マガジンのカバー画像

イズムィコさん日記

40
運営しているクリエイター

記事一覧

怪談『無人自衛隊』

怪談『無人自衛隊』

人民解放軍の東京駐在武官が蒲田の商店街を歩いていると、見慣れぬ店に行き当たった。まるで時代劇で見るような古い商家で、紺染の暖簾には「無人自衛隊」と染め抜かれている。
店の中は暗い。土間の向こうには小上がりがあり、年季の入った箪笥や何かの棚が並んでいるらしいことが、一つだけ灯った行燈によってかろうじてわかった。

東京での土産話になるかもしれない。

興味をそそられた武官は、暖簾を押し上げて中の様子

もっとみる
メメント盛り

メメント盛り

米をよそってください。
どんぶりか、ちょっと深さのあるお皿です。量は好きにして下さい。腹減ってる人は大盛りで。小腹がすいた程度の人はごく軽めで。
米も、こだわりにこだわったササニシキを土鍋で炊いたこだわりの銀シャリとかでなくていいです。サトウのご飯でもOK。ちなみに僕が使用したのは炊飯器の中に残っていた一昨日の米です。
その上に、牛すじ煮込みを投下します。これは横浜市中区のセブンイレブンで購入して

もっとみる

鬱ライス

妻氏が海外出張中なの1週間弱、娘氏と短期父子家庭生活していたんですが、「夕飯何食いたい?」の問いに対して「オムライス」という答えがあったんですよね。
なるほどオムライス。
さてもオムライス。
そういえば昔はよく作ってたオムライス。
いや安いんですよオムライスは。
米、卵、玉ねぎ、細切れ鶏肉というあたりでそれなりに美味しく腹も膨れる。まだ娘氏が小さくて僕には金がなかった頃、よく作っていた。
あと妻氏

もっとみる
悪いが俺は休暇だ

悪いが俺は休暇だ

『紅の豚』でポルコ・ロッソが休暇に向かうときのセリフがこれです。

 しかもこれはラジオで空賊から公開果たし状を突きつけられた時のセリフであって、なんていうんですかね、私たちが日々の暮らしに無理やり一区切りにつけて休暇に入っていく時とあまりにシンクロするというか、まぁおそらくほっとくと一生休暇なんて取れない宮崎駿自身のあれこれが反映してるんじゃないかなと思うんですよ。このワンシーンに。

 という

もっとみる

ロシア非常事態省の中央司令センターで罵られた話

もう10年以上前だが、僕はロシア非常事態省の中央司令センターで大声で罵られたことがある。
一緒に出張に行った日本人のおっさんが傲慢な上にちょっと病気があって、どうも時々変になるのだが、それがいきなり非常事態省の中央司令センターで爆発したのだ。
巨大なモニターとコンソールが並ぶ、ロシアの防災機関の心臓部みたいな場所だ。
そこに視察に来た日本人のおっさんがまだ20代の日本人をいきなり大声で怒鳴り始めた

もっとみる

トベない夢の話

空を飛ぶ夢をたまに見る。
のだが、動力飛行であったことが一度もない。
つまり背中から羽根が生えるとか、ジェットエンジンがついてるとか何か不思議な力で空に浮かべるとかそういう設定ではなく、毎度滑空なのだ。
そして毎度必ず、失速して飛べなくなる。
しばらく前に見た夢は、それでも割にちゃんとしたハンググライダーのような翼がついており、高層ビルの合間を飛び回っていた。
だが、「それじゃあこのまま大阪まで行

もっとみる
暑中お見舞い申し上げます

暑中お見舞い申し上げます

 暑中お見舞い申し上げます。
 今週はお盆なのでメルマガは自動的に休刊になると思っていたんですが、どうも8月15日は平日扱いらしく、「さっさとメルマガを発行しろ」という督促メールが配信システムの方から届いてしましました。
 まぁ考えてみると8月15日は終戦の日であり、一種の記念日ではあっても祝日扱いにはしにくいような気がたしかにします。
 かといって今週はメルマガを出す準備をまるでしていなかったの

もっとみる

大声で、泣いちゃった

Su-25攻撃機が低空で激しい機動を行いながら飛び去っていった。
故郷の千葉県が戦場になったのだ。
そういう夢を見た。『この世界の片隅に』の片渕監督と会談をして、そこで「軍都としての千葉県」といった話をした夜だったから、何故こういう夢になったかは明らかだ。
しかし、悲しかった。
僕は少し込み入った狭い坂道の途中にある駐車場まで車を取りに行って、その途中で自分の生まれて生きた千葉県の空をロシアの攻撃

もっとみる
番外編(2022年5月4日)春休み読書企画 ハイエースと読書と巨大数と魚について

番外編(2022年5月4日)春休み読書企画 ハイエースと読書と巨大数と魚について

ハイエースとライフプラン

 某チンのせいでこの2月からまとまった休みというものを全くとれておらず、頭に来て(ということもないですが)ゴールデンウィーク中は一切の労働を拒否することにしました。
 つまり、仕事の書き物も出演業も一切謝絶ということであります。
 ついでに九州行きの航空券を取って、家族で熊本〜佐賀〜大分を巡ってきました。二泊じゃちょっと慌ただしいから三泊四日。

 まぁレンタカーの予約

もっとみる
初夢の話

初夢の話

森の中のログハウスのようなところに居て、家の中では娘氏とその友達が遊んでいる。
霧の立ち込めた林道から何かが歩いてくる。
十字架をゴミ袋みたいな半透明のビニールで包んだものを掲げた男と、その後から美しい音色で笛を奏でる知恵遅れの男が僕達の家の前までやってきて、そのまま通り過ぎていった。
その後からは知恵遅れの男がまた何人か続き、最後にまたビニール袋に包まれた十字架が通り過ぎて行列は終わった。
そう

もっとみる
年末に「納まる」感を覚える話

年末に「納まる」感を覚える話

関東の冬ってときどきモヤみたいのが掛かりませんか。
松戸に住んでいた頃はそこいらじゅう畑だらけだったので、野焼きでもしてる煙なのだろうと思っていた。しかし畑など見当たらない横浜の街中でも見えるから、あれはどうも煙ではないようです。
関東の冬は陽射しがきついから、大気中のゴミみたいのが反射するのかもしんないな。

僕はこのカラカラでピカピカの関東の冬がどうにも好きではない。
しかしあれですね、年末に

もっとみる
東京は近くにありて

東京は近くにありて

東京は遠くなかった。
千葉県松戸市から皇居までおよそ20km。
小学校高学年になって5階の教室に移ってみると、晴れた日には東京都庁の二股ビルが陽炎のように見えていた。

だから、余計に東京というものが遠く思われた。
大人たちは毎朝東京に働きに行くが、子供はそうではない。東京は、そこに見えているがさわれないものだった。

千葉県松戸市には何もなかった。
何もないというのは文字通り何もないということで

もっとみる
夢日記 花咲く大教室と自爆先生

夢日記 花咲く大教室と自爆先生

珍しく漫画調の夢を見た。

つまり漫画の夢なんですね。絵柄は大友克洋っぽくて、あの独特の線で描かれた大学の大教室にぽかんと巨大な花が生えている。

白黒漫画なのだが、その花はうっすら青みがかっているのがわかる。

で、その大教室の机の下を白衣を着た髭の教授が這っていくのです。途中途中にも小さな花が生えているが、これは容赦なくブチブチむしっていく。これらの花は巨大な人類監視装置の端末で、教授はこのシ

もっとみる