
【事件】相方の自転車が盗まれた
2023年9月27日、18時を過ぎた頃。
僕の相方からラインが届いた。
「チャリ盗まれたわ」
正直、腹を抱えて笑った。
今年の4月に宮城から上京して、まず移動手段を確保しようと、僕達は自転車を買った。
僕が買ったのは26インチで変速無しの黄色いママチャリ。
トランスフォーマーのバンブルビーから名前を借りて、僕は「ビー」と呼んでいる。
ちなみに、買って半年も経っていないが、前輪ブレーキから「キィィィィィ!!」という音が出るようになった。
これも、ビーの鳴き声なのだ。
鳴き声と言うか、意思表示だ。
「楽しい!楽しい!楽しいよぉぉお!!」
と、言ってるようにしか聞こえない。
ビーは、僕にとってはかけがえのない相棒だ。
一方、僕の相方が選んだ自転車はクロスバイクで、僕のママチャリより3倍近くの値段で買っていた。
1回だけ乗らせてもらった事があるのだが、確かに走るのは楽しかったし、車体も軽かった。
淡いピンク色で、フレームには「maico」と書いてあった。
僕は自転車にそこまで興味が無かったので、言ってしまえば「乗れれば何でも良い」と思っていたのだが、相方は学生の頃から海外の自転車レースなんかを観ていたので、こだわりも予算も全然違った。
自転車さんでの当時の相方の言動や、実際に漕いでる時の相方の言動を以下にまとめた。
「俺はクロスバイクがいいな〜」
「でも、足回りも低い方が俺に合ってる」
「この淡いピンクって誰も乗ってなくない?」
「俺の為の自転車じゃん!」
「最高の相棒だわ」
「やっぱり、自転車楽しいわ!!」
「ライトと鍵は良いの買っとこ!」
「ちょうど良いからココで空気入れてこっ」
「今日は浅草まで行ってきたわ」
「今日は東京タワーまで行ってきたわ」
「俺、4時間とか平気で漕いでられるわ」
「お前のママチャリ、遅くて腹立つわ」
「お前のママチャリのライト、めっちゃ発電の
音するなww」
「お前のママチャリのベル、すんげー安くさい
音するなww」
そんなアイツの自転車が盗まれたのだ。
盛大に笑おうじゃないか。
そして、帰って来た相方に事情を聞くと、特にエピソードがある訳でもなく、至ってシンプルに盗まれただけだった。
「まぁ、お前が使うんだったら全然良いんだけど、これからちょっと、お前のチャリ借りても良い?」
と、申し訳無さ半分、横柄さ半分の頼みをしてきた。
俺のビーを散々馬鹿にしやがったくせに。
と、思いつつ、今僕は相方に30万円近く借金している。
僕は笑顔で
「おう!全然良いよ〜👌」
と、答えた。
そんな秋の夜だった。