「No.8」「きっとヴェネツィアに行きたくなる!」カナレットの「景観図(ヴェドゥータ)」
こんにちは、かずさです!
皆さんは、「空想旅行」ってしたことありますか?行きたい場所を決めて、Booking.comで宿を探してみたり、Skyscannerで航空券を探してみたりして「実際に現地に行く」風に計画を立てたりすることです。家にいる時間が多い中、行ってみたい場所について考えるのは気分転換になるのでおすすめです!今日はぜひ、そんな「空想旅行」の目的地に選んで欲しいイタリアのアートを紹介します!
作品紹介
今回の作品はジョヴァンニ・アントーニオ・カナールの《キリスト昇天祭の御座舟の帰還》です。
1733-1734年 油彩画 76.8cm×125.4cm イギリス、ロイヤル・コレクション
抜けるような青い空のバックに、ヴェネツィア総督府であるドゥカーレ宮殿が映えます。目の前の海にはたくさんのゴンドラが行きかい、船頭たちの活気が聞こえてきそうです!この絵を描いたカナレットはどんな人なのでしょうか?作品を見ていく前に簡単に解説します!
ジョヴァンニ・アントーニオ・カナール(1697-1768)
18世紀イタリアを代表する風景画家で、カナレットと呼ばれています。再現度の高い写実性、光や大気の表現の巧みさが特徴で、開放的な風景を描きました。彼の名声はイタリアだけでなく、イギリスを始めとしたヨーロッパ各国まで轟いていました。故郷のヴェネツィアやローマ、イギリスの風景を描いた作品(景観図:ヴェドゥータ)で知られていますが、空想上で構成された風景画である「奇想画(カプリッチョ)」もたくさん残っています。
カナレットの作品は、死後イギリスのロマン主義の画家であるウィリアム・ターナーの様式構成に大きな影響を与えました。
日本でカナレットのことがテレビで取り上げられることは少ないですが、ディズニー・シーのメディテレーニアンハーバーにある「リストランテ・ディ・カナレット」は彼にちなんで付けられているので、聞いたことがあるかもしれません。
ちなみに、ヴェドゥータ(景観図)とカプリッチョ(奇想画)には他にこんな作品があります。
《南西の角から大聖堂を望むサン・マルコ広場》(ヴェドゥータ) 1756年 油彩画 46.4cm×38.1cm イギリス、ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵
《ピアツェッタに置かれたサン・マルコ大聖堂の青銅馬》(カプリッチョ)1743年 油彩画 108cm×129.5cm イギリス、ロイヤル・コレクション
上のヴェドゥータはサン・マルコ広場の右側から望んだ景色です。この作品の右側には「カフェ・フローリアン」というカフェが描かれているのですが、そこは現在でも営業しています。
また、下のカプリッチョは描かれた当時は、想像上の風景だったのですが、現在ではサン・マルコ大聖堂の前に4頭の青銅の馬が置かれているため、現実の景色となっています。空想の絵が現実の景色になってしまうなんて凄いですよね!
「ヴェネツィア人」の血が騒ぐ⁉センサの祭り!
上の解説でも書いた通り、カナレットはヴェネツィアで生まれ育った生粋のヴェネツィア人だったのですが、《キリスト昇天祭の御座舟の帰還》にはそんなカナレットがワクワクしていたかもしれない風景が描かれています。
ヴェネツィアでは毎年、イースターの40日後の木曜日にキリスト昇天祭を行います。イタリア語では、「昇天」を「Ascensione」というのですが、ヴェネツィアの方言では「Sensa」と呼ぶそうです。この祭りは、10世紀頃に始まり、ヴェネツィア総督が、自分たちに富を与えてくれる海に忠誠を誓い海に向かって指輪を投げるというものでした。現在でも、伝統的な衣装を着た人々の乗った船が海上を覆ったり、レガッタのレースが行われたりとヴェネツィアを代表する祭りです。
これは2016年の記事ですが、とても活気がありますよね!イースターから40日後というあいまいな感じなので、毎年開催日が異なるようですが、大体5月頃に行われています。
日本でも、京都の祇園祭や東京の神田祭など昔から地域の人々に親まれ大切にされている祭りがありますが、センサの祭りもヴェネツィアの人々にとってそういった存在なのだと思います。
もっと賑やかなバージョンもあります。
The Bucintoro Returning to the Molo on Ascension Day after the Ceremony of Wedding the Adriatic 1730年代 油彩画 156.3cm×237.5cm イギリス、ボウズ美術館蔵
カナレットはこの2作品の他にもセンサの祭りをモチーフにした作品を制作しています。彼にとっても故郷の大切な風景だったのでしょう。
今回は、活気溢れるカナレットの風景画を取り上げてみましたが、いかがでしたでしょうか?ヴェネツィアといえばカーニバルが有名ですが、こんなに華やかならセンサの祭りにも行ってみたくなりますよね!ぜひ、「空想旅行」の目的地に、そして現地に行ってぜひ肌で体験してみてください!
次回は、中国のアートを紹介します(o^―^o)
画像は全てパブリック・ドメイン、また私が撮影したものを使用しています。
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今回参考にした本、おすすめの本をまとめてみました。ぜひ、おうち時間に読んでみてください!
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