精神病の正体と精神科医の犯罪 13 〈最先端研究が暴く不都合な真実〉
第1章 精神病の正体13 ストレスに弱い遺伝特性
子供はお酒を飲んではいけない
GABAが統合失調症の原因と断定されていない原因の一つは「GABA過剰になっても全ての人が病気になるわけではない」という現実です。GABAが原因ならお酒を一定量飲む人は全員精神病になるはず、というわけです。もっともな話です。
なぜ大人はお酒を飲んでもいいのに子供は飲んではいけないのか?法律で決まっているから・・・ではなく精神病を発症させる可能性が高いからです。
ではなぜ子供は精神病になりやすいのか?このことについて「アルコールの分解能力が未発達だから」と言われて来ました。確かに肝臓の能力などが低いことは事実ですが根本的な要因は違うと私は考えています。
まず考えられるのは根本的にシナプス構成が未完成で脆弱なものでしかないということです。例えば大きな玉ねぎの外側の皮を1枚剥いても大きさはさほど変わりませんが内側の数枚分のうち1枚を剥いたら大きさは半分になってしまいますよね。同じだけシナプスの刈込が起きても大人と子供では影響に大きな差があるということです。
もう一つは思春期の影響です。10歳前後から成人程度までは思春期に関わるシナプスの刈込みが盛んになりシナプス構成が不安定で脆弱な状態にあるということです。
思春期のシナプスの刈込は必要部分に選択的に行われると考えています。対してアルコールやストレスによるシナプスの刈込は「新しいものから消去される」のです。つまり書き換えられる新しいOSがインストールされないまま旧バージョンが消去されていくことになります。どうなるかお分かりになるでしょう。
子供はアルコールにも薬物にもストレスにも弱いのです。大人は充分配慮してあげなければなりません。
思春期の飲酒は精神病の危険があるばかりでなく理性や良心の発達を妨げ非行に陥りやすくさせてしまいます。非行に走るから飲酒するのではなく飲酒や薬物が非行を加速させるのです。抽象的な言葉を並べるばかりでこの重大な事実をこれまで誰も指摘してきませんでした。(私の知る限りでは)
その要因の一つは症状が「わかりにくい」からだと思われます。思春期に性格が悪くなってもある意味当たり前、原因を探ろうとせず「そういう年頃だから」で終わってしまうのです。あるいは「発達障害」で片付けられてしまう可能性も高いと思われます。前頭葉が幼児化し社会性を失えば発達障害に見えます。性格が変わる程度の軽症は子供の場合気づかれないまま終わってしまう可能性が高いのです。
酒乱になる人
20歳になればお酒を飲んでいい事になっていますがトラブルを起こす人は後を断ちませんね。楽しく飲める人と酒癖の悪い人の違いは性格なのでしょうか?
そこで気になるのが眞先氏の「酒乱になる人、ならない人」の答えですね。
結論から言うとADH(アルコール脱水素酵素)欠損症であり、かつALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)欠損症ではない人とされています。
アルコールは体内に入るとアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解されます。このアセトアルデヒドが毒性を持っていて気持ち悪いとか頭が痛いというようなアルコールの二次症状をもたらします。アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い人はこの害が強く現れ「お酒が苦手」「下戸」という分類になり日本人には多いと言われています。
アルコール分解酵素の働きが弱い人は酔っ払い状態が長く続くことになりますがアセトアルデヒドによる害がないので「お酒に強い」というわけです。
わかってわからないような説明ですが体質・遺伝特性が関係するのは間違いないようですね。でもお酒に強い人イコール酒乱や酒癖が悪い、というわけでもありませんから「う〜ん」というレベルの答えでしかありませんね。
ストレスに弱い遺伝特性
ところが、この本には「ストレスに弱い遺伝特性」についての記述があります。酒乱やアルコールに何の関係も示されていない内容が唐突に書かれているのです。実に奇妙な話です。
統合失調症はもともとストレスに弱い素因にストレスが加わることで発症するという「ストレス脆弱性モデル」という仮説が唱えられています。
COMT遺伝子多型
眞先氏の著書には「COMT遺伝子多型」と呼ばれるストレスに弱い遺伝特性が発見されていて感受性が強くストレスの影響を受けやすい、つまり「精神病になりやすい」特徴を持っていると記されています。一方では専門性や芸術性に優れているともあります。
一対存在するCOMT遺伝子の片方、あるいは両方が欠損している遺伝を「多型」といいます。この遺伝がアルコールやCRH、GABA系統の物質を分解できないという結果を生みシナプスの刈込が過剰に起きると私は考えています。
繰り返しますがこの本にはこの遺伝特性が酒乱やアルコールと関係するとは一言も書いていません。しかし、ここで触れている意味は実はとても深いものがあるのです。でもなぜ意図的に繋ごうとしていないのでしょう?著者は全ての答えを知っていてわざとはぐらかしているような気がしてなりません。
COMT遺伝子多型の名称は出していませんが岡田尊司氏もストレスに弱い遺伝特性の存在を指摘していて統合失調症発症の要因としています。
統合失調症の人口あたりの発症率は地域や人種によって差は少ないと以前は言われていたのですが、南アイルランドの発症率が異常に高い例を挙げ、人種や遺伝によって発症率が異なる可能性について書いています。
ストレスに弱い遺伝特性・COMT遺伝子多型=酒乱になる人=統合失調症になりやすい人ということになり、その分布は人種などによってばらつきがあるということです。
アボリジニは飲酒禁止
オーストラリアの先住民アボリジニは法律で飲酒が禁止され、外国人などが居住地に酒を持ち込むことも禁じられています。
先住民が酒を飲むなどけしからん!というような差別ではありません。
アボリジニは少量の酒でも泥酔の症状が現れ暴力や犯罪が多発している、つまり酒を飲めば100%酒乱になるということなのです。
アボリジニは長い間単一種族で外界と隔絶されていたのでアルコールに免疫がない・・などと言われていますが、そうではなくストレスに弱い遺伝特性を持っていると考えるべきでしょう。
異なる自殺率
世界の人口に対する自殺率の統計を見ると国によって大きな差があります。一番高いのが韓国で日本も6位となっており先進国の中では飛び抜けています。国として見れば自殺率が低い国であっても、地域別や民族別に見ると隔たりがある場合もあり、カナダでは平均の自殺率は10万人あたり12人程度ですが、先住民のイヌイットに限れば10万人あたり135人と、カナダ全体の11倍を超えており韓国を超え1位ということになっています。また同じくイヌイットの居住地であるグリーンランドでも非常に高いとされています。その他東ヨーロッパやアボリジニなども高い傾向が見られます。
東欧では社会体制や貧困、その他では先住民、少数民族への差別や迫害が背景なのでは?と言われて来ました。
しかし、ここに日本や韓国が入っています。同じ先進国なのに欧米と大きな差があります。社会体制や貧困、差別、迫害は当たりません。
私は自殺も統合失調症の症状だと申し上げてきました。社会体制などの影響を否定するものではありませんが自殺率の差が「ストレスに弱い遺伝特性」の分布によるものと考えれば辻褄が合うのです。
インフルエンザ脳症が東アジアで多発?
インフルエンザで高熱が出ると「インフルエンザ脳症」という症状が起きることがあります。高熱に伴って脳に浮腫が生じ、けいれんや意識障害、異常行動などの症状が起きます。しかし、脳にウィルスが侵入するわけではなく熱が脳を破壊するわけでもないことから何らかの免疫反応の異常によって起きるのではないかと言われています。解熱剤を使用すると発症の危険が高まることが知られていますが関連は解明されていません。
一見精神病と関係が無いようにも思えますが、欧米での発生は少なく日本や東南アジアで多発していること考えると民族的な遺伝特性と関連があると考えられます。インフルエンザ感染時に生成されるサイトカインという物質の性質がストレスホルモンと似ていることがわかっています。分解には同じ遺伝特性が関係しているのではと私は考えています。
風土病「アモック」
マレーシア、インドネシア、フィリピンなどの近代化される以前の部族社会ではアモックと呼ばれる、人を無差別に殺傷する事件が起きていたといいます。
何か悲しい事があったり、侮辱を受けた後、部族の人との接触を避け引きこもり、暗い目をして物思いにふけっているような状態になる。そして突然武器を手に飛び出し、遭遇した人をかたっぱしから殺傷してしまうというのです。本人が自殺するか殺されるか取り押さえられるまで続き、正常に戻った時には人を殺傷していた時の記憶を失っているというものです。青年期の男性に多発するという特徴があると言われています。
アモックもその特徴から「統合失調症」であることは一目瞭然です。さらに調べて行くと朝鮮民族にも「火病」と呼ばれる精神疾患の「風土病」が存在していることがわかりました。風土病と言われるのはもちろんその地域のみで多発しているからです。
様々な資料を突き合わせると日本を含む東南アジアのモンゴロイド、イヌイットを始めとする北極圏のモンゴロイド、アボリジニ、南アイルランドのケルト人、東欧のスラブ人、ユダヤ人、アラブ人などがストレスに弱い遺伝特性、COMT遺伝子多型を持つ可能性が高いという結論が導かれます。
ストレス、アルコール、薬物の影響によってCOMT遺伝子多型でない人はダウンレギュレーションによってうつ病や依存症を発症し、COMT遺伝子多型の人は成人であってもGABA作用によって統合失調症を発症する確率が高い、これが私の出した結論です。
ストレスに弱い遺伝特性と発達障害
精神科医の大塚明彦氏は著書の中で「発達障害に精神病の種がある」と書いています。ということはCOMT遺伝子多型=発達障害ということになります。それを裏付ける研究が多数発表されていますから間違いないでしょう。
発達障害がなぜ統合失調症と関係するのか?その答えはとても簡単です。統合失調症における全ての症状が「発達障害」に他ならないからです。この考え方をしたのはおそらく世界中で私が初めてです。少年期の統合失調症が発達障害と誤認されることについては先にも述べています。
私が統合失調症と発達障害の関係を気づいたのは大塚氏よりもはるかに前ですし、大塚氏のその後の解析は非科学的で全く間違っているのが残念です。
精神病の正体と精神科医の犯罪14に続く
*この文章は「悪魔の処方箋」を加筆、再構成したものです
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