【書評】 仕事も人生も、これでうまく回る!不器用解決事典
小さな一歩から始める、不器用さんのための心理学的解決メソッド
現代社会において、多くの人々が直面している「先延ばし」「整理整頓が苦手」「段取りが悪い」といった悩みに、臨床心理士としての専門的知見と自身のADHD特性という二つの視点から切り込んだ画期的な一冊です。
著者の中島美鈴さんは、臨床心理士・公認心理士として活躍する傍ら、自身もADHD傾向があるという貴重な経験を持っています。
そのため、本書では単なる「頑張れ」や「根性論」ではない、科学的根拠に基づいた具体的な解決策が提示されています。
特に注目すべきは、認知行動療法(CBT)という心理学的アプローチを基礎としながらも、日常生活で実践可能な「しくみ」づくりに重点を置いている点です。
本書の特徴的な構成は、各章で架空の人物による具体的な困りごとの提示から始まり、それに対するCBTベースの解決策を示すというものです。
この手法により、読者は自身の状況と重ね合わせながら、理論と実践を無理なく学ぶことができます。
特に、各ケースの描写が非常に具体的で現実的であり、読者が「まさに自分のことだ」と共感できる内容となっています。
本書で提案される解決策の中でも、特に印象的なのは「ちょっとしたタスク」メソッドです。
例えば、見積書作成という苦手な作業を10個の小さなステップに分解し、最初のステップを「コーヒーを淹れる」という極めてハードルの低いものから始めるという提案は、実に画期的です。これは脳科学的にも裏付けられており、即坐核の活性化による「やる気」の喚起を促すという点で非常に興味深い手法となっています。
また、この「ちょっとしたタスク」メソッドの特徴は、各ステップの達成に対して小さな報酬(例えばチョコレートを1粒食べるなど)を設定することにもあります。
これにより、脳内の報酬系が活性化され、次のステップへの動機付けが自然と高まっていくという仕組みが巧みに組み込まれています。
本書は13の章立てで構成されており、それぞれが独立した問題と解決策を扱っています。
注目すべきは、必ずしも順番通りに読む必要がないという点です。
これは、読者が現在直面している最も切実な問題から取り組めるよう配慮された構成といえます。各章は以下のような問題に焦点を当てています:
・生活リズムの乱れ
・遅刻の習慣化
・段取りの失敗
・コミュニケーションの困難さ
・整理整頓の問題
・情報処理の苦手意識
・優先順位付けの難しさ
・柔軟性の欠如
・集中力の問題
・アウトプットの困難さ
・計画立案の苦手意識
・思考の切り替えの難しさ
・先延ばし習慣
特に素晴らしいのは、各問題に対する解決策が、認知行動療法の観点から「考え方の変更」と「行動の変更」の両面からアプローチしている点です。
たとえば、片付けが苦手な場合、「自分はだらしない人間だ」という否定的な思考パターンを「物の置き場所の設計が自分に合っていないだけだ」という建設的な思考に変換し、同時に「ロボット掃除機の導入」や「物を減らす」という具体的な行動変容を促すアプローチが提案されています。
また、本書では各解決策の実行に際して起こりうる困難や躓きについても丁寧に言及されています。
これにより、読者は実践の過程で遭遇する可能性のある問題に対しても、あらかじめ心の準備ができ、より持続的な改善に取り組むことができます。
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本書を読んだ感想として
本書の最大の魅力は、「自分を責めない」というスタンスを一貫して貫きながら、具体的で実行可能な解決策を提示している点にあります。
著者自身のADHD特性という経験に基づいた提案は説得力があり、読者の心に深く響くものがあります。
特に印象的だったのは、日常的な困りごとを「性格の問題」や「努力不足」ではなく、「しくみの問題」として捉え直す視点です。
これにより、自己否定的な思考から抜け出し、建設的な問題解決へと向かう道筋が明確に示されています。
この視点の転換は、多くの読者にとって大きな解放感をもたらすのではないでしょうか。
また、各章で提案される解決策が、単なる理論や抽象的な助言に終始せず、即座に実践できる具体的なものばかりである点も高く評価できます。
「ちょっとしたタスク」メソッドに代表されるように、小さな成功体験を積み重ねていくアプローチは、読者の自己効力感を高め、持続的な行動改善につながる可能性を秘めています。
著者の文章スタイルも、読者に寄り添うような温かみのある語り口で、読んでいて心地よさを感じます。
専門的な内容でありながら、決して上から目線ではなく、同じ悩みを持つ一人の人間として読者と向き合う姿勢が随所に感じられます。
さらに、本書の構成も非常に工夫されています。各章の導入部分で架空の人物の具体的な悩みが提示され、それに対する解決策が段階的に説明されていく流れは、読者の理解を深める上で効果的です。
また、必要な箇所から読み始められる構成は、読者の時間的制約や緊急度に応じた柔軟な活用を可能にしています。
個人的に特に印象に残ったのは、「報酬」の使い方に関する提案です。
多くの自己啓発書が「意志力」や「根性」に依存しがちな中、本書では小さな報酬を効果的に活用することで、脳の報酬系を味方につける方法が提案されています。
これは非常に現実的かつ持続可能なアプローチだと感じました。
最後に、本書が提供する解決策の多くが、ADHD傾向の有無に関わらず、現代社会を生きる多くの人々にとって有用なものだという点も強調しておきたいと思います。
情報過多や多様な要求にさらされる現代において、誰もが多かれ少なかれ「不器用さ」を感じる場面があるのではないでしょうか。
その意味で、本書は幅広い読者に対して、実践的かつ効果的な生活改善のヒントを提供してくれる良書だと確信しています。
本書を特におススメしたい人
・日常的に「不器用さ」を感じている方
・ADHDの診断を受けている方、またはその傾向を感じている方
・仕事や生活の効率化に悩む方 ・認知行動療法に興味がある方
・生活改善のための具体的な方法を探している方
本書とあわせて読みたいおススメの書籍
・アドラーに学ぶ 人はなぜ働くのか 岸見一郎 (著)
・「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門 倉下 忠憲 (著)
・マンガで成功 自分の時間をとりもどす 時間管理大全 中島美鈴 (著),
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本書のまとめ
本書は、日常生活や仕事において感じる「不器用さ」を、認知行動療法の観点から解き明かし、具体的な解決策を提示する実践的なガイドブックです。
著者自身のADHD特性という経験と、臨床心理士としての専門知識を組み合わせることで、理論的裏付けのある実行可能な解決策を示しています。
特に「ちょっとしたタスク」メソッドをはじめとする具体的な実践方法は、読者の即座の行動改善につながる可能性を秘めています。
本書は、不器用さを抱える全ての人に、希望と具体的な道筋を示す良書といえるでしょう。
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