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ひとつの光

「お兄ちゃん。あの人凄い。愛が灯ってる」

確かにあの人は心が綺麗だね。
とても純粋で信仰に満ちている。
でもあの人だけかな?
他の人はどう?

「他の人はそんなに。」
「みんな光ってない。」
「心が綺麗じゃない。」

確かに表面上を見ればみんな心が汚いかもしれない。だけどそれは薄皮一枚を剥がして見ているだけだよ。どうせならもっと剥がしてみな。心の奥底まで。

「そんなこと言ってもみんなの心は純粋じゃない。だから心の奥底なんて見たくもない。だって怖いから。」

あの人を観てごらん。
確かにオドロオドロしいね。
とても怖い人だ。

でもやっぱりそれは表面上の心でしかないよ。人の心の内にはね。でっかい太陽みたいな光があるんだよ。心を灯す綺麗な光が。もしも人の心を観たいなら。その光を見なさい。そうすればきっと怖くないよ。

「心の光」
「それってみんなにあるの?」

勿論あるよ。
誰にでもある光だ。
どんな悪い人にでも平等にある。

覗いてごらんよ。
人の光を。
魂の輝きを。
望遠鏡貸してあげるから。

少女はその時確かに見た。
悪人の中に光があることを。
そしてその光が万人に灯っている事実を。

あの人もこの人も。
虫や動物にさえも灯る光。
ただ愛が降る。ただ愛が巡る。
この世界は愛に満ちていた。

それからというもの。
少女は差別することを止めた。
それは間違いだと気付いた。

誰にでも光は灯る。
ただそれが見えないだけだと。
少女は語る。

「みんな同じ」
「みんな光」
「みんなに愛が灯る」

世界は「ひとつの光」があるだけ。

たったそれだけのこと。



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