Gluten-free diets: vital or vogue ?
こんばんは
今日は、モデルのミランダ・カーや歌手のマイリー・サイラスをはじめ、健康志向の高いセレブが実践している「グルテンフリーダイエット」についてまとめてみました。
日本ではノバク・ジョコビッチの著書「ジョコビッチの生まれ変わる食事」の
大ヒットで「グルテンフリーダイエット」の認知度が広がりましたね。
グルテンとは、
麦(小麦、大麦、ライ麦)に含まれるタンパク質です。これを原材料として作られるパンやお菓子、うどん・ラーメン・そうめん、多くの加工食品、カレーのルー、醤油やソースなどの調味料にもグルテンが含まれています。
グルテンを避けるべき人は下記の病気の方だけです。
①セリアック病
②グルテン不耐症(過敏症)
③麦アレルギー
④疱疹状皮膚炎 *全例がセリアック病を合併
ちなみにジョコビッチの病態は②のグルテン不耐症(過敏症)です。
これらの有病率は下記の通りです。
①セリアック病:欧米 0.7%、日本 0.05%
②グルテン不耐症(過敏症):欧米 2-6%、日本 1%未満(推測)
③麦アレルギー:日本 0.2%
④疱疹状皮膚炎:0.05%以下(推測)
余談ですが、僕は30年、胃腸科の医師をしていますが、セリアック病をみた事がありません。それだけ珍しい病気です。珍しいけれど、医師国家試験の設問になりやすい病気です。
②のグルテン不耐症(過敏症)は、症状が不定なので診断が難しく、実際どれくらいの患者さんがいるのか、正確には不明です。一方、グルテン不耐症(過敏症)であると思い込んでいる人もけっこういるんですよ。
下記のスライドは、グルテン過敏症が疑われた方を検証し、グルテン(赤線)に反応して症状が出た方と、偽薬(コントロール:青線)でも症状がでた方がいる事を証明したものです。これをノセボ効果(思い込みで望ましくない症状が出てしまう現象)と言います。
*論文1 Am. J. Gastroenterol. 2011 106(3):508-14 - quiz – 515.
上述したように、グルテンと関係がある病気の有病率は、とても少ない事から、
日本人の99%の方はグルテンフリーダイエットにする必要はなく、欧米人も94%の方はグルテンフリーダイエットにする必要はありません。
グルテンフリー食材は、精製度が高く、グルテンフリーダイエットを実践している人は、食物繊維、鉄、カルシウムなどが不足している事が報告されています。
*論文2 Am Diet Assoc 2008 Apr;108(4):661-72.
当然、食物繊維や栄養素が減ると、下記のように腸内環境や生活習慣病のリスクが高くなります。
グルテンフリーダイエットで、腸内の環境を整える善玉菌の割合が減少し、腸管免疫が低下することが報告されています。
*論文3 Br J Nutr. 2009;102(8):1154-60
セリアック病でない人で、グルテンフリーダイエットをしていると、心臓病のリスクが高いことが報告されています。
*論文4 BMJ 2017 May 2;357: j1892.
また、体重減少ではなく、肥満との関連も指摘されています。
*論文5 J Acad Nutr Diet 2012 Sep;112(9):1330-3.
上記のことに加えて、グルテンには免疫機能を増強させる効果があるので、
グルテンと関係した病気がない人が、避ける理由はありません。
*論文6 Biosci Biotechnol Biochem 2005 Dec;69(12):2445-9.
以上のことから、高価なグルテンフリー食材=健康食材ではないことを理解する必要があります。
米国では、「グルテンフリー食材」の需要が高まり、今や76億ドル規模の産業となっています。*つまりメーカーの企業戦略です。
グルテンフリー食材は、商品にもよりますが、多くが精製された炭水化物の加工品です。(グルテンフリーパスタ、グルテンフリークッキーetc)
一方、玄米、キヌア、オーツ麦(燕麦)は、グルテンを含まない全粒穀物で、セリアック病など、グルテンを避けなければならない病気の方にとっても、そうでない方にとっても健康的な食材です。
もう一つ強調したいのが、
グルテンが成分として含まれている全粒粉は、食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富で、健康的な食材であると言う事です。身体に良くないのは、グルテンではなく、全粒粉を精製した小麦粉です・・・この理解が重要です!
*論文7 Circulation. 2016; 133:2370-80
*論文8 Nutr Metab Cardiovasc Dis 2008 May;18(4):283-90
*論文9 Arch Intern Med 2010 Jun 14;170(11):961-9.
簡単に言うと、
『小麦粉X、全粒粉○』です。
この記事のタイトル:Gluten-free diets: vital or vogue ?というは、世界の医学系トップジャーナルの『LANCET』に掲載された論説のタイトルです。
この論説の要約は、セリアック病の診断は難しく、正しく診断されていない方がいる一方で、全く問題がない1600万人もの米国人が、グルテンフリーダイエットを選択していることは、公衆衛生の茶番であると痛烈に批判しています。
まとめ
① 日本人の99%の人はグルテンを避ける必要はない。
② グルテンフリー食材=健康食材ではない。
③ 小麦粉は良くないが、全粒粉は健康食材である。
④ 玄米、キヌア、オーツ麦(燕麦)はグルテンを含まない全粒穀物で健康食材である。
最後に、書籍「ジョコビッチの生まれ変わる食事」に、とても興味深いことが書かれていたので紹介します。
ジョコビッチが、グルテン不耐症であると最初に疑ったのは、ジョコビッチの故郷セルビアの栄養学者、セトジェヴィッチ博士です。博士が、最初に調べた方法が、キネシオロジーに基づく筋力テストでした。え、筋力テスト?って何?って思いますよね。
どんな方法かと言うと
左腕は下げて、右腕をまっすぐ水平にした伸ばした状態にします。他者が右腕を下方に押す事に抵抗する動作をみて、肩(三角筋)の筋力を測定するという単純な方法です。
こんな感じのテストです ↓
ジョコビッチが、左手にパンを持って、同じ検査をしたところ、全く力が入らなかったそうです。最終的にELISA法による抗体検査でグルテン過敏症の確定診断が得られたようですが、ジョコビッチも最初は、このテストについて、当然のことながら、何これ?と思ったそうです。
ジョコビッチの凄いところは、何これ?と思いながらも、博士の言うことに耳を傾けたことです。
このオープンマインドがなければ、世界一のテニスプレイヤーになれなかったでしょう!
キネシオロジー、神秘的な科学です。