対話体小説ショート「希望と夢」
「もう・・・食料が残ってない・・・」
「そうか・・・・・・・・仕方ないな・・・・・・」
「それに・・・酸素も・・・耐寒材も・・・」
「そうか・・・・なぁ・・・お前は・・・どうしたい?・・・」
「・・・・・・・・・・・どうってなにを・・・」
「そりゃ・・・・・・・・・・・あの・・・まぁ来世とか・・・」
「ふっそだな・・・とりあえずは、ぜってぇに観測隊にはならないな」
「ああ・・・だな・・・観測隊になるにしても・・・せめて熱帯地方のジャングルのがよっぽどいい・・・」
「そうか・・・?」
「ああ・・・そんときゃ・・・なんていうかその、獣に食べられるか、んで死んでも他の生物に分解されるか、俺の生が輪廻となって巡り廻ると思えるから・・・」
「そうか・・・まぁこんな・・・生物が生存を許されない、氷の中で死ぬよりかよっぽど夢があるな・・・」
「そうだ・・・せめて来世も観測隊になるんならな・・・」
「ああ・・・・・・・・駄目だ・・・もう眠くなってきた」
「おいおい・・・最後まで俺の話も聞いてくれよ」
「ふふふ・・・嘘だよ・・・まだいけるさ・・・それより・・・お前は来世どうしたいんだ・・・」
「俺か・・・俺は多分・・・来世は・・・・ないさ・・・」
「何言ってんだよ・・・お前が振ってきたんだろ」
「いや・・・お前は来世幸せに生きられるだろうさ・・・でも俺には・・・そんな資格はない・・・業だ」
「・・・どういうことだ・・・こんな状況になっちまったのは、もう運命さ、本隊とも離れちまって、もう手立ても考え尽くしたけど、どうしようもなかった。これは俺たち2人で真似いた結果さ・・・さらに言えば・・・あん時、風量と気圧データの微妙な変化に気づけなかった俺のミスだよ・・・仕方ないことじゃないか・・・」
「・・・いやそうじゃない・・・その通りなんだ・・・この状況は運命で・・・本来ならば俺だけに下るはずだったんだ・・・」
「・・・いったい」
「そうだな・・・俺が観察隊に志願して、もう10年少か・・・その当時の俺は人類の学術的価値とか、未開の地に降り立ちこの世界を、人類の為に研究収集するなんてほざいて、ごまかしてたが・・・実のところは裁いてほしかったんだよ・・・」
「・・・なにをいってるんだよ・・・お前とは何年もの付き合いだろ・・・ずっと言ってたじゃないか、この仕事が何にもない俺にとっての唯一誇れる希望と夢ってよ」
「・・・嘘なんだ・・・本当は俺の夢じゃない・・・」
「は?・・・んじゃ・・・お前は一体・・・なんだ?」
「○○××の兄貴だ・・・」
「なに?・・・・お前・・・でも入隊前に審査があるし、身分証も・・・」
「・・・13年前か・・・○○××は死んだんだよ・・・心不全で・・・」
「え?」
「俺は・・・兄で・・・そしてあいつの・・・恋人でもあった・・・」
「・・・・」
「見かけも身長も体重も殆ど同じでな、一卵性双生児だったんだよ」
「そんなこと・・・」
「そう・・・それで・・・あいつが元々研究者で、ずっと前から観察隊に応募していることは分かっていた・・・俺たちには身寄りもなにもなくてな・・・ちょうどあいつが亡くなった時に・・・俺はあいつに成りすまして・・・そのままこの場所に来たんだ・・・」
「・・・わかった・・・けど・・・けど・・・お前は何故それでここで裁かれたいんだ・・・弟さんの心不全も・・・観察隊に入る事も弟さんの運命だろ・・・お前は関係ないはずだ・・・」
「あいつの心不全は、あいつの愛を受け損ねた俺の責任だ・・・」
「・・・そんなこ」
「いや・・・そうなんだ・・・あいつには俺しかいなかった、ずっと生まれた時から・・・あいつは俺と二人きりの時以外、人生を歩んじゃなかった・・・俺は・・・それを見てるのが辛かった・・・なぜなら俺には・・・あいつ以外にも・・・友人・・・そして好きな女性がいたから・・・」
「そうか・・・」
「だからあいつが観測隊の話を俺にしてきたとき・・・俺は言ったんだ・・・××・・・お前の事を愛してるよ、これからも家族としてだ・・・だから観測隊に入ってお前の人生を歩む時間だって・・・」
「・・・」
「そしたらあいつ・・・今までで見たことないくらい泣き喚いてた・・・信じてたのにって・・・俺なら絶対引き留めるって・・・そして2人きりでいつまでも暮らそうって・・・だけど・・・・俺は・・・それはお前の人生じゃ・・・お前の夢じゃないって・・・・」
「・・・」
「そしたらさ・・・翌日になって・・・部屋をのぞくと今まで見たことないくらい綺麗な顔であいつは寝てた・・・そして・・・気がついたんだ・・・息をしてないって」
「・・・」
「それで・・・色々考えたんだ・・・そして勉強もした・・・それで、あいつが本来ならば出来た人生を歩もうと・・・ふと思って・・・気がついたらもう10年も過ぎちまったんだ・・・」
「・・・そ・・そ・・・う」
「おい・・・大丈夫か・・・・もう無理するな・・・本当に申し訳ない・・・全て俺のせいだ・・・せめて・・・来世で愛すべき弟と同じように・・・幸せに・・・なってくれ・・・親友・・・」
「ち・・・ちが・・・」
「・・・・ん?」
「おとう・・・ほんと・・・は・・・・おま・・・え・・・にか・・・んしゃ・・・していた・・・いつで・・・も・・・そばに・・いてくれ・・・たか・・・ら」
「そうか・・・」
「いま・・・も・・・おまえ・・・のとな・・・りに」
「・・・なに?」
「・・・にぃ・・・ごめんって・・・・あいして・・・る・・・・のに・・・くるし・・・・め・・・・さ・・・せて・・・・て」
「おい!・・・ほんとか!」
「いま・・・で・・・も・・・ずっと・・・さいご・・・ありが・・・とう・・・いえなか・・・・た・・・こと・・・くやんで・・・・にぃは・・・だれ・・・より・・・やさし・・・いか・・ら」
「ほんとか!・・・ごほっ・・・おい・・・××!××!」
「にぃ・・・のじ・・・ん・・・せ・・・い・・・あゆ・・・ん・・で・・・ほし・・・」
「そ・・・んな・・・××は・・・俺のこと」
「・・・・」
「おい!・・・・・・・・・・・・・・・・そうか」
「・・・ぜ・・・んぶ・・・俺の・・ひと・・・り・・・よが・・・りか・・・だめだな・・・俺・・・・ずっとみてくれてたのか・・・ありが・・と・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・ぉい!・・・ぁそこだ!!!」
「見つけだぞ!!ザザ。。。。こちら救難Aチーム。。。はぐれた隊員2名見つけました。。。すぐに近くのC観測所にて救護します!!どうぞ」
「・・・・う・・・・うん・・・」
「・・・やぁ・・・気がついたか?」
「ここは・・・?観測所の・・・」
「そうだ・・・本当に・・・本当に奇跡としか言いようがない、救助隊が君を見つけ、無事救護出来たことに関しては・・・・」
「・・・そう・・・ですか・・・・・・・・・・・・・・・・・あいつは?」
「・・・・・・・彼は・・・・残念ながら・・・間に合わなかったよ・・・・」
「そうです・・・・か・・・・」
「・・・・・・・・・・無念としか言いようがない」
「あいつは・・・本隊から離れた時も・・・ずっと最後の最後まで諦めず・・・・・・でも・・・・装備も物資も・・・もう限界で・・・・」
「そうだな・・・・・・実は・・・君たちの防寒スーツには、ブラックレコーダーが内蔵されてるんだ」
「・・・・・え?」
「レコーダーが君たちの会話を、最後の時までちゃんと録音していたよ・・・もちろん君も・・・最善を尽くし・・・二人で生き延びようと・・・したのを・・・」
「そうですか・・・」
「・・・・それでも裁かれたいと思うかね?」
「・・・そっそれは・・・?」
「驚いたよ、正直ね。まさか君に双子の弟がいて、研究生として同行していた時から入れ替わっていたなんて・・・」
「っつ・・・本当に申し訳ございませんでした」
「そうだな・・・君のやったことは重罪だ・・・偽造して、他人に入れ替わってもぐりこむことは、許されるべきではない・・・」
「そうです・・・」
「・・・よって君は本土に帰らせることにした・・・仕事は今まで私たちの観測隊が見つけたことを、研究班に所属しながら君の夢を叶えなさい」
「え・・・・そっそんなこと」
「君の夢になったんだろ・・・私の前で嘘はつけんよ、君とずっと仕事している時、君は紛れもなく私たちと同じ目をしていた。君は弟さんを愛してた、しかしこの仕事が君にとっての「何もない自分に唯一ある希望と夢」だ」
「・・・・はぃ・・・そぅで・・・す・・・」
「ふふふ・・・泣くほど大事な君の夢を簡単に言い訳で捨てるほど、君は愚かではないだろ・・・本土で今までの事をゆっくり研究したらいい・・・そしてまたここに来たいのなら本当の君となってここに来ればいい」
「でも・・・そんなことって・・・」
「そうだ・・・まぁ私もここに魅せられてこの仕事に就いた1人だからな・・・君が本物だってことは分かってる・・・余計な事を言ってくる連中がいたら胸を張って君の今までの成果を叩きつけてやるさ・・・」
「・・・あ・・ありがとうございます」
「ふふ・・・まぁ体もゆっくり治さねばな・・・なぁにじっくり過ごしてくれ・・・ここは周りより時間の流れが遅いんだ」
「・・・・はい・・・・あの・・・一つ聞いても?」
「ん・・・なんだ?」
「私は今までずっと、弟に対し、罪悪感を抱き、そしてこの仕事を選んだのは、私が弟を追い詰めた結果の罪を少しでも背負いたかったから始めたのです、しかし最後に弟は、私の人生を生きろと言ってたと、死にかけていたアイツの口から・・・教えてもらいました・・・」
「・・・」
「私だけ1人生き残り・・・私は本当に・・・本当に・・・自分の人生を歩んでいいのでしょうか・・・」
「・・・・実を言うと奇妙なことにレコーダーの最後の部分は、何も残ってないんだ・・・」
「え・・・そ・・・そんな・・」
「私は現実主義者だ・・・しかし・・・ここは時々天国との境目が最も近くなると思う瞬間を私は何度も経験してきた・・・」
「はい・・・」
「なら君が経験した事を信じろ・・・君が本当に信じたいことをね・・・そう・・・それと・・・君は自分の人生を歩むことが・・・弟さんの願いだ・・・それに亡くなった君の親友の意思だと、私は信じている」
「・・・・・私は・・・・私の人生は」
「・・・返事はゆっくり考えなさい・・・10年以上考えたんだろ・・・もう少しくらい大目に見てもらえるさ」