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「会社は社員のためにある」と信じていたとき、仕事は楽しかった。
私はそれなりに楽しいサラリーマン生活を送っていたのだが、ある時を境にその楽しさは徐々に減少した。そして無職になった。
入社3年目の頃、私はそれはもう仕事に全力投球をしていた。1か月連続で出社したり、仕事が終わらなければ自費でホテルを取って何度も泊まった。翌日は始発の時間に出社した。もちろんサービス残業だ。
その頃は尊敬できる上司がたくさんいた。みんな私のことを考えてアドバイスをしてくれていると信じていたし、その上司たちが属する会社も、もちろん私のことを考えてくれていると思っていた。
若手の生涯賃金が2000万円減る人事制度改正
そんなある日、人事部より社員向けの人事制度改正の説明会があった。改正の内容は単純に若い社員の出世が遅くなるというものだった。当時は何も考えずに「そんなものなのかー」と思っていたのだが、これは後から考えるととんでもない内容だった。
具体的な数字を書くと長くなるし面白くないので結論だけ。今回の人事改正は若手にとって生涯賃金が2000万円程度下がるというものだった。ここには残業代や退職金も含まれる。そしてすでに出世している人は関係のない内容だった。
入社10年近くたつと社会や会社の仕組みを徐々に理解するようになる。改めてこの件を考えると「あれ?」となった。
疑問に思ってこのことを飲み会などで上司たちに人事制度改正について聞いてまわった。上司たちの返答はこうだった。
「会社の決定だからね。もともとうちの会社は出世が早かったからしょうがないよ。」
この人たちは人事制度改正前に出世している人間だ。私は「頭がおかしいのかな?」と本気で思った。なぜそう思ったかと言うとその上司たちはいつもこんなことを言っていたからだ。
「うちの会社は社員のことを考えてくれているいい会社だよ。もちろん俺たちも部下や後輩がこの会社で長く働けるようにがんばっている。」
私は表面的に「そうですよねー。」とニコニコしながら答えたが大いに失望した。その説明会を思い出すと私が尊敬していた上司や先輩たちは、人事部に対して反対意見を何も言わなかったのだ。さも当然のことのように頷いていた。なぜなら自分たちは逃げ切れるから。
人間は口では何とでも言えるのだ。でも本心は我が身可愛さのために行動する。私だって同じなのでその人たちを責めることはできないが「だったらきれいごと言うのはやめましょうよ」とは思う。
普段から「俺は自分のことを一番に考えているから!」と尊敬する上司たちが言ってくれたら私は失望することは無かった。なぜそれを隠すのか。自分自身でも気づいていないのかは分からないが、言動が異なる人は尊敬できない。
労働組合の役割とは?
少し話はズレたが、上司たちと話しても納得ができなかったので労働組合のトップにも話を聞いてみた。これは偶然飲み会で隣になったのでラッキーだった。
私が過去の人事制度改正について労働組合は反対したのか?と聞いてみると、どうも違うことが分かった。トップはこんなことを言っていた。
「あの時は会長社長含めその意向だったから、会社の利益のことも考えると労働組合としてはどちらかというと賛成だったよ。」
何を言っているか理解できなかったので、酒の勢いに任せて嚙みついた。
「じゃあ労働組合の存在意義ってなんですか?(笑)」
トップは怒ってこう言った。
「俺たちも頑張っているんだよ!それならお前も組合に入って頑張ればいいじゃないか!」
私は何を頑張っているのか理解できなかった。労働組合は当時社員から組合費として月3000円を徴収していた。当時の社員数は1000人程度だったので少なく見積もっても月に300万円の活動資金を徴収していることになる。年間3600万円だ。
私はお金を得るということは結果が求められるべきだと考えている。それは当たり前の話で私がAmazonで注文をするときは欲しい商品が最短で届くという結果を求めているし、本をを購入するときは視野が広がったという結果を求めている。
この考え方に立つと労働組合は月300万円という大金を社員から徴収しているのであれば、その費用以上の結果が求められる。その結果が生涯賃金マイナス2000万円というのはもはや組織としての存在価値がない。
それに会社の利益が少ないのであればそれは経営手腕の問題だ。単純に経営層に提言すればいい。
労働組合が提供してくれるサービスはにはこんなものがあった。
・遊園地の割引券
・働くママの交流会
・組合員でいちご狩りツアー
「大変言いづらいのですが、全て必要ありません。」
そして組合のトップは私に文句があるなら一緒にやればいいと言ったが、これも失礼承知で「その組織で時間を無駄にするほど私の人生は暇ではない」というのが正直なところだった。
私はあまりに世界が見えていなかった
ここまで書いてみて、こんなことに不満を思うのも私の若さゆえだったと反省している。私は根本的に勘違いをしていたのだ。原理的に会社は社員のモノではない。株主のモノだ。なぜなら株とは会社の所有権だからだ。
社員と会社の関係は労働力を提供してそのリターンとしての給料をもらうだけのものだ。株主は株という所有権をお金で購入してそのリターンとして配当金や値上がり益を得る。
所有権を持っているからこそ、フジテレビ問題などを見ていてもモノ言う株主の発言力は社員の比にならないぐらいあるのだ。私はこんな事実も投資をするまで知らなかった。
そして会社が社員のことを考えているというのは、当然のことながら社員が利益を生み出す存在だからだ。単純に条件付きの関係なのだ。会社が社員のことを考えるというのはつまりこういうことだ。
「あなたが利益を生み出す限り会社はあなたのことを考えます」
そこには一昔前の人情的な経営など存在しない。お金でつながっているだけの関係なのだ。それを拡大解釈して過去の上司のように「会社はみんなのことを考えてくれているよ」というのは根本的にずれているし、頭の中がお花畑としか言いようがない。
この考え方は労働者ではなく投資家になるとよくわかる。例えばトヨタ自動車の株を100株買うとする。2月9日時点で株価は1株約2800円なので、2800円×100株=28万円のお金で株という名の所有権を買う。
このお金はあなたが満員電車に揺られながら、上司の無理な要求にこたえ、手のかかる部下のケアをし、毎月2万円ずつ貯金して14ヶ月かけて手に入れたお金だとしよう。
このお金をトヨタ自動車に投資するときにあなたは「トヨタ自動車の社員たちが幸せになってもらうため」と言って投資するだろうか?私は違う。個別株に投資をするなら株主である私への利益を最大限にしてほしいと考えて投資をする。
もちろんコンプライアンスに違反するのはやめてほしいし、ハラスメント問題を起こすのもやめてほしい。なぜなら株価が下がるからだ。
このように株式会社とは会社と株主がお金の関係からスタートする。お金から始まる株式会社と労働者はもちろんお金の関係で結ばれる。早期退職が現在増えているが、あれは言い換えればこうだ。
「あなたは給料分の利益を稼げていないコスパの悪い人材なので、お金を余分に払うから早く辞めてくださいね。」
お金でつながっている関係なのに、どこかでゆがんだ解釈を社員たちがし続け「会社は社員のことを考えてくれている」となってしまう。私たちは旧統一教会やオウム真理教などを馬鹿にするが、程度の差はあれ会社の中でも起きている。
一方でこの考え方はありなのではないかと私は思ったりもする。
会社で長く働いている人たちを見ると大抵この考え方をしている。「会社には今まで自分を育ててくれた恩があるから、俺たちは会社に恩返ししなければならない。」
盲目的に会社のことを信じられるからこそ、会社からの理不尽な要求にも耐えられる部分もある。
だから私はどちらがいいのか分からない。私のように穿った見方をしてしまうと、労働へのモチベーションは低下し続ける。だからと言って盲目的に会社にすべてを委ねると、理不尽な異動や早期退職の対象となった時に目の前が真っ暗になる。
この話はありふれた結論を導けそうだ。
バランスが大切!(笑)
さいごに
今回は会社のネガティブな側面を書きました。とはいえ記事で紹介した上司たちが悪いとは思っていません。彼らにも家族がいますし自分が一番大切なのは人間として当然です。
私は常々人間はなんと弱い生き物だろうと思います。映画やドラマに出てくる部下を守れるような上司なんて天然記念物レベルです。もちろん私も同じです。
私は自分自身が弱いからこそ投資をしてきました。サラリーマンをしていると自分が正しいと思ったことを貫けないことが多々あります。それは直属の部下が上の人間から理不尽なことを言われたときかもしれません。
あなたが上司だとしたら大切な部下にそんなことを言うヤツには一言モノ申したいと思います。でもその人があなたの直属の上司や取締役だったらどうでしょう?
楯突いたところであなたの評価が下がるだけです。評価が下がると給料が下がります。もしかしたら閑職に異動になるかもしれません。私は過去に言わなければならないのに言えないという経験を何度もしました。そのたびに自分のことが嫌いになりました。
これは考えてみれば単純な話です。自分の生活のすべてを会社に依存しているからにほかなりません。だからこそ投資をして評価が下がったところでどうでもいいか!と思える状態にしたかったのです。
お金を増やすと確かに上司に対しても言いたいことを言えます。でもその先が無職なのでどっちが良いのか分かりませんね(笑)
おしまい!
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