最高のクローザー・マクガフ

 一概に「抑えの投手」と言えど、僕は「ストッパー」と「クローザー」のふたつに分かれると思っている。藤川球児のようにド根性で抑え込むのが前者、まるで作業のように淡々と試合を締めくくるのが後者であるが、マクガフは間違いなく後者だろう。今回は、そんなヤクルト優良外国人のMLB復帰の祝福、そして近年のMLBUターンラッシュについて書いていくこととする。

4年間で僅か8敗

 マクガフの成績でまず特筆すべきは通算の負け数なのではないか。抑えからその前を投げるセットアッパー的な立ち位置となった2年目の令和2年は打ち込まれたが、それ以外のシーズンは素晴らしい成績を収めている。まさに、負けない抑えだ。

 彼の最大の武器は動く球だ。カットボールとスライダーの中間球のような変化球(昔で言う高速スライダーか)や、落差、キレともに1級品のフォークボールはバックスクリーンからの中継映像でも凄みを感じることができる。この球を安定してストライクゾーンに投げられるのだから打てるわけが無いのだ。日本シリーズでは犠打の処理に苦しんだが、それは「出塁できたら」の話だ。彼は今季、平均で0.97人しか走者を出していなかったので揺さぶる以前の話である。

NPBからMLBへ

 NPBで活躍した外国人がMLBへと「出戻り」するケースが近年増えている。個人的に、この流れが始まったと感じるのは平成30年に巨人のマイコラスがMLBへと渡ったことであると考えている。そこから立て続けに令和元年に中日のロドリゲス、阪神のP.ジョンソンが、そのあとを追うように同じく阪神のスアレス、ソフトバンクのマルティネスがMLBへと返り咲いた。そして今回のマクガフとなるわけだ。

 僕がマクガフはMLBで大いに活躍するのではないかと思っている。人種が違うとは言えど、NPB出身投手成功のバロメータとなっているのが制球と落ちる球の2点だ。マクガフは見事にこの2点を押さえているので、MLBにあった選手であるということは自信を持って言える。

ヤクルトにとっては大きな痛手

 吉田正尚の意思を尊重して円満にMLBへ送り出したオリックスは素直に素晴らしい球団だなと感じたが、果たしてヤクルトはそうなるであろうか。マクガフの夢を後押ししたい気持ちは分かる。ただ、抑えが移籍したのだから、それなりの選手を新外国人やトレードで補強すべきだ。

 ヤクルトファンの間では早くも来季の抑えを誰にするかという議論が活発に行われていることと思う。その筆頭は今季、マクガフの前を投げた清水昇という中堅選手と予想するが、同じような経緯で抑えに抜擢された中日の福谷浩司が別人のように制球を乱すことが多々あったので、そういった安易な考えで抑えを決めることはかなりギャンブルだ。もう既にFAの選手を補強することは非現実的なので、マクガフと同等またはそれ以上の能力を持った選手を獲得するべきだろう。

最後に

 マクガフの印象としてとてもよく覚えているのが、ヤクルトの持ちゲームでの出囃子がイエロー・マジック・オーケストラのテクノポリスだったことだ。よく考えたら、NPBはMLBにとってのテクノポリス、つまり高度技術集積都市なのかもしれない。東京テクノポリスで培った感性をぜひ、夢の舞台でいかんなく発揮して欲しいものだ。

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