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格好わるい心の物語〜 落下する夕方 過去雑文





この小説のあとがきで
江國さんは


「私は冷静なものが好きです。
冷静で明晰でしずかであかるくて絶望しているものが好きです。
そのような小説になっているといいなと思いながらこれを書きました」

と書いています


この言葉に映画
[ジョゼと虎と魚たち]の
ジョゼの台詞を思い出しました



「いつか あんだがおらんようになったら迷子の貝殻みたいにひとり海の底をコロコロ転がり続けることになるんやろ
でも まあ それもまた良しや」


この映画の原作者である田辺聖子さんは


「しずかなゆえに烈しく みじかいゆえにより強く 舌に残る恋の味
愛と死とわかれはみな同じ味」




言っています


ね?
なんとなく共通した絶望の観念を感じませんか?

絶望を好きだなんてさらっと言う江國さんに嫉妬さえ覚えました

彼女は
〔号泣する準備はできていた〕

では
喪失する為には所有が必要だと書いています


゛すくなくとも確かにここにあったと疑いもなく思える心持ち¨



つまり、ジョゼにも江國さんのいう《絶望》にも
実は
確かに愛し合っていた、
という揺るぎない愛の記憶があるのです




江國さんはあとがきの中で
更にこう続けます


〔そうしてまた、これは格好わるい心の物語でもあります。
格好わるい心というのは
たとえば未練や執着や惰性
そういうものにみちた愛情〕



未練や執着や惰性

ほんとは、それらが恋愛の大方の成分なんじゃないか
等と想ったりする


格好わるい心…
誰かを好きになるって…



そして
それでも、こう思う




人生は諦念のオブラートに
包まれている
その中から零れる滴を掬いあげることが愛の日々




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