73. お庭の畑 初年度 1
Casa Arkadiaの土はねっとりとした真っ黒い土。
私たちが土地を買う30年ほど前まで、ここは大農場だった。南北を小高い丘に囲まれた2kmの緩やかな谷間には低木が茂り、ここを牛たちが自由に歩き酪農をしていたらしい。中には高さ5mほどにもなる大木もあるが、大半はイバラやワシマと呼ばれるアオギリ科の木が茂りっている。
ここ何年かは、隣家のホアキンがたまに耕してとうもろこしなどを植えていたようだが、特に「開墾」されていたわけではなく、土もそこにもともとあったものをそのまま使っていた。家を建て始める前年、雨季の雨水をたっぷり吸い込んだここはぬちゃぬちゃとなり、肥沃そうではあるけれどもちょっと頑張らないと作物によっては不敵なものも出てきそう。
農耕器具などほとんど持っていない。スコップと鍬とツルハシ。自家用の畑とはいえ250m2ほどのここを40代後半の私が一人で耕すには限界がある(クマ夫は家屋のあれこれに専念してもらっている)。まず、排水パイプを設置した家側の半分でも使えればいいだろうと、ワシマのしたから天然の腐葉土を何往復もして持ってきて、元の黒土に混ぜ込みながら耕した。
種は天敵が多すぎるので(鳥、ネズミ、うさぎ)直播せず、トイレットペーパーの芯や、この時はたまたまいくつか取っておいたファストフードのポテトカップを種ポットがわりにする。
4月26日に蒔いたのは、メロン、スイカ、ケール、ナス、ニンジン、サヤインゲン、シシトウ、キュウリ。
↑種まきから2週間でここまで育ちました。右手前のワサワサしたのは、近所からもらった緑トマト。この後これが大変なことに。
キュウリ
いつどうやって入手したか覚えていないが日本のキュウリの種。
前の住宅地内の家でも1度作って数本なったのだが、それから2年経過しているので大して期待はしていない。
本葉が出たものを2箇所に分けて植える。竹と麻縄の支柱南側に4本。(北側は近所の人にもらった緑トマトの苗)
隣の畝の反対側に、セメントの筒を2本支柱にして鉄の棒を横に渡し、1.5mほど離れたところに向けて麻縄を張る。緩やかに登らせる作戦。
ケール
スーパーフード、健康野菜と謳われてスムージーなどのおしゃれっぽいものに使われるケール。あの苦味とわしゃわしゃ感が好きでサラダに入れて食べたいのだがメキシコではまだ知名度が低いのかお高い。ならばお試しに作ってみようと。去年、ちょっとお遊び半分に裏の畑をやってわかった。そこそこ面積ある、とはいえ限られている。ズッキーニなんて作った日にゃ一株で1m2以上使ってしまう。そしてそのときは雨季だったために大して本数ならずに腐ってしまった。ならば。青果店では高価なもの、ここでは手に入りにくいものなどを作った方が例え家族用とはいえ良いのではなかろうか。ズッキーニ、申し訳ないが一年中豊富にあるし、どんなに高くなっても200円/kgだし。
で、このケール。あるにはある。スーパーで300g一束200円ですよ、これでもお手頃なぐらい。なので作ってみる。
種まきから1ヶ月半でこれぐらい育った。
ナス
夏の野菜といったらもうナス。食べたいじゃない?焼き浸しにナス味噌、天ぷら、ラタトゥイユ。メキシコ人はほとんどナスを知らない。イタリアやスペインなどの南欧を旅行したことのある人などがそこで食べたぐらいで、食べ方を知っている人もほとんどいない。青果店にいつもあるもの、ではない。気候的にできないわけではなさそうなのでやってみる。こちらもそのオーガニックの店から種を買う。
シシトウ
こちらも、どういう経緯できたか定かではない種があったので蒔いてみる。2年ほど前に植木鉢で作った時には申し訳なさそうに数個、小さいのが付いただけだった。しかもその時の種なのでこちらも大して期待はしていない。
ルッコラ
ケールのお隣に蒔く。ほんのり香ばしい苦味が大好きなのでいつでも欲しい。これは何度も植木鉢で作っているので簡単。
サヤインゲン
これも、正直いうと買った方が早いし安いし、年中ある。
でも、トウモロコシの種を巻いて数日後にセサールが言った。「トウモロコシは直播でいい。真っ直ぐに穴掘って、そこにトウモロコシ1粒、サヤインゲン1粒入れてやる。そうすると一緒に育って丈夫になる」おやおや、コンパニオンプランツですか。セサールは生まれてずっと農園育ちなので、彼にとっては当然のこと。コンパニオンプランツ、という呼び名すらも知らなかった。そうか、だからアメリカ映画とかでトウモロコシ畑の家族の夕食シーンには必ずサヤインゲン(Green Bean)が登場するわけか。
トウモロコシ
ここの畑でまず作ってみたかったのがトウモロコシ。セサール曰く「蒔きゃぁ出る。出れば実がつく。手間がかからない」とのこと。さすが原産国。調べてみると、この辺りでは5月25日前後に蒔くのがちょうど良いらしい。そこから後になると、少しずつ生るトウモロコシのサイズが小さくなるらしい。
トイレットペーパーの芯を種ポットがわりにして土を詰め、水をかけてから種を入れ、また土を被せて水をかける。種ポット一つに種一つ。
種は二種類。一つはミミズコンポストを主にオーガニックな農作物用土、用品を作っている市内の小さな生産者から買った種。もう一つは前年冬に2ブロック先の道路にころんと落ちていた紫色の種が混じった小さいもの。
トウモロコシは芽が出てから二週間ほど定植まで待った。少し大きくしないとまたやられるのだ。