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呪いの「怪文書」のプレゼント
わざわざ世界に発信しないほうが良いとは思うのですが、怪文書を作成しました。あの怪文書だ。
発端もある。昔からの女友達が仕事で酷く困っていた。だから「いよいよとなったら僕が『よくないよ。』って怪文書を送りつけるよ」と言ってみたら結構笑って気に入ったらしく、それからことあるごとに「いつかその上司に怪文書送るから言ってね」と伝えてきた。
そして前々回の誕生日くらいから、プレゼントはお互いに購入できるものではなく手作りの何かにしようとなんとなくなっていて、女友達の誕生日はもうすぐだった。今や!と思った。いざというときのための怪文書を手渡ししたら喜んでくれるかもしれない。そして翌日に着手した。
それっぽい紙を選び(罫線がないほうがそれっぽかった)、ポストに投函されてたチラシから文字を切り取り、「よくないよ。」という文章を作った。年季が入っているほうが怖そうなので、醤油を垂らしてみたり、しわくちゃにしてみたり、霧吹きをかけたりした。
ありとあらゆる道具を駆使したので、乾くまで随分と時間がかかりそうだなぁと思い、洗濯バサミでハンガーに吊るしベランダの物干し竿に引っ掛けた。
そしてインターホンが鳴った。
熱中しすぎて時間を忘れていたが、今日は恋仲になりたい女の子とお家で映画を見る予定だったのだ。私はハサミとか糊とかの道具を40秒でクローゼットにぶち入れ、彼女を家に招き入れたーー。
オチとかはもうない。それ以上でも以下でもない。恋仲になりたい女の子に、普通にベランダに干してある怪文書が見つかった。本当に最悪だった。
怪文書には「よくないよ」と書いてある。私は、それはお前の時間感覚の欠如とユーモアのセンスのことだよと怪文書を呪った。一応女の子に事情は説明したけど、説明しても「なんだ、ただの怪文書か、よかった」とはならない。
また一つ、恋を失ってしまった。
ーーあと3週間くらいしたら、私は女友達にちょっとしたプレゼントと怪文書のプレゼントを渡すことになるだろう。その人はとても独特な人なのできっと笑って喜んでくれるはずだ。
でも多分、そのときには怪文書本来の力と、恋を失った私が怪文書に掛けた呪いで、効力はすさまじいものになっているだろう。
あまりに呪力が強そうだから、燃やしてしまおうとも思うが、それはそれで怖い気もするのでまだ何もしていない。どうしよう。