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引用録 『文字渦』 円城塔
『文字渦』円城塔(新潮社、2018年)
本は、作って読むものだ、というのが境部さんの持論であり「さもなくばただのデータだ」という。すなわち、境部さんにいわせるならば、テキストデータそれ自体は本ではない。どう実体化させるかによって文章の性質は変わるといい、内容が変わることだって珍しくはない。(86)
わたしは境部氏のこの見解に全面的に賛同する。昨今ようやく世間に定着してきた感のある電子書籍。
『音楽が本になるとき 聴くこと・読むこと・語らうこと』 木村元(木立の文庫、2020年)
本の蜜にあつまる本の虫たちにとって、全員が共通して好む蜜というのがある。それは本について書かれた本だ。本の虫たちは自らの好物(つまり本)について、その手触り、匂い、装丁をもっと知りたいと思う。そして同時に好物を食べるときにどんな化学反応が起こっているのか、はたまた、本の生息地、他の個体との関係性、つまりは本の生態系を知りたがる。
本書は、そんな本虫(ほんちゅう)の一人であり、本虫でありながら、音