【地震備忘録】ガリガリ君を5本食べた日-2018北海道胆振東部地震-
地震発生
2018/9/6(木)夜が明ける前の3時ころ、目が覚めた。なんとなくスマホをいじる。
電池が20%を切りそう充電しなきゃと思っていたところ、けたたましく緊急地震速報のアラートが鳴った。まもなく揺れ始める、長い…。こういう揺れ方はどこかで大きな揺れがあったときの特徴な気がした。
スマホを確認していたところ、停電がおきた。玄関に置いてある懐中電灯に電池を入れる。以前に電池を入れたままにしておき、液漏れで懐中電灯を壊してしまってから、電池は外して懐中電灯とともに玄関で保管していた。
当時の夫の勤め先は震度4以上のとき出勤する決まりがあり、震度を確認し身支度を整え、車で会社へ向かっていった。道路は停電により信号もついていないはず…心配だった。
手回しラジオ
何しろスマホの充電がない。前年に購入した手回しラジオをつける。胆振(いぶり)地方で大きな揺れがあったことがわかる。しばし聞いたあと、まだ暗いのだから眠ろうとつとめた。
短時間眠りについたものの、すぐ目が覚める。外が明るくなっていた。またラジオをつける。土砂崩れが厚真(あつま)町で発生しているという。停電でTVがつかないので想像がつかない。
通勤に利用している高速バスが停電により全面運休になっていると知る。今日は出勤できるわけがない。
コンビニへ
10時過ぎ連絡は不要な気がしたが、近くのコンビニに公衆電話があることを思い出し向かう。
歩いて5分もかからない、そのコンビニは普段あまり利用することがなかった。外にある公衆電話を使おうと試みる。しかし使えない。
店内に入り店員さんに聞いてみる。すると、今は使えませんとの返答。
店員さんはアイスの冷凍庫をごそごそと作業していた。
「アイス持っていきませんか。停電でダメになっちゃうんで、どうぞ」
とまどいつつ「ありがとうございます」と受け取り礼を言う。
ガリガリ君が5つレジ袋に入っていた。
その日はまだ9月はじめであたたかかった。家に帰りガリガリ君ソーダをさっそく口にする。さっぱりしていてうまい。冷凍庫の保冷剤のあるところへ入れたが、どうせとけてしまう。すぐさま2個目に手を伸ばす。レジ袋にはソーダ味3本とあまおう味2本が入っていた。
来店客へ次々にアイスの入った袋を渡していた女性店員の顔が浮かぶ。ひとりガリガリ君を食べつづけた。
12時ころスマホが残り電池2%になり強制シャットダウンとなった。3DSも電池が切れた。本は読む気になれない。手回しラジオをつける。人の声を聞くだけでホッとした。ラジオが切れるたびに、ハンドルを回した。
13時過ぎ交差点で警察官が交通誘導のため吹く笛の音が聞こえなくなり、停電解消に気がつく。停電のため下げておいたブレーカーを上げる。スマホを充電する。
当時住んでいたところは近くに学校や病院などの公共施設が多かったため、他地域より比較的早く電気が復旧したようだった。
スマホの充電が終わり、職場へかけてみる。つながらない。職場はまだ停電しているようだ。今日は無断欠勤にはならないはずだ。
夕方になり緊急出勤した夫が一旦帰宅。この日は元々宿直勤務が入っていた。宿直用意を整え、また職場へと戻っていく。少しでも顔を見ることができてホッとした。
コンビニでもらったガリガリ君5本は結局一人で全部食べた。最後の方は木の棒から氷菓が落ちあわてたりしたが美味しくいただいた。
のちにわかったことだが、廃棄する商品を客へ渡すことは本来禁止されているという。それでもあのコンビニの店主は来店客へ渡すことを決断したのだ。
停電のおきた暑い日に食べたガリガリ君は美味しかった。
携帯ラジオの備えを
北海道全域でおきた停電の全面解消には時間がかかった。地域によっては3日以上かかったところもある。
ぜひ自宅に携帯ラジオを備えてほしい。
またコンビニで
地震から数カ月後、ガリガリ君をもらったコンビニに立ち寄った。会計の際、女性店員のネームを見ると「店長」とある。あのときの女性店員かもしれない。声をかけてみる。
「地震のときはアイスをありがとうございました」
店員さんは、ああという顔をして
「大丈夫でした?食べられました?」と聞く。
「とても美味しかったです」
なんとなくふふふと、ほほえみ合った。
了
2020.6.29追記 この記事を公開したあと、夫がガリガリ君をもらってきた。夫はSNSに一切関わらない人。私がnoteを書いていることも知らないハズ…。不思議だけどガリガリ君食べるの楽しみ!