肉じゅばんの珍獣にひとめぼれした日。
生まれてから二十歳まで住んでいたアパートは、目と鼻の先の距離に【芸者さんの置屋】があった。
自分の部屋にいても三味線の音や長唄が聞こえてくるのが普通で、まだ小学生にもなっていない私に「あなたも大きくなったら芸者さんになりなさいよ」と、置屋の女将さんは言った。
芸者さんにはならなかったしアパートもとっくに引っ越してるけど、三味線や長唄や、おしろいの匂いが心象風景として残ったのは間違いなく、ほのかな憧れの始まりだった。
中村屋ファミリーとの出会い幼い憧れとリンクしたのかは知ら