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【ボドゲ製作記】カード最安価制作を求めて
ボードゲームをできるだけ安く作りたい……。そんな思いから様々な手法を検討するシリーズ、今回はカード編です。
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■カッティングプロッターとは?
ボードゲーム制作におけるコスト面での鬼門……そう、カード印刷。カードを最も安く作る可能性を求め、フカセ氏によるカッティングプロッター実演会へと参加した。
【自作カードを実演!】
— Masao Fukase (@SN_COKE_BW) October 4, 2023
本日のボードゲーム相談会で自作カード制作の実演を行います!
使うのは「カッティングプロッター」。
コストを抑えて自由にカードを作ろう!
・ボードゲーム相談会
日時:10/04(水) 19:00〜22:00
場所:東京都JR中野駅Cafe5F(@Cafe5_f)にて。
詳細:https://t.co/oL0c10lIua pic.twitter.com/YaoCGLN3ld
【どんなカードが作れるの】
— Masao Fukase (@SN_COKE_BW) October 4, 2023
「ミツカルタ」と「ALARM」はカッティングプロッターで制作しました。
コストを抑えつつ少部数でクオリティを保ったカードを作れることが特徴です。
反面、扱いにはちょっとしたクセが…。
カードをその場で切って見るので、出来上がりが気になる方はぜひ。 pic.twitter.com/l8tY6piVUc
カッティングプロッターはいわば「カット版のプリンター」。実際にご覧になって頂く方が早いだろう。
つまり、A3の厚紙にカードの図柄を並べて印刷所へ入稿。印刷されたA3厚紙をカッティングプロッターで切断すれば、ボードゲームのカードが作れるという仕組みである。
■メリット
カッティングプロッターのメリットは次のようになる。
・納期が緩い
・角丸ができる
・六角形など特殊な形状のカードに対応可能
・丁合が簡単
・在庫の保存が楽
【解説】
自宅で作れるので、印刷所の納期が緩くなる。切断前の厚紙自体は印刷所に発注する必要があるが、これの納期は一般的にカード印刷よりもやや緩い。
切断する形状を指定できるため、角丸も可能。通常の印刷所では角丸はオプション価格となり、かなり高くつくので、この点は有利だ。特殊な形状のカードを作りたい場合も同様である。
カードを切って!
— Masao Fukase (@SN_COKE_BW) October 4, 2023
はがす!
これがカッティングプロッター!#ボードゲーム相談会 pic.twitter.com/gfrpkDwwcl
※フカセ氏は六角形のカードを作るためにカッティングプロッターを導入したという
1セット分のカードを1枚のA3厚紙にまとめて印刷すれば、それを剥がして集めるだけで丁合が完成する。印刷所でカードを発注すると1種類ごとにまとまって送られてくるため、一枚ずつ取っていく丁合作業が必要になるが、その点が簡略化される。
また、切断前のA3厚紙の状態で保存しておけば比較的場所を取らない。例えばA3厚紙を200枚印刷しておき、イベント前に50枚をカットして50セットのゲームを作る。売れるまで残り150枚を厚紙のまま押し入れにしまっておく……などが可能だ。
■デメリット
一方でデメリットは以下のようなものだ。
・どうしても人力作業
・粘着台紙にクセがある
・初期投資のハードル
・ランニングコストがかかる
【解説】
粘着台紙にA3厚紙を貼り付けてセットし、切断後のカードを取り外す作業はどうしても人力となる。動画を見ていただければ分かる通り、A3厚紙にポーカーサイズ12枚のカードなら約1分で切断できるが、取り外して丁合する時間も含めれば、12枚あたり2~3分はかかるだろう。1セット48枚のゲームなら、1セット作るのに10分は見たほうが良い。100セットなら1000分(17時間弱)。作業時間の時給換算も考慮すべきだ。
また、粘着台紙にはかなりクセがあるらしく、強粘着の台紙だと粘着力が強すぎて剥がす際にカードが破けるという。予め粘着力を落とす工程が必要で(フカセ氏はタオルや手でペタペタすることで対応しているという)ここには慣れが必要とのこと。「切羽詰まってる時にカッティングプロッターを始めるのはオススメできない。余裕がある時に試行錯誤するべき」とフカセ氏は仰っていた。
初期投資も約5万円かかる。また、粘着台紙は50~70枚のカットで寿命が来るので、その度に交換が必要となる。
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この辺りの実際のコスト感は後で算盤を弾いてみよう。
■カッティングプロッターをオススメできる環境
人力であり、労働力が発生する点がやはり最大のネックである。フカセ氏とも話していたが、この作業中はなかなかの地獄らしく、「50部くらいの生産数がベスト」とのことだ。100部~200部になると素直に印刷所のカード印刷を使った方が良いのかもしれない。
以下のような状況のクリエイターならカッティングプロッターを使いこなせるのではないだろうか?
・少部数の作品を高頻度で作りたい
・クラウドファンディングのリターン品を少部数作りたい
・カード以外のコンポーネントやグッズなども制作したい
・特殊なカード形状のゲームを作りたい
・カードサイズの小さなゲームを作りたい
【解説】
例えば、50部くらいの生産数のゲームをイベントのたびに制作する。イベントにおいて「新作がある」というのは訴求力として強いはずだ。毎回のように新作を打ち出し、ブランディングを高めつつ、個々の売れ行きの反応を見て、手応えのあった作品のみ印刷所で大量に増刷する。もしくは商業作品として売り込みをかける。そういった立ち回りをする場合、カッティングプロッターは有効だろう。
クラウドファンディングでは高額支援者向けのリターン品を作ることがある。それがほんの数名~数十名であれば、カッティングプロッターの手作りが活きるだろう。どのようなリターン品を設定するかにもよるが、カッティングプロッターが提供リターン品の可能性を広げるかもしれない。
その点で言えば、カードにこだわらず、他のものをカッティングすることも可能だ。カッティングプロッターは革などもカットできるようである(機種による?)。
「革をカットできたからといってボードゲームにどうしろと……?」と思われるかもしれないが、それはあなた次第だ。上述の高額リターン品などに何か使える可能性がある。私も今は全然何も思いつかないが……。
なお、フカセ氏の所持しているCAMEO4PLUSでは2mmの厚紙は切れなかったらしく、厚紙トークンやボードなどを制作するのは難しいとのことだ。(そもそも一般の印刷所で2mmの厚紙に印刷することが一苦労なのだが、それは後に別記事を書きたいと思う)
特殊なカード形状を実現できるのはカッティングプロッターの大きな利点だ。また、小さなカードを大量に用いるようなゲームであれば、当然ながらA3厚紙により多くのカードを並べることができる。ハーフサイズ(63x44mm)であれば24枚、さらにその半分なら48枚を一度に作れるため、相対的に労働力を削減できるだろう。
■シビアに算盤を弾いてみる
さて、ここからはカッティングプロッター導入の検討のため、シビアに算盤を弾いてみる。私が調べた中で最安価のカード印刷会社と、カード制作における良く知られた裏技である「名刺印刷」とも比較しながら、初期投資、ランニングコスト、労働力などの観点からも検討してみよう。
なお、通常サイズのカード(63x88mmのポーカーサイズ)54枚を1セットとして100~200部制作する状況を想定する。
【カッティングプロッター】
・初期投資
52,800円(CAMEO4PLUS)
・ランニングコスト
粘着台紙 2750円 ブレード 1980円
・厚紙印刷
A3 マットコート 220kg 100部 4030円(プリントパック)
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A3 マットコート 220kg 100部 8050円(グラフィック)
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