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【部下を推す話】[28] イベント前夜

時間は某日深夜1時。

布団の上のわたしはスマホで日付を確認する。
眠れない。全く眠れない。
新規入職のCは「ねこのさん、元気?」とスキンシップしにきてくれて可愛いし、Bはいろんな話しに来てくれて可愛いし、Aは残業後に愛車で通り過ぎるわたしをバス停から目で追ってくれた上にこちらが手を振ったのにも気付いて一礼してくれて可愛いし、と部下達の可愛さが極まったことも原因のひとつではあるが、それだけではない。

-明日だ。とうとうきた。…いや、日付的にはもう当日か。

そう。初夏から皆さまお待ちかねの管理部門からの評価FBフィードバックの日がとうとうやってきたのだ。



わたしの仕事量が大変なことになったが故に延期されたこのイベント。
開催後に漏れなく、推しと2人きりの空間でA4サイズいっぱいのファンレターを本人に渡すイベントも開催される。

つまり、管理部門からのFBおよび直属の上司であるわたし自身が彼等に行った評価を本人たちに伝える個人面談のことなのだが、今期からは仕様が変更になる。
今までは口頭でお伝えしていた内容を、今回からはなんと上司が書いたコメントおよび評価シート原本を本人たちに渡すことになる。

そう。すなわち。

わたしが部下A・Bそれぞれに対して書き上げたA4用紙いっぱいのコメント (※フォントサイズ10.5) を本人達に個人面談で返却する、のだ。

居た堪れない。
実に居た堪れない。

管理部門への提出時には堂々と提出したものだが、時間が経つにつれ段々と我に返り始めた。
内容は紛うことなきわたしの本心だ。勿論、彼等の成長のために今後頑張って欲しい部分なども記載している。しかしなんと言うか、誉めている部分もアドバイスの部分も全てにおいて、我ながら言葉選びが恥ずかしい。
夜中に書いた恋文ラブレターを昼間の覚醒時に読んでもだもだする、あの感じが日付の経過と共にじわじわとわたしを襲い始めていた。


夏の時点で既に恥ずかしさが上限値カンストを迎えそうだったわたしは、予防策を張ることにした。

「いいですか。あらかじめお伝えしておきますが、わたしが貴方たちに書いた評価者コメントは長いです。A4サイズにみっちみちです。我ながら愛が重いです。…何より、ほぼ徹夜のノリで書いているので、内容がなんというか…最早ファンレターです。

と、AとBに真顔で告げたのだ。

今思えば、「事前に上司に『近々ファンレター渡します』って予告されるのもそれはそれで緊張するのでは?」という気もするが。
事前に耐性および心算が出来ていれば、個人面談当日に実に甘酸っぱい空気が漂ってしまうことも避けられるに違いない。
当日お互いにもだもだするよりだいぶマシだろう、と考え強行したのである。

尚、事前予告を受けたAとBはその時点で「ふはっ」と噴き出し照れていた。可愛い。



未だに照れるAとBを思い出すだけでニマニマしてしまう。

-あのコたち、なんであんなに可愛くて良いコたちなんだろうか。

眠れない夜だが、眠らなくてはならぬ。
管理部門との話は、わたしの可愛い部下たちへのFBに関する内容だけではない。組織としての今後の展望だとか、そういった話もしなくてはならないのだ。

かくして、遠足前夜の子供の如き心を抑え、わたしは目を閉じた。



次回、ワクワクドキドキな個人面談!
お楽しみに!!!!

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