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vol.1【博物展】古代中国と兵馬俑展(兵馬俑色のネイルで)

1. 兵馬俑ファッションで出かけよう。

 お正月が明けて初めての週休。仕事始めの週を終え、だらだらとこたつで猫と暮らしていたが、そろそろ行動せねばと思い立って猫をどかす。目当ては兵馬俑展。年内は割と美術展の観覧が多く、ここらで少し骨太の考古学っぽい博物展に参加してみることにした。

 さて、今日はどんなメイクで参加するか。兵馬俑っぽいメイクってなんだろ。というか兵馬俑って何色?風化した黄色?灰色?じゃあ、最近流行りの白湯メイク(うっすいベージュな感じのメイク)で行くか。ネイルはグレージュにして・・・。よし、靴も薄ベージュにして砂感を出そう。といった感じで兵馬俑イメージのファッションをし、兵馬用展に出かけることとなりました。会場で兵馬俑みたいな色の女がいたら私です。

ムーングレージュのネイル。兵馬俑をイメージしたけど、実際の兵馬俑は黄色味ですね( ;∀;)

 上野の森美術館は現代アート展をやっている印象が強いが、今回は珍しい博物展。

 13:30入場で、入ってすぐの小さなホールから壁沿いの階段を登って二階の展示室から展示がはじまっていた。一段登るごとに、これからどんな空間が広がっているのか想像してワクワク。始皇帝の玉座への階段を上がってる気分。

2  古代中国の遺産はなんか可愛い。

 まずは小さい展示室で、開催のご挨拶や秦という国の歴史についての解説パネル。この時代の焼き物の破片等が中心。
 パネルでこの時代に中華に存在した国々の勢力図を見る。世界史は悠久の群像劇を見ているようで最高に好きだが、中国史はさっぱり覚えられない。特に群雄割拠時代。ヌルハチくらいまで来ると、国としてまとまっててなんとなくわかるけどね。ヌルハチ。名前が好き。それにしても、あの広大な黄砂の舞い散る大地で何千年も勢力争いを繰り返してたんだな〜。黄色い砂はそんなこと関係なく、今も変わらず吹き荒んでいるけど。うーーんロマン。

 虎の姿が彫ってある石板。身近にいる動物を彫ったらしい。身近に虎がいる世界線はかなり恐い。日本人で言うところのクマやオオカミみたいなものだろうか。怖いけど力強さの象徴として。そういえば、中国の動物といえばパンダだけど、パンダを形どった焼き物とか紋章とかないなあ。竜とか虎とか鳳凰、麒麟とかはよく聞くけど。玉座にパンダ彫ってあったらすごく可愛いのにな。グリーンランドとかって、シロクマの紋章だった気がするし。

 鑑賞者の長い列はとろとろ進む。次の展示品を鑑賞するまでのこの時間って、昔は待ちぼうけって感じだったのだが、展示品に思いを馳せるにピッタリな時間だと気付いた。例えば、「虎の石板可愛かったな〜、あ、そういえば上野動物園のベンガルトラってまだ元気なのかな〜、帰りに寄って、甥っ子へのお土産にゴリラチョコ買って行こうかな・・・。」とか脱線していくのも、また楽しい感じ。

 次の部屋は陶器などの器が中心。私の動物かわいいセンサーが働いたのだが、この部屋の器、動物が器を抱えてる系の脚の作りが多い。可愛い。いまでも猫の取手のマグカップとかあるけど、実はこの時代と考えてること一緒だったりしてね。

 お次の小部屋は前漢時代の兵馬俑。入って左側のケースに4、50センチほどの小さな兵馬俑が並べてある。秦時代ほどの大きな兵馬俑の作成に回す財力はなかったのかな。漢は時代的には秦よりも時代が下るのだが、メインが秦の兵馬俑なので、前漢の兵馬俑を早めにお披露目した様子。

 まったり展示ケースを見て回り、目を惹かれたのが犬の俑。「野犬」と「飼犬」の同じくらいの大きさの2体の俑が展示されている。この二つの犬はよく似ているのだが、よく見ると細かい点が結構異なる。野犬の俑は引き締まったボディと潔く真っ直ぐ落ちる尻尾、そしてキッと凛々しい口角の勇しげな表情をしてるのに対し、飼い犬の方はやや豊満なボディに愛くるしくクルンと上がった尻尾、飼い主がいる事の喜びを表すように口角をあげてほほえんだ表情をしている。ここまで表情の違いを出してあげることに、犬へのリスペクトを感じた。大昔から野犬は野生の象徴、飼い犬は人間のパートナーって感じだったんだろうな。可愛いぞ、漢の犬。
 ついでに、漢の時代の農家のお父さんとかも自分の家の犬が可愛くて、おはよう〜ワシャワシャとかしてたのかと思うと、なんかこう、すごく可愛いぞ漢の人々。

 結構歩いて疲れてきたので小部屋の外の椅子でちょっとブレイク。ぼんやり来場している人たちを眺める。今日はご年配の男性、若い男性が多いような気がする。三国志とかキングダムとか、中華の戦い的なもの、好きな男性多いもんね。ちなみに私は横山光輝の三国志読もうとして、桃園の誓いで挫折した過去があるぞ(1巻)。だって顔がみんな似てるんだもん横山光輝。

3  大迫力の兵馬俑。お腹も出てるけど。

 さてそろそろ本日のメイン、秦時代の兵馬俑フロアへ。
1階に降りる階段と小ホールを経て、全体的に暗色のお部屋に。階段を降りるのが、兵馬俑坑に降りていくようで、ちょっと冒険気分湧いて、楽しい。まちかまえていたのは始皇帝陵の陵墓の西、銅車馬坑から見つかった2号銅馬車のレプリカ。圧巻。当時の馬車の形が非常に写実的に表現されている。4頭立ての豪華な馬車。これに乗って始皇帝は統一した秦の国中を回ってたのだろうか。普段農村の何もない風景を見てる農民から見たら神かなんかだと思っちゃう。

 そしてこれがうん前年の時を超えて完璧に近い形で出土したのがまたすごい。日本でこんなの発掘されたら国宝級どころか世紀の大発見というか。なんかこう、中国のスケールの大きさと歴史の深さを感じた。しかもこれ、1/2サイズのレプリカ。本物はもっと大きいらしい。見てみたいけど、ここまで緻密に作り込まれていてさらに大きいとなると、迫力ありすぎて怖いかも。異界に連れていかれる〜。
 ちなみにこのレプリカといい感じの位置で写真が撮れるカメラが会場に設置してあり、たくさんの親子連れが写真撮っていた。たしかにこれはすごい記念になる!うん、でも、なんか、面白かった。メインココ!ココ!これすごいでしょ!写真取っとき!カメラ置いとくから!みたいな企画側の意気込みが伝わってきて、昔の観光地の特設写真スポットみたいでちょっと面白かった。そのセンスすき。

 そしてついに秦の兵馬俑達。
 壁面は兵馬俑坑の発掘現場をイメージした壁紙で、臨場感たっぷり〜。
 え、でっかい。が一番の感想。台座も含めた高さなのかもしれないけど、全体的な高さが170〜180㎝くらいある。兵馬俑の凄さの一つはこのサイズ感なんだろうな。前に見たフェルメールと17世紀オランダの絵画展の時もまず印象に残ったのは家族の肖像画を描いたとても大きな絵だった。すごく単純だが、私の中では「なんかデカイ」が心奪われるキーワードのようだ。でっかいことはいいことだ。心がでっかくなった気になる。今日はこの兵数体の展示だけど、実際の兵馬俑坑にはこのでっかい兵が何千体もいるわけで。ちょっと、敵だったら戦意喪失する。迫力。
 細部は眉間の皺や服の皺まで詳細に彫られていて、写実的。着物のたるみのせいかもしれないけれど、ちょっとお腹でてる兵とかもいて、親近感もあり。同じポーズして写真を撮ってみた後偉い人(将軍)の兵馬俑だと分かった。大変ご無礼いたしました将軍殿!ともにダイエットしましょうぞ!
 作成された当時は着色されていたと言うから、本当に人間がそこにいるみたいだったんだろうな。(ハムナプトラ3ではキレッキレの動きを見せてくれるぞ。オススメ)
 数千体のこの兵達が守るその向こうに、始皇帝は実在したんだなあって想像する。始皇帝ってさ、不老不死の薬を探していたり、個人的には半分神や仙人みたいな伝説上の人ってイメージがあったけど、兵馬俑みてたら、確かに実在したんだなってすごく感じる。

戦に勝利した後のビール、美味しいですよね!お腹も出ちゃいますよね!

4  現代に戻る。

そろそろ旅の終わり。優しそうなお姉さんが出口へ案内してくれる。最後の門を潜って、あ〜、古代中国の旅から現代に帰ってきた〜。グッズ売り場のコミカルな兵馬俑がかわいい。兵馬俑って、テラコッタ.ウォリアーっていうのね。テラコッタって粘土だよね。レンガみたいなくすんだオレンジ色の印象があるけど。ふーん。

 外に出るともう夕暮れの橙色の、それこそテラコッタみたいな色の光が低く鈍く差していた。2時間くらいは見ていたみたい。夕焼けを見ながら上野駅へ歩く。ぼんやり今日の展示を振り返る。

 兵馬俑たちは中華の抜けるように青い空、乾いた大地、舞う黄砂。その土の下から幾千年の眠りから目覚めたのか。時の大河は悠久だなあ。彼らが守っていた始皇帝の記憶に、ちょびっと触れたような展示だった。またどこかで兵馬俑とツーショット撮れるといいな。楽しかった。

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