自分軸の作り方#61 「ちゃんと泣ける子に育てよう」2章①「感情」という情報処理
「ちゃんと泣ける子に育てよう」の続きを綴っていきたい。今回は、「情報処理」のお話。
≪登場人物≫
先生・・・「ちゃんと泣ける子に育てよう」というテーマで、
三歳児を子育て中の二組の夫婦に 子育てについて教える。
ゆうたママ・・・子供が泣いていると、まわりから「しつけをせず、わがままに育てている」と思われ、他の子より劣っていると「ちゃんと育てていないダメな母親」と評価されると感じている。子供が泣くと「どうして泣くの!」とキレて、いつも自己嫌悪。
ゆうたパパ・・・子供なんて放っておけば育つと思っている。泣かせないことが大事で、泣いても放っておく。自分も放っておかれた。
あゆみママ・・・幼い時から「周りの気持ちを考えなさい」と育てられた。あゆみが泣くと怖くなり、どうしてよいかわからず頭が真っ白になる。泣かせないように、先手先手を打つ。
あゆみパパ・・・親から厳しく育てられ、暴力をふるわれていた。父親の役割はガツンとやることだと思っている。
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先生は、脳の働きによって、感情を育てることを説明するために、
あゆみちゃんが雷と稲妻にどんな反応をするか、あゆみママに質問する。
あゆみママ・・・「怖い!怖い!」ってしがみついてきます。
抱っこして「怖いねえ。でもお家の中にいれば大丈夫なんだよ」って言って、しばらく抱いていると今度は興味深く空を見つめたりして、稲光が見えると「またきた、またきた」って、怖いもの見たさで見てますね。
このときあゆみちゃんの脳の中では
雷の音や電の光を見聞きして入力された情報が、
脳の中の「大脳辺縁系」というところで
「怖い」という感情を生み出し
ママに助けを求める行動という「処理」がされた。
ママの行動と言葉は、新しい「情報」になる。
「怖いねえ。でもお家の中にいれば大丈夫なんだよ」という情報が
ママの笑顔と、優しい声とともに入力されるとこどもの脳の中で
「安心」という感情が生まれる。
【情報処理】 雷→ 怖い→ 安心
子どもの感情というのは
「出来事の情報」と「それについて大人から与えられる情報」を処理する過程で生まれるもの。
ママに抱っこされて安心したあゆみちゃんが
怖いもの見たさで稲妻を見ている姿には
安心が得られると、外界への興味がひろがり知識の獲得に向かうという
プロセスがよく表れている。
新しい知識の習得には、「安心していること」「安全であること」が
すごく重要なのだ。
安心・安全の感情を自分の中で育てられている子どもは、
「怖い」「悲しい」という感情が喚起される状況で
思い切り泣いたり 怒ったり 怖がったりして
自由に感情を吐き出すことが許されて
受け止めてくれる大人が存在していると、
「安心」して、挫折に強い子たくましい子に育つ。
この強さ・たくましさとは
へこんでも跳ね返すゴムボールのような強さだ。
危機的状況に置かれ、大人に保護してもらえない(安心できない)こどもは
「たたかう」「にげる」「かたまる」という原始的な防衛を常に使って生きていかなくてはならない。
たたかう・・・かまきりのように勇猛に向かっていく(攻撃的なこども)
にげる…トカゲのように するっといなくなる(落ち着きのない子ども)
かたまる・・・ダンゴムシのように丸まって動かなくなる。(不快感情を封印している子ども)
この原始的な防衛反応で身を守っている子どもは、
とても弱く脆い子どもなのだ。
家庭内に日常的に暴力が行われていたり
親自身が深刻な病気になったり、リストラにあったり
一生懸命に生きているのにどうしようもない不条理の中で苦しんでいるときも
子どもは「怖い・悲しい」という強い感情にさらされているけれど、
親に心配をかけないために ほとんどの子どもが「かたまる」防衛をして、
「よい子」になる。
また、雷が鳴って、子どもが「怖い怖い」としがみついて泣いたときに
「あんなに遠い雷に いちいちおびえるんじゃないの!」と言われたら
子どもは泣き止むけれど、「怖い」感情は「かたまる」という防衛によって処理される。
【情報処理】 雷→恐怖→かたまる(感情を封印する)
これが繰り返されると、
ネガティヴ感情は社会化(言語化)されず
日常であっても、子どもにとっての外傷体験(トラウマ)になってしまう。
危機にさらされた時の「怖い、悲しい」という強いネガティヴ感情も、
「大人が 怖いね、悲しいね、と言葉にして抱きしめる」ことで、
挫折感を味わうような危機的状況でも
その不快な感情を、安全にコントロールできるようになるのだ。
生まれてきて、脳の完成には10年。
身体が生殖可能な状態になるのに15年。
社会的な意味での大人になるのに20年。
大人になるまでは、脳はとても未熟な状態で、
簡単に危機的状況に陥ることを
大人は知っておかないといけない。
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「思いやりのあるいい子」いわゆる「聞き分けの良い子」を見ると、大人はホッとするんだと思う。
でも、大人がホッとしたいからと言って
子どもを、自分の安心感を得るための道具にしてしまうと
やっぱり問題があるんだとわかった。
もちろん、愛情を注いでいたし
道具にしようとしたつもりは毛頭なかったけど
良い子(完成形)にしようと
親が頑張りすぎてた。
「すぐやる子に育てる!」みたいなタイトルの
育児雑誌に踊らされていた。
親に機嫌よく過ごしてもらうために
子どもが感情に蓋をして、自分の心を感じなくして
防衛していると知ると、あまりに切ない。
長男が保育園を卒園するときに、
長男は 子どもたちからも 先生たちからも お母さんたちからも
「優しくて、かしこくて、すごく良い子」と褒められた。
弟の面倒もよく見てくれて
自分の子ども時代とあまりに違うので、
君はすごいよ、尊敬するよ。と
本人にも伝えていた。
けど、「いい子であることを期待されている」と察知していたから
期待に応え頑張ってきて、
感情の社会化ができてなかったんだと知った。
五年前 転居して環境が変わり
学校や塾での 自分の立ち位置が危うくなって
登校できなくなったときは
「かたまる」という防衛反応を起こしたんだろう。
最初はショックだった。子育てに失敗してるよ、と
子どもからも 周りからも 言われている気がして
なんとか元の生活を取り戻そうと必死だった。
そして、私が「笑顔」と「いいところさがしの言葉がけ」をはじめて
何があってもニコニコするようになって、
やっと、安心できたから
不快感情を 親の前で思い切り出せるようになった。
そして、何度も感情を爆発させて 壁を蹴ったり殴ったり
泣いて、弱音を吐いて、
吐き出して吐き出して、
受け止めてもらう経験をして、
再び外の世界へと 踏み出して行った。
この子たちのおかげで 私は たくさんたくさん学び
夫婦間も気持ちをぶつけあって 結びつきの強い家族になれた。
子どもが怒鳴り散らしても 泣き言を言ってきても
「苦しいよね。それは、成長しているってことなんだよ」って
動揺しないで、どーんと構えていられる母親になれた。
元の生活を取り戻すどころか、
家族みんなで 想像もしていなかった別次元のフェーズに突入したよ。
それは、それまで経験したことのない 安心のフェーズ。
いろんな経験することで、強く・たくましくなっていくものなんだな。
親も、子どもも。
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「たたかう」「逃げる」「かたまる」この反応については、
「ポリヴェーガル理論」に詳しく書かれているのでぜひ、タルイタケシさんの記事をお読みください。
お知らせ
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