「No.4」「彫刻、下から見るか、横から見るか」大英博物館の《ミトラス神像》
こんにちは、かずさです!
「おすすめ&好きなアート作品を紹介したい!」と思い、このnoteを初めてみたのですが、1回目から3回目までは「おすすめ」っぽいことがあまり出来ていなかったので、今回はおすすめの見かたを紹介します!
今日の作品は、イギリスの大英博物館に所蔵されている《ミトラス神像》です!
100-200年(イタリア、ローマ) 大理石 H102.9㎝×W104.4㎝
この像は世界史の教科書にも載っていているので、ご存知の方も多いと思います。教科書の写真も上の写真と同じように正面から撮影されたものです。ミトラ教という宗教に関係する像なので、まずはミトラ教とこのミトラス神像がどういった場面のものなのかついて簡単に紹介します。
ミトラ(ミトラス)教
古代ローマで、隆盛した太陽神ミトラスを主神とする密儀宗教です。元々、インド・イランで信仰されていたものが、ヘレニズム期に地中海世界に入った後に形を変えたものとされることが多いです。 紀元前1世紀には牡牛を屠るミトラス神像が地中海世界に現れ、紀元後2世紀までにはミトラ教としてよく知られるものとなりました。
ミトラ教の中には、厳しい階級制があり、又、主神であるミトラスは無敵だと考えられていました。その考えがローマ軍で受入れられ、隆盛につながったようです。しかしキリスト教が帝国内で勢力を拡大すると、ミトラ教は廃れていってしまいました。
この像は、ミトラスが牡牛を殺す場面を表しています。そして、牡牛の傷から流れ出る血を犬と蛇が舐め、牡牛の下からサソリが攻撃をしています。文字にすると結構グロテスクな場面を表していますが、これはミトラ教の考え方から来ています。ミトラ教は、牡牛を殺す行為は光と命の再生を象徴するとしていました。信者は、儀式の際にパンとワインを牡牛の肉と血に見立てて口にしていました。
あれ…?この考えどこかで聞いたことありませんか?キリスト教のミサでの儀式にそっくりですよね。当時のキリスト教も「すんごい似てる…!」と思ったようで、脅威を感じていたそうです。
「《ミトラス神像》、下からみるか、横からみるか」
映画のタイトルをほぼそのままにもじってみましたが、今日の本題でもあります。写真の《ミトラス神像》の顔を見てみてください。なんだか顔が縦に間延びしているように見えませんか?「イケメンなんだけどちょっと…顔長いよね」みたいな…。上でも書いたように、この像は高校の教科書にも載っているのですが、私はこの顔が妙に長いことがとても気になっていました。
ちなみに斜め上位から撮影されたものもあります。
正面から撮影したものと比べて、顔が少し違って見えるのではないでしょうか。正面からのものは斜め上辺りを見ているようににも見えますが、この写真では正面を向いているようにも見えますよね。この像は、元々どのように設置されていたのでしょうか?それが、この顔の造りの謎のヒントになりそうです。
2015年に、東京で「大英博物館展」が開催されました。NHKでも特別番組も放送されていたため、覚えている方もいらっしゃると思います。この像は、その展覧会でもイギリスから来ていたのですが、そこでは台に乗せられていて、ミトラス神が観賞者を上から見下ろすような形で展示されていました。
「え…凄いイケメンじゃん」と衝撃を受けたのを覚えていますが、薄暗い中でミトラス神を見上げるのは凄くときめきました笑。決して大きな像では無いので、信者たちの目線よりも下に設置することや、同じ目線に設置することはあまり想定されていなかったのではないでしょうか。でも、よく考えてみると、キリストの磔刑像にしても仏像にしても信者が見下ろすということはほとんどありませんよね。このミトラス神像も儀式の際に、信者たちよりも高い位置から人々を見下ろしていたのではないでしょうか。顔の造りの不思議は、下から見ると像が最も美しく見えるようにという制作者の考えの反映された結果だと思います。
今回は彫刻作品を取り上げてみましたが、いかがでしょうか?見る位置によって顔の印象が変わる像なんて不思議ですよね!イケメンなので、何度も見たくなる作品です。大英博物館に所蔵されているので、ロンドンに旅行する際はぜひ会いに行ってみてください!
次回は、中国のアートを紹介します(o^―^o)
写真はパブリック・ドメイン、大英博物館展のポストカードのものを使用しました。
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今回、参考にした本、おすすめ本を紹介します。おうち時間にぜひ読んでみてください!
『大英博物館展 100のモノが語る世界の歴史』筑摩書房
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