4/4『花粉症を知る』~未知子の未探索日記~
これまで、花粉症というものには縁がなかった。
田舎だからといって、地元に花粉が存在しないわけではなかったが、箱庭のような場所で生活していた私には、無関係のものだった。
咲き遅れた桜並木を求め、行く当てもなく歩く散歩と散策がすっかり日課になり始めているこの頃だが、
新年度もまだ四日目、都会での新生活の希望を見事に打ち砕いたのは、大量に流れ出る鼻水だ。
これ絶対、花粉だ!
と私はすぐにピンと来た。
都会の花粉は、排気ガスなどと入り混じってアレルギーを起こしやすいと聞くし、なにより生活環境の変化で免疫力が落ちているのだ。
祖母の料理はまずいわけではないけれど、これまでの人生で摂取してきた栄養分とまったく異なることは確かである。畳に直引きしている布団も、よくよく考えると埃っぽくてクシャミが出そうだ。
日記を書こうにも、まだまっさらなノートに容赦なく、
ぽたり、ぽたりと、無色透明のさらさらした鼻水が落ちて来る。
鼻の奥から、耳と、頭頂部へつながる神経の道が、
すべて水が詰まっているみたいに塞がっているのだ。
大通りで一時停止違反を取り締まっているパトカーのサイレンも、自分がノートに書いた文字も、ぼんやりと滲む。
下を向いて、書き物なんて、できたもんじゃない。
やめよやめよ。
これが、噂に聞いていた、花粉症というものか。
末恐ろしい。