佐藤可士和さんのロゴとアンパンマン
国立新美術館で開催されている「佐藤可士和展」に行ってみました。佐藤可士和さんと言えばユニクロさんなどのイメージが強いかもしれませんが、我らが「T」のロゴも手掛けられているんです。
個展の目玉の一つにこれまでのロゴ作品を巨大な絵画やオブジェで表現した「THE LOGO」という展示空間があるのですが、ここがまさに圧巻。巨大化、立体化といった通常の使用形態と違う変化をしていてもなおロゴとしての一貫性が保てる強さがすごい。
佐藤さんはこれまでの取材などでロゴのことを「企業や商品が社会に伝えたいことの本質を凝縮してビジュアル化した情報」と仰っていますが、本質がむき出しになるまで情報を削ぎ落して核の部分だけを磨いた結果、シンプルな造形と色彩に定着していくのだというプロセスを体感することができました。
この感じ、前もどこかで…と振り返ったとき、「子どもにとって最強のアイコンはアンパンマンだ!」と感じたことがあるのを思い出しました。単なる丸の組み合わせでも「アンパンマン!」、茶色と赤が並んだだけのパターンでも「アンパンマン!」と、子どもは街中のあらゆる所で勝手に自分だけのアンパンマンを見出します。
何なら四角いブロックになって、丸という特徴を失ってもしっかりアンパンマンです。子どもに「描いて~」とお願いされても一番安心なシンプルな造形、ミニマムの6色セット色鉛筆でも再現できる色彩。作者のやなせたかし先生はアンパンマンを「世界一弱いヒーロー」と語っていたそうですが、強さと優しさという最も大切なアイデンティティは多少の形態変化ではまったく揺るがないほどしっかり練り込まれています。
もしロゴでこのようなことを実現できれば、毎日の生活の中で出会う形や色が勝手にプロモーションしてくれる願ってもない環境が出来上がりですよね。くだんのTのロゴですが、元々は六本木 蔦屋書店の前身である「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」オープンの際に制作されたもの。国立新美術館から徒歩圏内にありますので、もし展覧会に行かれる際は帰り道にでもぜひお立ち寄りくださいませ。
※展覧会は5月10日(月)までの予定です。