子どもに教えられたこと。子どもがいてもいなくても私は私なんだった。
クリスマスの朝に、クリスマスプレゼントを見つけた子どもたちのリアクションを見る体験は特別だ。
いつもママに張り付いてすぐ起きない2歳児も、トミカの駐車場の箱を見て「ぶーぶー」と言いながら箱に張り付いている。
7歳児は、「いつサンタさん来たんだろうね!」「◯◯ちゃん(弟)にはそれをお願いされたんだねぇ!」サンタ談義をしている。
サンタさんをしばらくは信じている子どもたちのリアクションを目を細めて見守る。
サンタさんは大人にもキラキラした時間をたくさんくれる。そう思いながらツリーとクリスマス飾りをしまい始めた。
いつからか、子どものいる人生が始まりようやく私は一人前になれる気がしていた。
けれど何となくそれも違うと思うことがあった。
🎄
年内最後の宿題を小学生の息子にさせてちょっとしたバトルになった。それは、今年の行事の振り返りで、がんばったことや楽しかったことや来年頑張りたいことを書くもの。息子曰く「何を書くか思い浮かばない」。なかなか書けずに時間だけ過ぎる。
私は徐々にイライラしてきた。
すでに記載のあった「がんばりたいこと」を読み上げて、これはがんばれたのか?それを書けば半分終われるよ!と助け舟を出す。
息子は「あ!そうか!」と閃いて、がんばりたいことをがんばった趣旨の文を書き始めた。終わったらすかさず「じゃあさ、何が楽しかった?」そう聞くと、欄を埋めようと息子が鉛筆を走らせ始めた。いいぞ!
最後に「何をがんばりたい?」とたたみかけた。そこからが地獄だった。
わかんない!と放り出してゲームをし始めた息子に必死に語りかける。息子が考えそうなことを挙げていく。「それだ!」好反応が返って来たので心の中でガッツポーズをする。しかし、息子は再び鉛筆を走らせ止まる。何やら途中で間違えたようだ。「思ってたのと違う」半泣きで消しゴムで消して忽ちプリントがぐちゃぐちゃに。また、こうかな?ああかな?と、息子が納得しそうな選択肢を上げ始めた私も、再びイライラが募る。
プチっと頭の中で音がした。
「とにかく書くんだよ!」
「上手に出来るかは関係ない、とにかく書くの!」
「何も書かないと、考えがない、そこにいないのと同じだよ!」
「本当に何を考えていたか誰にもわからないんだから、何でもいいから書くの!書いて書いて書きまくるうちに、考えていたことを書けるようになるから!まず書く!内容の良さは二の次だよ!まずは文章を書けるようにならないと!」
一体誰に話しているのだろう?
相手はまだようやく字を書き始めた一年生。
それなのに、私はなぜこんなに、熱く、「書け!書くんだ!」と捲し立てているのだろうか?
息子は熱弁する私に呆気に取られ、そして怒りながら最後のひと文を書き上げた。
私は、自分の中の、「書くことにより自分の存在を確かめること」へのこだわりに初めて気づいた。
子どもの頃、書いたものを褒められるのが嬉しかったし、書くという行為を重ねることが自信のつけ方だった。
書いている限り、私はここにいる。
そう思って生きていたことに私は今更気づいた。
あと一つ強烈な記憶がある。
小学生の頃、クラスにやんちゃな男の子がいた。
彼は、宿題はしてこないし、授業に参加していないこともあった。
とある作文を授業で書いて、参観日にそれを読んだことがあった。彼は作文を書かず、参観日には、何も机の上に置いていない彼は順番が来ても立ち上がらず、隣の席の子が立ち上がって作文を読み始めた。その瞬間、彼のお母さんは涙を流して教室を後にした。
そのお母さんの嗚咽と後ろ姿をずっと覚えている。
書くことは存在すること。
私は、ずっと、小さな存在であっても、何らかの方法で自分を世界のどこかに置いておきたいと思っていたのかもしれない。
別に書く以外でも、声でも音楽でも作品でもスポーツでも何でもいいのだと思う。ただ、学生のうちは書いたものでどんな人かを図られる機会は多い。多くは話さなくても、強く物語る子、温かさで周りを包む子、空気を切り拓く人子たちがいる。
いつしか、私は、書くという表現を拠り所にして来たんだと思う。
子どもに接してたまたまそれに気がついた。
子どもたちを見て「個性のかたまり」と思って来た。反対に自分は個性のないつまらないただの大人だと思って来た。
けれど、どうやら、子どもがいるかに関わらず、私もまたひとりの個性ある人間で、単体でもこの世の一部を構成している。
自分の個性を認めたら、不思議と「納得するまでは書かないでいる」息子の個性にも柔らかな眼差しを向けることができる気がして来た。
まぁ、場数は大事なので、なんとか書く練習はしてほしいけど…!
🎄
私の小学生のクリスマスプレゼントで印象に残っているのは百人一首。おしゃれでもないしはやってもいなくて、別にいらないのに!と思っていた期間が長かったけど、あれは書き物が好きになったきっかけの一つだったのかもしれない。
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