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観光地の新しい価値づくり-小笠原諸島との共育プロジェクト

東京から片道24時間。出発は一週間に一便。出会う生物の94%が固有種。どこぞの外国かと思いきや、これは東京都・小笠原村のおはなし。
この度、その小笠原村観光局様とコラボレーションして『おがさわラボ』という共育プロジェクトを立ち上げました。
観光局様から小笠原に関するお題を投げかけてもらい、新しいサービスや商品等の実現までを目標に自由にアイデアを出し合うプロジェクトです。

小笠原と聞いて皆さんはどのようなイメージが浮かぶでしょうか。ユネスコの世界自然遺産に登録されていることをご存じの方は「自然が豊かな島」と思うかもしれません。映画好きの方は『硫黄島の手紙』の舞台となった太平洋戦争の激戦地(硫黄島も小笠原諸島)と思うかもしれません。歴史好きの方なら、かのペリー提督が浦賀に来る前に寄港して土地を買ったというトリビアを知っているかもしれません。自然が魅力であることはもちろんなんですが、実はその文化や歴史も知れば知るほど奥深い島なんです。

なんて偉そうに書いていますが、筆者も2018年に小笠原諸島返還50周年記念事業の企画に携わるまでは、恥ずかしながら全然知りませんでした。
返還から半世紀という節目を迎える意義を広く周知したいという目的で始まったその記念事業は、50周年にちなみ、小笠原の50個の魅力を50の色名と色彩に込めたオリジナル絵具『OGASAWARA 50 COLORS』の開発・発売という形で結実しました。

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企画を具現化する過程で実感したのは、
① 「島民が思う魅力」と「島外から見た魅力」の違い
② 「考えてもらう」は「好きにさせる」の近道
③ 最後に企画を企画書以上にするのは島民の熱意

ということでした。それぞれを感じるきっかけとなった出来事と共に、それを踏まえて『おがさわラボ』に込めた思いをお伝えできればと思います。

① 「島民が思う魅力」と「島外から見た魅力」の違い

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写真は母島の道路にある「ヤドカリ注意」の標識。小笠原では海岸や山林で割と気軽に出会えるオカヤドカリたちですが、実は天然記念物。日常生活で天然記念物を踏みそうになる経験なんてまずないですよね。そこで暮らす人にとっての当たり前の光景が、外から見ると驚きだったり新鮮だったり。50色のモチーフを選ぶ上で島内外の関係者で候補を出し合う機会があったのですが、地域の魅力出しというと最初はどうしても代表的な名所、名産などが並びがち。しかし、さすがに50個捻り出そうとすると普段は見過ごしているようなものも挙がってきます。島の人からすると”出がらし”的なものが「それ面白いですね!」となることが度々ありました。当事者になればなるほど深く狭い思考になりがちですが、ときには拡散と客観によって新たな視点を発見する方法も有効だと思います。

② 「考えてもらう」は「好きにさせる」の近道

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どんなに魅力的な打ち出し方で一瞬心に届いたとしても、情報の氾濫する現代では数分後にはきれいに流れ去っていることがほとんどです。一方で企画の仕事をしたことがある人には”あるある”だと思いますが、その事柄について”考える”という能動的な行動が少し加わるだけで、関連情報が急に目に入るようになったり、ガラッと違う見方が生まれたりします。
『OGASAWARA 50 COLORS』では、島内外の小学生に50色の絵具を使って小笠原を描いてもらう絵画コンクールも行ったのですが、参加した子供たちの「絵を描いてたら行きたくなった」「小笠原のことをもっと知りたくなった」といった声がそれを裏付けてくれました。小笠原のイメージを一度自分事化したことで<教科書に出てくるだけの存在>からグッと身近になり関心も高まったのだと思います。いかに考えるきっかけを提供するかが、心の中に留めてもらうポイントになる。それが二つ目の発見でした。

③ 最後に企画を企画書以上にするのは島民の熱意

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そして三つ目。個人的にはこれが一番重要だと思っています。外部のプランナーにできる最大限は、企画書を100%のレベルで遂行すること。企画書以上に広がる企画は、内部(当事者)の熱量がつくるものだと体感しました。企画書上の骨子は<絵具の制作→絵画コンクール→絵画展の実施>という三本柱だったのですが、島民の方々の働きかけによって「都知事会見での紹介」や「都営交通機関の空き枠を使った告知」という外部の力ではできない施策まで発展。予想を遥かに超える広がりを実現することができたのです。

…長くなりましたが、上記で経験できたことをさらに継続的な取り組みにしていきたいという思いから生まれたのが今回の『おがさわラボ』。
生活者と島民が一体となって“共に島を育て、人を育て、未来を育てる”という思いを「共育」という言葉に込めています。共育によって世界自然遺産の小笠原を「保護すべき場所」から「新しいものが生まれ育つコミュニティ」へ。昨年から私たちの日常生活にも大きな変化をもたらしている未曽有の出来事が、各地の観光地へ及ぼす影響は未だに計り知れません。訪問以外の方法でも楽しみ方を提供できる、新しい観光地の価値をつくる。小笠原諸島に関わる皆さまと、そんなゴールを目指していきたいと思っています。『おがさわラボ』は誰でもご参加いただけますので、ぜひ一緒に盛り上げてください!

■公開済みのお題(※募集は終了しています)

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