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バレエ感想「くるみ割り人形」新国立劇場バレエ団2024/12/22

新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」12月22日マチネは樋口響さんのトレパックデビューと李明賢さんの青年デビュー、直塚美穂さんと森本亮介さんの花のワルツをどうしても見たくて2日連続で通いました😊

李明賢(Myeonghyun Lee)さんは韓国国立バレエ団、ユニバーサルバレエ団、そしてパリ・オペラ座バレエ団で活躍し、2024年に新国立劇場バレエ団に入団されたダンサーです。
12/21初日で李さんは1幕のウェイター役や2幕の花のワルツに参加されていたのですが、特に2幕の花のワルツは鮮烈で素晴らしかったです。複雑な振付にもたつく人が多い中で踊り出すタイミングを絶対に外さず、華やかに音楽を表現していて惹きつけられましたし、彼以外は目に入らなくなるくらい鮮やかでした。
おそらくイーグリング版の花のワルツは相当キツイのだと思いますが、みんな必死の形相で踊っている中で李明賢さんはずっと満面の笑顔で、大変さを全く見せず優雅な踊りを見せてくれたことが印象的でした。技術がどうの以前に明るい表情で観客に美しく華やかな花のワルツを届けてくれました。表情だけでなく踊りも凄く、どんな時も絶対にもたつかずバシッと音を表現していて格好良かったです。踊りも綺麗なのですが、彼の真っ直ぐな足はオペラ座のダンサー達の柔軟で美しい足を思い起こさせてくれました。

青年/騎兵隊長は正直にいうと花のワルツほどの鮮烈さは感じなかったのですが、李さんは回転が得意なダンサーなのか音と一体化した回転を何度も見せてくれたことが印象でした。個人的には青年役として老人役のダンサーと踊る部分など、回転をこのようにコントロールして魅せるのかと新鮮で。李さんの存在は鮮烈で驚きました。

私は2021年に直塚美穂さんに衝撃を受け、2023年は森本亮介さんに衝撃を受けましたが、まさかこれほどの衝撃を2024年に再び味わえるとは思わなかったので嬉しかったです。李さんはまだ新国に染まりきってないからこその弾けっぷりがあって、私はあの鮮烈さが大好きなので必要以上に染まらないでほしいです😂

樋口響さんのトレパックデビューはずっと楽しみにしていたのですが、期待通りのフレッシュで素敵な踊りでした😊
トレパックはジャンプが多いこともあり、男性ならではのダイナミックなジャンプで魅せるダンサーは多いです。それはそれで格好いいのですが、前半に飛びすぎて最後はスタミナ切れが目立つダンサーが非常に多いのが現状です。しかし樋口さんはジャンプに加え回転が非常に得意なダンサーということもあり、最後の見せ場であるグランピルエットでは途中で手を上にあげながら3回転を入れるなど、最後の最後まで軽やかに見せ切ってくれたことが印象的でした。イーグリング版のトレパックというとジャンプで魅せてくるダンサーばかりでしたので、回転で魅せてくる彼のアプローチは非常に新鮮で、樋口さん自身の若々しさも相まってとても素敵でした。ぜひ来年も見れますように💕

12/22の直塚美穂/森本亮介ペアの花のワルツは、初日よりもさらに素晴らしくなっていて素敵でした🌸
直塚さんと森本さんの踊りを見ていて感じたのですが、この2人は大きな劇場で踊ることをきちんと考えて計算して踊っている人達だと思いました。新国の花のワルツはとても早くて複雑なのですが、どのパも絶対に端折らず、音を最大限使って直塚さんのラインの美しさを最大限観客に伝えている印象を受けました。
例えば1階と4階の観客は舞台からの距離が違うので、観客に音や映像が届くにはコンマの差が発生します。直塚さん/森本さんは遠く席の観客を置いてけぼりにせず、動きの残像が残るように、最後まで見せ切ってから次の動きに行っていたように感じました。私の推測ですが、日本の観客は野鳥の会のごとく双眼鏡を使ってダンサー個人を見ますが、ヨーロッパやロシアでは客席から何も使わずに舞台を見る観客が多いと思います(少なくともオランダは誰も使ってなかった😂)。彼らの踊りは4階の最後列から双眼鏡無しで見ている人にも伝わる踊りだと思います。

彼ら自身の踊りの美しさを見せるだけでなく衣装の見せ方も大変工夫されていて、スカートが裾だけ動くのではなく、腰からフワッと本物の花びらのようにはためかせて見えるように計算して踊っていたことも印象的でした。振付家や演出家の意図を大きな劇場でどう表現するかよく考えて実現していると感じました。

衣装や振付をどう表現するかってダンサーの力量がかなり問われると思います。以前Kバレエ「マーメイド」で石橋奨也さんが海のシーンで最初に登場したとき、衣装のはためきが素晴らしくて私は最初衣装が良いから海の世界に引き込まれたと思いました。しかし後日別のダンサーを見たらそうではなく、石橋さんの工夫の力量によって観客を海の世界に引きずり込めたのだと思いました。
それと同じく今回の花のワルツで、みんな踊りこなすのに必死で試験前の受験生のように決死の様子の中、あそこまで花びらのように衣装をはためかせ、ワルツの優雅で華やかな世界観を表現していたのは直塚さんと森本さんの力量と工夫があったからだと思います。

直塚さんの伸びやかなラインを完璧に見せ切ったことも素晴らしかったし、花のワルツの衣装をあそこまで花びらのように見せていたことも感動しました。あの早い動きで直塚さんをあそこまで美しく見せるとは、直塚さんも凄いけどそれをサポートした森本さんも凄いと思います。森本さんは品が良く、独特の格調高さがあるダンサーですが、直塚さんと一緒に踊っていると華やぎが増していてとても素敵でした。それぞれ実力と実績のある2人がお互いの実力を引き出し、お互いを高め合っているような、そんな印象を受けました。
実は初回は若干スムーズに行ってなさそうなシーンもあったのですが、2日目には完璧に仕上げてきて、初回から24時間も経っていないのにこれだけ仕上げてくる直塚/森本ペアの実力と底力は凄いなと舌を巻きました。

直塚さんで思い出しましたが、彼女の雪のソリストを見てビックリしました。彼女と同じくらい体が柔らかい人やスタイルが良い人はいるでしょうが、あの上半身の優雅さと空中で静止する美しいジャンプは彼女ならではの美しさで本当にため息ものです。素晴らしいバレリーナが東京で踊ってくれることに感謝❄️

飯野萌子さんの蝶々(クララのお姉さんルイーズ)役もとても素敵でした。華やかで軽やかで、なぜ彼女が金平糖の精に配役されないのか本当に謎です。
余談ですが新国立劇場では公演期間に舞台写真を販売しているのですが、小学生くらいの女の子がお母さんに「写真買ってー😊」と言って飯野さんの蝶々の写真を手に取っていたことが印象的でした。飯野さんはとても素敵なダンサーで、大人の私が見てもとても綺麗なのですが、子どもの目から見ても憧れるような素敵なダンサーだよなとしみじみ。もっと彼女に役が付いて、今後もたくさん飯野さんの舞台を見れますように。

2024年入団の東真帆さんも李明賢さんと同じくパリ・オペラ座で踊っていた美しいダンサーです。
雪の精の白いチュチュが似合っていて、彼女の美しいスタイルが引き立ち、上品さが際立っていたことが印象的でした。技術面の正確さだけでなく雪のシーンで全員で途中で円になるところや、最後に回りながら去っていくシーンとか、ポールドブラに独特のタメがあって音楽的でとても美しいバレリーナだと思いました。
花のワルツも東さんはアラベスクが毎回直角以上に上がっていて、衣装が花びらのようにフワッとしていて本当に綺麗でした。どんなポーズも美しく優雅で本当に素敵でした。 「眠れる森の美女」のときも思いましたが、彼女は観客の「美しいバレエを見たい」というニーズを理解して形にしてくれるダンサーだと思いました。

中国の踊りは福田圭吾さんのキメッキメの京劇ポーズが大好きで、でもあのレベルで出来る人は他にいないと思っていたのですが、登場時に右側の男性のポーズがめちゃくちゃ決まっていて圭吾さんが来たかと思いました。バランス崩すシーンもあったけど素敵で、誰だろうと思ったら最推しの佐野和輝さん!今後のポスト圭吾さんは誰かなと思っていましたが、まさに彼こそがそうであると証明してくれました😊

こんな感じで色々楽しく見てましたが、金平糖が全てを台無しにするという…。王子もびっくりしただろうな…。

後日談はまた別記事にて!

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