合うことがせめてもの誠実さだと思っています。山に入ることを辞められないなら、かける負荷は別の形できっちりお返したいです。とはいえ今は細々とした寄付と、山でみかけた範囲のゴミを回収するぐらいなので、ほんとに偉そうなことは言えないですね。
だから、もしもこの記事を読んでくれた人が、どこかに1ミリでも興味や疑問を感じてくれたら、それだけで私は少しだけ自然への借金を返せた気がして救われるのです。
そして誤りやお叱り、ご意見をもしいただけるのであれば、大事なテーマについて勉強、議論できる貴重な機会になるので嬉しいです。
本記事は、Twitterで連投した内容がもとになっています。