自分軸の作り方#58「ちゃんと泣ける子に育てよう」1章① ”ネガティブな感情” ごと、子どもを抱きしめる。
「ちゃんと泣ける子に育てよう」大河原 美以/著 冒頭部分を#57でご紹介させていただいた。この本から、とても大事な気づきを得たので、今回は1章の内容をかいつまんで紹介したい。
この本の前半では、3歳児を育てる「ゆうたパパ・ママ」「あゆみパパ・ママ」と、先生の対話形式で、学びが進んでいく。
ゆうたママ・・・子供が泣いていると、まわりから「しつけをせず、わがままに育てている」と思われ、他の子より劣っていると「ちゃんと育てていないダメな母親」と評価されると感じている。子供が泣くと「どうして泣くの!」とキレて、いつも自己嫌悪。
ゆうたパパ・・・子供なんて放っておけば育つ。泣かせないことが大事で、泣いても放っておく。自分も放っておかれた。
あゆみママ・・・幼い時から「周りの気持ちを考えなさい」と育てられた。あゆみが泣くと怖くなり、どうしてよいかわからず頭が真っ白になる。泣かせないように、先手先手を打つ。
あゆみパパ・・・厳しく育てられ、父親の役割はガツンとやることだと思っている。
先生は、親が子どもをちゃんと泣ける子供に育てることを勧めているが、
パパ・ママたちは、「ちょっと何言ってるかわからない」状態だ。
そこで「自分が育ってきたように育てればよい」と楽観視できないくらい、現代の子どもの発達が危機的状況なことが説明される。
現代は「よい子に育てなくちゃ」という常識にがんじがらめになっている現状があるのだ。
「バンダイこどもアンケート2003」子どもの長所を聞いた親の答えが、以下の通りの結果だった。
提供:バンダイこどもアンケート2003 「お子さまの長所はどんなところですか?」
https://www.bandai.co.jp/kodomo/pdf/question103.pdf
我が子の長所が
「優しい、思いやりのある子」の数がダントツに高い。
しかし先生は
親の前では「優しい子」なのに、
大人の見ていないところで、感情コントロールができず、学校の先生がつぶれてしまうほど攻撃的になる子どもが増えて、危機的状況であると指摘する。
「優しい子」とは何か。
「親を癒してくれる子」を求めていると、子どもの感情は重大な支障をきたす。
子供を育てるにあたって、最初に親がしなければいけない覚悟は
「子供は足りないところがあって、親に苦労をかけるものだ」という覚悟だという。
幼児期は自己中心で、親の迷惑かえりみずに
自分の身体から出てくるエネルギーのままに感情を表出することが、
脳の発達のプロセスとして、自然なこと。
子どもがぐずって「不快な感情のエネルギーに支配されているとき」に
子どもを抱いてあげることが、どうして感情の発達に大事なのかを伝えたくて、この本を書いた。
と、先生は語る。
3歳くらいになると「私、嬉しい」と言える子供は増えるが、そのほかの自分の感情がわからない子供が、多い。
大人でも、悲しいのに怒る、不安なのに笑う、など自分の感情がわからない人は珍しくない。
自分の感情がわからない子供は、発達の中でさまざまな困難を抱えることになる。
子どもが「私は嬉しい」「私は怒っている」「私、悲しい」と、自分の感情を大事にしてもらうことが、子どもの成長にはとても大切なこと。
高校生になっても、大学生になっても
「私、悲しい」「私、怒ってる」「私、悔しい」というような自分の感情がわからない子が、
暴力をふるったり、暴言を吐いたり
おなかが痛くなったり
人に意地悪をしたり、
リストカットをしたり、ということが起こるのだ、と。
子どもが怒りや不安や恐怖などを感じることは、生理現象であり、
感じないわけにはいかない。
感情は、体を流れるエネルギーであって、
意識でコントロールすることは、できないものなのだ。
感情の表出が生理現象だとしたら、
トイレを我慢しているのと一緒で、出さないと病気になる。
そこでゆうたママは気づく。
「ゆうたは病気になっちゃうんですか!私は毎日のように
『泣くんじゃない!』って叫んでます!」
あゆみパパは「うちもです、子どもが泣くと妻がパニックになるから『泣くんじゃない!』と一喝です。 手遅れですか」
先生は「怒鳴っても泣いているなら大丈夫。親の迷惑かえりみず、なら、生きる力に満ちているということです。問題は、いくら言っても言うことを聞かないことに、
いら立つ親の側に問題があって、悪循環が生まれること。
親がゆったりしていたら子供がすっと泣き止むことができるものです」と返答する。
泣いているときにしっかり抱きしめてあげることができれば、それで十分なのだ、と。
*「泣いているときに抱きしめる」が大事な理由
赤ちゃんが言葉を覚えるときは、「マンマ」など
「欲しいもの」と「ものの名前」を、身の回りのものから順に覚えていく。
しかし感情の名前は「もの」がない。それをどうやって覚えるかというと、
たとえば子どもをブランコに乗せた時に、キャッキャと喜んでいたら
「嬉しいね」「たのしいねえ」と声をかける。
そこで体の中のエネルギー、身体感覚と「うれしい」が結びつく学習をしているのだ。
そのように、子どもが感情をあらわす言葉を獲得するためには、大人との相互作用が必要だ。
ポジティブな言葉は、親が声をかけて、自然に身体感覚と結びつけやすい。
でも、「怒っている」「悲しい」「悔しい」「不安」「憎たらしい」については、自然に身に着けることが困難だ。
たとえばゆうたくんが夢中になってスコップで砂に穴を掘ってワクワクしているときに、ほかの子にスコップを取られたらどうなるか。
ゆうたママは言う。
「砂をまき散らし、泣いて地団太を踏んで悔しがるだろう。」
そして「ちゃんと我慢できればいいのに、と思う。」
ゆうたパパは「いいかげんにしろ」と諭すという。
先生からの返答はこうだ。
その時に親ができることは、
「悔しかったねえ」「スコップ取られて、嫌な気持ちだったね」と、体に流れている不快なエネルギーが何なのかを、言葉にして教えることだ。
「そんなことぐらいで泣くんじゃない!」と言われたら、
その時は泣き止むとしても、体の中を逆流した不快なエネルギーは、混沌としたまま置き去りにされる。
子どもは、自分の身体感覚に合った言葉がけをしてもらうと、不思議なくらいに落ち着くものなのだ。
そのように、体を流れるエネルギーに名前をつけることを
「感情の社会化」と呼ぶ。
自分の体の中を流れる わけのわからないものが流れてパニックになって泣いていても、
子どもは、その感覚にフィットする言葉を与えてもらうと、すっと落ち着くものだ。
その時に、自分の感情を表現する方法も、学習している。
いらいらしたり、
むしゃくしゃしたりしても、
子供がママに抱きしめられると、
それは「安全な感情」として、抱えることができるようになる。
ネガティブな感情ごと、「安心・安全」によって つつみこむ雰囲気があたたかいものであれば
自分の感情が抱きしめられている、と子どもは感じることができる。
不快な感情でいるときに、放っておかれると
子どもはたくましくなるかもしれないけれど、その代わり
自分一人で生きていくために、いつも闘争モードで生きることになる。
抱きしめると、子どもが興奮することもあり、時には距離を置くことも必要だけれど、
そんなときは、温かい目で見守ることで、それは「抱きしめる」と同じ意味があるという。
親自身が、泣いている子どもに怒りを感じて、
顔も見たくないと思っているなら
子どもは安全を感じられず
怒り・憎しみ・悲しみを安全に抱えることができなくなり、
思春期に大きな問題となって、表出されることもあるのだ。
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ここまでで1章の途中なのだけれど、今日は、このあたりまでとしたい。
私が「NVC(思いやりコミュニケーション)」で学んでいるのは、まさにこのことだ。
私は、不快なエネルギーが体を流れているのに、
その感情を押し殺す癖がついていて、言葉にできず、
感情の社会化が、できていなかった。
それがなんなのかわからず、処理ができない状態だったのだ。
イライラ、むしゃくしゃした感情なんだな、と名前をつけて
「私はイライラ、むしゃくしゃしている」と言葉にすると、自己共感ができて
心がスッと穏やかになる。
「自分の中にいる子ども」 は、感情の社会化ができておらず、
自分でコントロールができずに困っていたんだと思う。
「この不快感は、怒りなんだよ」「これは、悲しみだよ」「これは、妬みなんだよ」と
感情に、名前ラベルをつけることで、その感情に、振り回されなくなる。
思春期の子育てをする中で、子どもがむしゃくしゃしているときに
むしゃくしゃしてるんだね、と言える時は言うけれど、
タイミングを間違えると火に油を注ぐことにもなりかねない。
幼児期と違って、抱きしめることも難しいし、言うタイミングを見つけるのは至難の業だ。
でも、「子どもの感情に関心を寄せて、見守る」ことはできる。
「見守る」は、「監視する」と違って、
あたたかい目で見つめ、助けを求められたら手を差し伸べられる位置にいることだと思っている。
見守ることは、「比喩的な意味で、抱きしめることになる」
先生のことばは、思春期の子育てをしている私にとって
大きな励ましとなった。
以前、次男が登校前にパニックを、起こしていた時期に、訳が分からず叱っていると、ずっと落ち着かなかったけれど、
「ザワザワが来たのね」と背中をそっと撫でていたら、数分で落ち着いた。
感情は、名前をつけて欲しがってる。
ネガティヴ感情は、生理現象。
ちゃんと出さないと体を壊す。
「持ってはならないもの」として、蓋をするのではなく、
「そこに在るもの」として
受け止め、受け流すことが大切なのだ、と
これまでに学んできたことの意味が
この本を読むことで、またひとつ深まったと思っている。
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