見出し画像

バレエ感想「アラジン」清水裕三郎さんアデュー公演(新国立劇場バレエ団)


新国立劇場バレエ団に文句を言いたいこと!最後が酷すぎる!

まず文句を言わせていただきたいのですが、カーテンコールが酷すぎます😭
7月の札幌公演や子供向けバレエ公演があるとは言え、6/23千秋楽は今期で退団するダンサーがオペラパレスで最後に踊る日であり、観客のうち大多数は彼らの最後の勇姿を拝もうと劇場に足を運びました。
それにも関わらず、退団者を讃えることもなく、ちょっとお辞儀をさせてあげるわけでもなく、彼らの存在を完全スルーしてカーテンコールが終わり、いくらなんでも扱いが酷すぎて悲しくなりました。

バレエ団上層部の退団者に対する今回の扱いはダンサーに対しても、足を運んだ観客に対しても思いやりがないと感じました。とにかく失礼以外のなんでもありません。一体どれだけの観客が最後に感謝を伝えたくて、退団するダンサー達の勇姿を拝みたくてわざわざ劇場に足を運んだことでしょうか!
6/22の福田圭吾さんのラストはあれだけ派手に盛り上げておきながら、6/23は総スルーだなんであまりにも酷いと思いました。退団するダンサー達に対してだけでなく、遠いところ雨であるにも関わらず劇場に足を運んだ観客に対して失礼過ぎます。ダンサーだけでなく、オーケストラも裏方スタッフも、この日が最後だった人がいたかもしれません。なぜ彼らに最後に光を当てないのでしょうか。

今回退団するメンバーはプリンシパルではありませんが、長きにわたって舞台を支えてきたダンサー達であり、中には10年以上新国に在籍していた方もいます。
例えば先日パリ・オペラ座でアデューを迎えたミリアム・ウルド=ブラームは、最後の舞台でカーテンコールに同じく定年で退団するオードリック・ブザールを舞台に呼び出して彼を讃えました。新国では運営陣だけでなく主演しているダンサー達にもその発想がなかったことは非常に残念です。

退団の皆様について(清水/渡辺/中島春/朝枝/小野田/加藤/土方)

6/23「アラジン」千秋楽は私が心から敬愛する清水裕三郎さんのアデュー公演ということもあり、ハンカチを何枚も持って行きました😭😭😭
舞台に立っているだけでも観客の視線を集める存在感があり、華を添えてくれる裕三郎さんの踊りと演技が大好きで、いつも裕三郎さんの舞台を見るのを楽しみにしていました。観客が絶対に見逃すであろうシーンでも役になり切って、物語に完全に溶け込む裕三郎さんは新国の宝ですし、これだけの迫力があるダンサーが退団してしまうだなんて本当に寂しいです😭
裕三郎さんのゴールドは3回見ましたが、一歩間違えればハロウィンのコスプレにしか見えないようなキンキラの衣装をバッチリ着こなして、ゴールドの金属感と煌めきを重厚に演じられていて素敵でした。踊りだけでなく、座って胸に手を当てて頭を下げるシーンなどもとてもエレガントで、裕三郎さんの踊りを見れば見るほどこれだけ芸達者なダンサーが退団してしまうことは新国の損失にしか思えず、悲しくてたまりません😭

清水裕三郎さんだけでなく、渡辺与布さん、朝枝尚子さんはゴールドとシルバーを踊られていましたが、重厚で華やかで、本物の王様と女王様が並んでいるかのような華やかさでした。踊りも曲に合わせて重厚な金属感を表現されているようで、とても見応えがありました。ゴールド/シルバーは退団者が3名いるということもあり、長年のファンもおそらく駆けつけたのか、演技後のブラボーと拍手が凄まじかったですし、それに値する素敵な踊りでした。

砂漠の風を演じられていた中島春菜さんと土方萌花さんはどちらも足が綺麗で、強そうな眼差しが印象的でした。土方さんはサファイアのお付きやプリンセスのお付きも演じられていましたが、砂漠の風とは打って変わってとても可愛らしかったです。
加藤朋子さんもプリンセスのお付きを演じられていましたが、華やかでどの演目でも目を惹くゴージャスな方でした。
小野田陽斗さんはくるみのネズミ軍団が面白過ぎて個人的にかなり注目していたのですが、今回もプリンセスの輿持ちや最後の龍持ちでも登場されていて、笑顔で楽しそうで、あまりに早い退団が残念と感じました。

主演陣について(福岡/小野/渡邊)

福岡雄大さんは今回は完全に庶民的なお笑い路線に走った印象です。洞窟で宝石をもらうシーンはもらった宝石の重さを演技で表していたり、ルビーの宝石を何個も取ろうとするなど取れる宝石は全部取っちゃおうというチャッカリ感を表現しており、客席は爆笑でした。1幕でプリンセスに出会うときは直前までリンゴを口にしようとしていて、それをプリンセスに渡すんかいと思わず笑ってしまいました😂
2幕でリンゴをもらったら、すぐにガッツリ食べ始めて、パドドゥ中も大きな一口で食べ続け、最後にももう一口食べるなど、宝石の件も併せると非常に欲望に忠実なアラジンで大爆笑でした😂

小野絢子さんは街中に登場するシーンで全員土下座していて誰も目を合わせてくれない寂しさを表現していたのが印象的でした(プリンセスは高貴な身分だから顔を見てはいけないという設定)。お花をもらって嬉しいけれどお礼を言っても相手が顔を絶対にあげてくれないなど、身分が高い女性ならではの悲しみが伝わってきて、プリンセスの寂しさを感じました。

渡邊峻郁さんは圧巻でした。軽やかで、まるで竜巻の中から出てきたようなキレの良い力強い踊りが印象的でした。ずっと飛んでいるかのような重力を感じさせない踊りも素晴らしかったですが、マグリブ人に囚われた時は苦しそうで、アラジンの元に戻れた時は超嬉しそうで、素直で気持ちのよいジーンでした。
峻郁さんのジーニーは踊りも素晴らしく、2幕のジーンのソロは圧巻でした。凄いなと思ったのが、テンポが速い音楽でも峻郁さんがジャンプする時にリズムがバシッとはまるよう、指揮者と密にコンタクトを取りながら踊っているように感じたことです。ただ振り付けをこなすだけでなく、ものすごく緻密に計算されているだろうなと感じました。
ちなみに峻郁さんはイケメンプリンシパルなので人気も高く、カーテンコールでは歓声が凄かったです。ジャンプしながら出てきてくれるなど、最後の最後まで役になり切ってくれて、観客を楽しませてくれました。余談ですが私のすぐ近くに峻郁さんのファン軍団がいて、峻郁さんが出てくるたびに「ギャーーーーーー😍😭😆」というような悲鳴に近い黄色い歓声が凄まじく、峻郁さんの人気の高さを感じました。今新国で一番人気かもしれないですね。

印象に残ったダンサー達について

1幕で守衛の部下に漫画のキャラみたく表情がくるくる変わる演技が分かりやすい人がいて、たぶん菊岡優舞さんです!(髭のせいで分かりにくい😂) 2幕でもシャーっと威嚇するなど、キャラが濃くてとても良いと思いました。
隣にいた上中佑樹さんも素敵でしたが、彼はどちらかと言えばエレガント路線で大人な演技という感じでした。上中さんの演技は良かったのですが、今回は雄大さんが庶民的なお笑い路線に振り切ってしまったので菊岡さんの漫画っぽい演技の方が舞台にフィットしていました。しかし、もっとノーブルにアラジンを演じるダンサーが主演だった場合、間違いなく上中さんのエレガントな演技は際立っていたと思いますし、私は上中さんの演技もとても好きです。
どちらも演技の方向性は違いますが、とてもよく考えられていたと感じました。

オニキスの佐野和輝さんは相変わらず忍者みたいで格好良かったです。佐野さんは本当に綺麗に踊られるダンサーで、見れば見るほど洗練され、品が良くなっているのが印象的でした。
オニキスと一緒に踊るパールの中で、飯野萌子さんがとても素敵で、華やかなだけでなく終盤には120°くらい上がった足を30秒近くキープされており、テクニックの強さを感じました。表情もわかりやすくて可愛いですし、もっと飯野さんが踊る姿を見たいと思いました。

あと、つけ髭と肉襦袢で誰だか分からないけど、2幕で1番最初に出てきて1番右側に座る裁判官役の方がとても良かったです。舞台に出てくるときの歩き方がアメリカのドキュメンタリーで見るような超太った人の歩き方そのもので、本当に上手いです。ふんぞり返って座る姿も面白くて、アゴを突き出していて偉そうな裁判官という雰囲気がコミカルに伝わってきました。お母さん役のダンサーとも絡んでいて、途中でウンウン頷いていたりなど演技が面白く、雄大さんの作り上げたお笑い路線の舞台にとてもフィットしていました。
(※6/25追記:頂いた情報によると、なんと森本晃介さんらしいです!高身長で踊りも綺麗なだけでなく、演技力もあるとは、天は5物を与えたんだな…。羨ましい)

新国立劇場バレエ団2023/24シーズンを見てきて

私は直塚美穂さんの入団をきっかけに新国立劇場バレエ団の舞台に通うようになりました。2023/24シーズンの開幕演目である「ドンキホーテ」では渡邊峻郁さんの美しいバジルや、森本亮介さんの躍動感溢れる踊りに衝撃を受け、さらに新国の舞台に通うようになりました。

今回のアラジンでは直塚美穂さんが渡邊峻郁さんと踊ったルビーが本当に美しくて鳥肌が立ちました。この2人を超える踊りは当分見られないと思いましたが、6/22ソワレでエメラルドを踊った小川尚宏さんは直塚/峻郁ペアとはまた違った衝撃を私に与えてくれました。

小川さんのエメラルドは柔らかくて止まることのないような振付がベースになっており、もちろん小川さんは滑らかに踊っているのですが、一つ一つのポーズがカチッと決まっていて、きちんとした基礎力というのか型があるダンサーだと感じました。若干緊張しているからかまだ硬さがあるようにも見えましたが、将来性と伸び代を感じさせてくれる才能溢れるダンサーだと感じました。小川さんのような将来性を感じさせてくれたダンサーは初めてで、また1人、とんでもないダンサーを見つけたという衝撃を受けました。

ちなみに小川尚宏さんについて調べてみたところなんとベルリンバレエ学校出身!バレエ学校公演のレポートを見たところヴィクター・カイシェタの隣にいる写真もあり、まさか同期!?そりゃ上手で当然ですな…😲 

今シーズンは開幕のドンキでベルリンバレエ学校出身の森本さんに衝撃を受け、同じくベルリンバレエ学校出身の小川尚宏さんに衝撃を受けてシーズンを終えるという、ベルリンに関連のある方の踊りに感銘を受けたシーズンでした。しかしベルリンバレエ学校は笑顔禁止という教育なのか…?いや、笑顔がトレードマークのカイシェタがいるからそれは無いか😂

次シーズンはベルリンバレエ学校出身のバレリーナも入団してくれないかな。。。それでぜひベルリンバレエ学校出身者同士で踊ってみて欲しいです。最近新国では女性の高身長化が進んでいますが、小川さんは高身長ですし、どんな女性とも組めそうなのでいっそ背の高いドイツ人が来ても大丈夫そう…🤔

来シーズンはどんな才能の持ち主に出会えるのか、とても楽しみです💕

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集