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【名盤伝説】 “Camel / Breathless” 永遠のエコーが響きわたる叙情派プログレの名盤。

お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。UKプログレ・バンドのキャメル『Breathless (邦題: 百億の夜と千億の夢)(1978)です。

クラシック(古典的)な要素を取り入れているのにプログレッシヴ(進歩的)とはこれ如何に。個人的には永遠の謎のプログレッシヴ・ロックというジャンルです。

イエスピンク・フロイドキング・クリムゾンEL&Pジェネシスあたりが有名です。ただし、ちょっとでもこの世界にハマると必ず名前が上がります。

1972年に結成し、アルバムAB面全曲通しの組曲『Snow Goose』(1975)が代表作かと思いますが、そんなバンドの6枚目がこのアルバムになります。邦題は全く謎です。また収録曲のほぼ全てに邦題がついていますが、放置しておきましょう。

この手のバンドの得意技、数々のメンバーチェンジを繰り返し、この作品ではアンドリュー・ラティマー(G, Vo)、ピーター・バーデンス(Key)、リチャード・シンクレア(Bs, Vo)、アンディ・ワード(Drs)、メル・コリンズ(Sax)が参加しています。

収録曲
M1 Breathless
M2 Echoes
M3 Wing and A Prayer
M4 Down on the Farm
M5 Starlight Ride
M6 Summer Lightning
M7 You Make Me Smile
M8 The Sleeper
M9 Rainbow's End

アルバムタイトル曲M1はギターとシンセのユニゾンによる美しいアルペジオのイントロが印象的。キャメルの音楽には、キング・クリムゾンのような過激で破壊的な楽曲はありません。メロディアスで叙情的という表現に尽きるという印象です。

続くM2は彼らの代表曲の一つ。7分にも及ぶ大作で、ボーカルが入るまで4分近くインストゥルメンタル・パートが続きます。こうした延々と演奏を聞かせて、歌はほんの僅かという構成はプログレには多いですね。しかしその演奏部分が劇的で、しかもかなりロックしていて良いのです。

M6も人気曲。実はキャメルは、高校時代のプログレオタクな友人があれこれ勧めるものの、あまりにコアな話題に適当に流して聞いていて(ごめんなさい)、名前くらいしか覚えていなかったのです。大学のバンドサークルに入り、4年の先輩バンドがキャメルを主なレパートリーとしていて、その中にこの曲がありました。長身・長髪のギターの先輩を見て、あぁ大学生のバンドサークルってやっぱり凄いなと、萎縮していた体育会上がりの当時の私でした。ほぼ完全コピーで目の前で奏でられるシンセの音色にも目を輝かせながら練習を見学させてもらっていました。今でもこの曲を聴くと、そんな先輩達のことを思い出します。

M7はある意味キャメルらしい独特のリズムの曲。複雑な構成に乗せる美しいコーラスが楽しいです。

M9の叙情的なバラード。こんな曲はある意味でプログレの特徴的な構成かと思います。キャメルはそこまでではありませんが、どんなに激しい曲が多いバンドのアルバムでも、1曲くらいはこんなバラードが必ずありますね。

キャメルの思い出 その1
先に語った先輩バンドが卒業により解散した後に、同級生の中からこのキャメルをレパートリーとするバンドが新たに組まれます。そこにはあの角松敏生がギターで参加していました。当時、他の先輩の達郎コピーバンドに所属していた彼でしたが、同じ学科のサークル仲間とプログレバンドを組んだのです。先輩バンドとの曲の被りが気になるところではありますが、そんな彼らのレパートリーに「Echoes」がありました。バンド全体のアンサンプルというよりも、勢いで聴かせるって感じでした(笑)。何せ角松自身が原曲を全くコピーせずに、テーマの一部だけであとはほとんどアドリブという、まさにプログレッシヴなバンドでしたから(苦笑)。

当時、そんな彼らが真冬の藤沢市内でライブをやるというので観に行きましたが、普段の練習には遅刻の常習犯だった角松が、時間を間違えたと、朝一番で小雪舞う極寒の中で待っていたというエピソードを思い出します。

余談ですが、このnoteの記事を書くにあたり、ネットであれこれ検索していたら、そのライブを見たという方のブログを発見してしまいました。キャメルのコピーバンドに角松がいたとの記述を見て、ネットの凄さを実感しました。その記述の中にドラムが初心者でつらそうだったとのコメントもありました。その彼が実は誰なのかは友人のよしみで伏せておきます(苦笑)。

キャメルの思い出 その2
先輩バンドのおかげでキャメルに目覚めた私は、1980年の来日の時には今は無き渋谷公会堂に見に行きました。

私が見た翌日の公演の音源がYouTubeに上がっています。その時のオープニングが「Echoes」でした。客殿が落ちた後、何やら不思議なSEから突如イントロが始まります。中間の演奏部分のアレンジが、原曲よりもさらに感動的な展開となっていて大興奮 !!。ぜひ原曲とライブテイクを聴き比べてみてください。

アルバム完全再現も捨て難いのですが、個人的にはこうした大胆なライブ・アレンジは大歓迎です。ライプの醍醐味だとも思います。

その時のアンコール曲、コンサートのMCでは「誰も知らない曲 (Nobody Knows)」なんて紹介していましたが、ラーセン・フェイトン・バンドのニール・ラーセンの曲だよなと思わずツッコミを入れていた私達でした。

そんなキャメルは、オリジナル・メンバーのピーター・バーデンスが2002年に死去。アンドリュー・ラティマーも病に冒されたものの何とか復帰して、キャメルとしての活動を再開しています。ところが2023年4月に予定されていたデビュー50周年公演は、アンドリューの腰の不調により中止となりました。彼も今年75歳になるので、ともかくお大事に。そしてまた元気な姿をステージで見せてほしいと願うばかりです。


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