風邪の上手なやりくり法
新年が始まり、もう10日が過ぎました。普段よりのんびり過ごせた方もいらっしゃれば、様々な用が重なり、何かと慌ただしかった方もおられるでしょう。
私は後者で、仕事が年末ぎりぎりまで長引いたり、人と会う約束に買い物の予定があったりと、イレギュラーな出来事に振り回されていた気がします。
そうなると生活のリズムが狂い、特に睡眠のサイクルが乱れているのが気がかりでした。
漢方の考えかたでは、午後11時でも夜更かしとされ、12時を過ぎると大夜更かしです。自分自身の実感でも、日付をまたいで眠った場合、疲れのとれかた、翌日への影響度が変わってきます。
そんな日々の連続に、まずい予感はありました。はっきりとした違和感がやってきたのは、今日からちょうど三日前です。
朝から妙に体がだるく、鼻がぐずつき、筋肉痛が感じられます。最も特徴的なのは寒気であり、自分だけが周囲より強く冷えを感じているのは明らかです。
風邪が入りかけているのだと実感し、急いで対策を始めました。とはいえ、子どもの頃にさんざん病院通いをしたために、今ではすっかり病院嫌いで、薬にもなるべく頼りたくありません。ここは自分でなんとかするしかなく、地道な作戦開始です。
まず最も必要なのは休息であり、その日は予定をやりくりし、外出を控えました。
体を温めるためにも、様々に工夫を重ねます。首もとにカシミアのマフラーをぐるぐる巻き付け、普段よりもカーディガンを一枚プラス、極厚のタイツの上にレッグウォーマーを重ね、膝には常にブランケットを。
体を内から温めるには、やはり温かい料理です。有り合わせの材料で作った野菜鍋をぐつぐつ煮立たせ、葛をあらゆる飲み物に加えます。ココアに抹茶、紅茶はもちろん、お味噌汁にも。
風邪をひきかけた時、とにかく葛根湯を一刻でも早く飲むのが良いとされますが、葛根湯にも葛が配合されており、冬のあいだ葛を摂れば、医者要らずという言葉もあります。葛粉は飲み物や料理に少し足すだけでとろみがつき、味も美味しくなるうえに、粉末ならばすぐに溶けてしまうので便利です。
後は、できるだけ部屋を暖め、いつもより早く寝むだけです。
翌日、目が覚めるとほとんど違和感は消えており、体には何の辛さもありません。どうやら上手く風邪をやり過ごせたと、心の中で小さなガッツポーズです。
ここでこじらせてしまった場合、私なら二、三日は起きられないし、完治まで一週間ほど後を引きます。大げさですが、命拾いしたような気分です。新年から寝込むのはきついものがありますから。
野口整体で有名な野口晴哉は、風邪はひくべきだと書いています。風邪のひとつもひかないでいて大病を患う前に、風邪で小さな不調を逃してやること、ただし、できるだけ早くその状態を通過させるべしとも語っています。
ご本人もしょっちゅう風邪をひきながら、ほんの四時間ほどで風邪を通過させていたというからさすがです。風邪をひくことが健康の秘訣というのは面白い考えですが、体をありふれた常識とは別の観点で捉える、良いきっかけになると思います。
冬の寒さと風邪は切り離せないようではありますが、じつは地球上で最も寒いサハ共和国には、風邪そのものが存在しません。あまりに過酷な環境ゆえに、風邪のウィルスも生存不可能なのです。
決して風邪をひかずに済むのはうらやましくも、世界一の寒さと風邪、どちらかを選ぶのは究極の選択といえそうです。それならばほどほどの寒さの国で、養生に努めて暮らすのが良いのかも。
ともかく当分は寒い日が続きます。どうぞお体にお気をつけて。